通訳が得る人生の財産となる“感覚”とは?

2017-10-24 00:00 「パ・リーグ インサイト」新川諒

「通訳」:互いに言語を異にしてその意思を通じがたい人の間にたって、双方の語を訳して相手方に伝えること。(引用:広辞苑)

外国人選手が日本で活躍するためには、まさにこの通訳という存在が欠かせない。言語が通じない監督・コーチとコミュニケーションを取って考えを共有すること、さらにはチームメートと真の仲間になっていくためには様々な場面で“架け橋"となる通訳が大きな役割を担う。

異国で生活をすることだけでも様々なフラストレーションや不安が付きまとう。外国人選手たちは日々暮らすだけではなく、チームの救世主として期待され、異国のグラウンドで最高のパフォーマンス、つまり結果を求められる。そんな外国人選手たちの不安を少しでも取り除き、異国の地でも本来のプレーができる環境を作るために通訳は奮闘している。

2013年6月26日、場所は東京ドーム。

当時、なかなか結果が出ずに苦しんでいたマイカ・ホフパワー選手(北海道日本ハムファイターズ)。本来の力を発揮してほしいという一心で、佐藤通訳(当時。現ロサンゼルス・ドジャース通訳)は懸命にコーチ・監督とホフパワー選手を“つなげよう"と公私に渡って献身的に任務に当たっていた。日本人同士であれば指導者は選手に声をかけ、また選手は指導者に自身の状態や悩みを打ちあけることで共に解決策を探っていくことができる。しかし、同じ言語を持たない外国人選手にとって一見何でもないこのコミュニケーションが容易ではない。選手と指導者をつなぐ架け橋が必要となるのだ。

6月、一軍に残っていくためのラストチャンスとも思われていた東京ドームでの一戦。試合は劣勢の展開だった。8回1ストライク──。ホフパワー選手に代打での出番が巡ってきた。打球は力強く放物線を描き観客席へ。HRという最高の結果を出した。

実はこの時、ホフパワー選手は膝の状態が万全ではなく、トレーナーから制限され、全力で走ることができていなかった。それがチーム内で誤解を生んでいたような雰囲気があると感じた佐藤通訳は、それを解くために栗山監督の元へ行き、架け橋となって奮闘していた。

佐藤通訳の選手と共に戦う仕事ぶりが際立った瞬間だったと語ってくれた、北海道日本ハムファイターズのチーム統轄副本部長兼国際グループ長、岩本賢一氏。彼に通訳の仕事について伺った。

「実際にフィールドで繰り広げられていることを、肌で感じながら仕事ができるのは大きいと思います。通訳は黒子でありながらも、多くの会話を見聞きし、組織がどのように形成されているのかを直・間接的に知る機会を得るのは、かけがえのない将来への肥やしとなります」

ファイターズには現在フロント、そして現場に元通訳経験者が7人も所属している。球団代表を務める島田利正氏もそのうちの1人である。そして通訳OBには他球団やMLB球団で通訳として活躍し続けている者もいれば、フィールドを変え、米国でパイロットになった者までいる。さらに、現在ファイターズには広報兼任を含むと一、二軍合わせて5人もの通訳が存在する。

岩本氏はプロ野球球団で通訳を経験した人材の強みについて、「通訳として、選手たちの心情に間近に触れた経験は、プロ野球で職責をまっとうする上で、どの部署へ行っても大きな力となります。それが、球団を外から支えてくださっている方々との架け橋にもなりますし、物事を謙虚にとらえ、自身の発想を仕事上、膨らませていく上での根幹にもなりうるといえます」

ある言語から異なる言語へと変換すること = 通訳

ヒーローインタビューやマウンドにコーチ・監督と共に姿を現す通訳を観て、大半の人がそう思っているかもしれない。だが通訳には言語を訳すだけではない、それ以上の仕事が数多く存在する。

通訳は常に選手に寄り添い、選手と共に悩み共に戦う。通訳にしか得ることのできない経験が数え切れないほどある。最近ではファイターズだけでなく、各球団のフロントにも通訳経験者が多数存在するようになった。

実は今回通訳について話をしてくれた岩本賢一氏も2003年から5年間はヒルマン監督の通訳を務めていた。その岩本氏に通訳の経験がどのように現職に生かされているかを語ってもらった。

「通訳は様々な会話に入っていながら、発言権がありません。つまり、空気と同じ存在です。時にはそれが"寂しさ"に変わることもあり、自身の存在意義に悩む時期もありました。しかし、通訳以外の仕事をいただいてから自分の意見を主張するばかりでなく、まずは聴くという行為が、いかに大事であることかを気づかされました。」

さらにヒルマン監督からいつも、「相手に伝えたいことをいつ、どのように届けるか熟考するのは大切である」ということを教えてもらったという。自分のエゴや感情をコントロールし、的確に相手に伝えることの大事さを感じることができるのは、この時の経験が生きていると、岩本氏は語る。

栗山監督、そして吉村チーム統轄本部長兼GMとチームを引っ張る二人は確固たる信念を持ちながらも、本当に聴き上手であるという共通点も挙げてくれた。そんなリーダーたちが存在するからこそ、北海道日本ハムファイターズは他とは違った球団作りができているのかもしれない。

「人には様々な意見があり、相手を尊重せぬことには何かを生み出すことはできないと、いまさらながら感じるのは通訳の時に得た経験が生かされているのかもしれません」と岩本氏。

自分の意見を言い、いつ他に耳を傾けるのか。これは人生においても非常に重要な“感覚"であることは間違いない。通訳の仕事は、文面で記すことのできない仕事が多く存在し、間に挟まれて苦労したりもする。だがいつか振り返ったときに、人生の財産といえる何ともいえない、絶妙な“感覚"を得られる仕事であることは断言できる。これを機に、現在募集している北海道日本ハムファイターズの英語通訳にトライしてみてはいかがだろうか。きっと、大きな財産を手にすることができるはずだ。


【北海道日本ハムファイターズ 英語通訳募集詳細】
募集職務:
英語と日本語を話す通訳 1名

応募資格:
英語で選手対応やミーティング、記者会見での通訳をこなせる語学力のある方
野球経験者もしくは野球での仕事に強い興味のある方
2018年1月から勤務できる方

勤務地:
北海道札幌市または千葉県鎌ケ谷市、その他弊社指定地域

必要書類:
顔写真(カラー、4cm × 3cm)を添付した履歴書
職務経歴書
志望動機、自己PR文

選考方法:
書類選考を通過した方のみ、面接(英語含む)の実技試験を実施

書類送付先:
〒062-8655 北海道札幌市豊平区羊ヶ丘1番地
株式会社 北海道日本ハムファイターズ「通訳募集」係
※2017年11月6日(月)必着