今年はどのような場面でホームランが飛び出すか。2000年代の日本シリーズ・メモラブルアーチ10選

2017-10-27 00:00 「パ・リーグ インサイト」藤原彬

秋の頂上決戦、しびれる展開、観る者沸き立つホームラン!

2000年代に日本一を競った34チームがシーズン中に放っていた本塁打の1試合平均は0.98本だが、日本シリーズでは0.86本と減少する傾向にある。それでも、この短期対決で勝敗を左右するアーチの飛び出す可能性が思いの外高いのは、得点の1試合平均も4.51から3.60まで減り、接戦が生まれやすい状況が関係している。実際、全99試合で生まれた計170本塁打のうち、135本が3点差以内でのものだった。最多は同点での44本だ。本塁打の数で対戦相手を上回ったチームの戦績は13勝1敗3引分と、結果に結び付いている事実も見逃せない。ここでは、直近17年で生まれたホームランから、特にインパクトの大きかった10本のホームランを振り返る。

※選手名の前の☆はシリーズの最高殊勲選手賞、◇は敢闘賞、○は優秀選手賞で、スコアはホーム-ビジターで表記

【2000年】
◇城島健司氏(福岡ダイエー)
第1戦 東京ドーム 0対2 2回1死走者なし 左越 対工藤公康氏(巨人)

福岡ダイエーを35年ぶりの日本一に導いてから一年、前年の最優秀バッテリー賞に選出された2人のプロ初対決が実現した。マスク越しではなくバッターボックスから、工藤氏の投じたボールはどう映ったか。2回の第1打席、城島氏がワンバウンドしそうなほど低い球を前足のヒザをつきそうになりながら薙ぎ払うと、打球はレフトスタンドへ吸い込まれていった。1点差に詰め寄った福岡ダイエーは終盤に逆転して、大事なシリーズ初戦をものにする。得意の悪球打ちを披露した城島氏にまずは軍配も、続く2打席は三振と凡打。2005年の師弟対決は3打数で無安打1四球だったが、同年のオールスターでは城島氏が本塁打を放っている。

【2001年】
◇ローズ氏(大阪近鉄)
第2戦 大阪ドーム 6対6 8回2死1,3塁 右越 対五十嵐亮太投手(ヤクルト)

初戦に完封負けを喫した大阪近鉄は第2戦も序盤から劣勢で、3回終了時のスコアは3対0。ところが試合中盤に“いてまえ打線”が火を噴いて、中村紀洋氏のソロアーチなどで同点に追い付いた。仕上げは、その中村氏の相棒であるローズ氏。8回に作った勝ち越しのチャンスで、剛腕・五十嵐投手が投じた変化球はど真ん中へ。うまくタイミングを合わせて放ったローズ氏の打球は、ファンの待つライトスタンドに飛び込んだ。この年、2人が記録した本塁打は、コンビとして史上最多となる101本。アベックアーチを記録した試合は20勝4敗だった。取られたら取り返す。歴史的な破壊力を誇る打線が、その真髄を見せつけた試合でもあった。

【2002年】
○清原和博氏(巨人)
第1戦 東京ドーム 2対0 3回2死2塁 左越 対松坂大輔投手(西武)

日本一に輝くこと7度。何度となく大舞台で強さを発揮してきた清原氏の神通力は、このシリーズでも生きていた。西武の初戦マウンドを託されたのは、好敵手の松坂投手。巨人は3回に清水隆行氏の2ランで先制すると、後続も続いて2死2塁で清原氏に第2打席が回る。慎重にカウントを整える西武バッテリーだったが、真ん中に入ったボールを逃さずに清原氏が強振。打たれた松坂投手はしばらく打球の行方を追わなかった。ともにシーズン勝率6割を優に越え、8年ぶりに球界の盟主が顔を合わせた対決は実力伯仲が予想されたが、結果は巨人の4連勝と一方的に。松坂投手を打ち砕いた千両役者の一撃が、シリーズの趨勢を決定付けた。

【2003年】
◇金本知憲氏(阪神)
第4戦 甲子園 5対5 10回1死走者なし 右越 対新垣渚投手(福岡ダイエー)

敵地で2連敗を喫したが、前日の本拠地開幕戦で延長戦を制した阪神は、第4戦の初回にも3点を奪うなど地元に戻ってからの戦いで勢いが止まらない。ところが試合はもつれ、9回終了時に同点で2試合連続の延長へ。6回に2試合連続となるソロアーチを放っていた金本氏が、10回に打席へ入った。縦に鋭く曲がるスライダーを多投する新垣氏に2ストライクと追い込まれたが、その決め球が高めに浮いたのを見逃さずにバットを一閃。金本氏らしい弾丸ライナーがライトスタンドに突き刺さった。2試合連続で延長10回にサヨナラ勝ち。頼れる“アニキ”の活躍が決定打となり、ワンサイドだった短期決戦が「内弁慶シリーズ」へと変わる。

【2004年】
○カブレラ氏(西武)
第3戦 西武ドーム 6対6 7回2死満塁 左越 対岡本真也氏(中日)

振り切った瞬間、手ごたえは十分。バットを放り投げて、そのまま万歳のポーズを作ってみせた。同点に追い付き、なおも2死満塁の場面でカブレラ氏がバットの芯で捉えたボールはあっという間に場外へ。日本シリーズでの大仕事は、シーズンのうっ憤を晴らすかのようだった。昨年までの来日3年間で154本ものホームランを積み重ねた大砲は、この年のオープン戦で右腕に死球を受けて骨折。64試合にしか出場できず、柵越えは25本“のみ”にとどまった。だが、ここぞの場面で自らの怪力伝説に新たなトピックを追加する豪快なグランドスラム。翌年の敬遠数がリーグ最多の15を数えたのは、この一打の印象とも無関係ではないはずだ。

【2005年】
☆今江敏晃選手(千葉ロッテ)
第1戦 千葉マリン 0対0 1回走者なし 左中越 対井川慶氏(阪神)

ロッテ一筋18年の有藤道世氏は、1974年の日本シリーズで打率.429を残して打撃賞と技能賞を獲得した。その有藤氏が着用した背番号8を2005年から背負ったことで“ミスター・ロッテ”の遺伝子を受け継いだ今江選手が、球団31年ぶりとなる日本一を賭けた戦いで大暴れする。皮切りは、初戦の初回先制ソロアーチ。この年から施行された交流戦では完封負けを喫していた井川氏からの一打で、自身とチームは一気に解き放たれた。この第1戦と続く第2戦で、今江選手は8打席連続安打と打ちまくり、最終的には15打数10安打で4試合でのシリーズ記録となる打率.667をマーク。チームも4連勝を飾り、31年ぶりの日本一へ駆け上がった。

【2008年】
◇ラミレス選手(巨人)
第2戦 東京ドーム 2対2 9回走者なし 中越 対岡本真也氏(埼玉西武)

狙いすましたようなスイングで、弾き返した打球はフェンスの向こう側へ。外角に投じられたスライダーは簡単なボールではなかったが、一発で仕留める集中力と勝負強さはシーズンMVPの面目躍如だった。ラミレス氏が現役時代に捕手の配球を研究していたことはよく知られた話だ。お立ち台で狙いどおりかと問われたラミレス氏の答えは「オフコース」。研究熱心な姿勢と頭脳がパワーと技術を最大化し、当代随一のクラッチヒッターを形成した。「ラミレス」コールに包まれる試合終了後の本拠地で、殊勲者は数々の持ちネタを次々に披露。仲間やファンだけではなく、報道陣まで笑顔に変えてしまう超一流のパフォーマンスだった。

【2009年】
☆阿部慎之助選手(巨人)
第5戦 東京ドーム 2対2 9回走者なし 右中越 対武田久投手(北海道日本ハム)

阿部選手が主将に任命されてから、巨人はリーグ3連覇を達成。ところが、就任1年目の2007年にチームはクライマックスシリーズ第2ステージで3連敗を喫し敗れた。翌2008年はリーグ連覇後に右肩を痛めてクライマックスシリーズを欠場、日本シリーズは代打と指名打者での出場となり、またも頂点を見ずして敗退の憂き目にあっている。心中期して臨んだ2009年の日本一シリーズ第5戦、1点を追う巨人は先頭の亀井義行選手が同点のソロを放つ。中央大学の後輩が試合を振り出しに戻してから1死後、次は阿部選手がサヨナラ弾を放り込んだ。続く第6戦にも勝利して巨人は7年ぶりの日本一に輝き、阿部選手も悔しさを晴らしている。

【2015年】
◇山田哲人選手(東京ヤクルト)
第3戦 神宮 3対4 5回 左越 対千賀滉大投手(福岡ソフトバンク)

山田選手がシーズン中に記録した38本塁打と39二塁打、ならびに出塁率.416と長打率.610もリーグトップ。異次元の攻撃力は日本シリーズでも発揮された。東京ヤクルトが敵地で2連敗し、勝手知る神宮に戻って迎えた第3戦。山田選手はまず初回に2ランを叩き込むと、同点に追い付かれた後の3回に勝ち越しのソロアーチ、逆転を許した5回には再びリードを奪う2ランを叩き込む。日本シリーズでの3打席連続弾は1970年の長島茂雄氏だけが成し得ていた快挙(1試合3本は史上初)。プロ野球で13年ぶりに“トリプルスリー”のフレーズを蘇らせた山田選手が、今度は大舞台で「栄光の背番号3」を着けたスターの先達の名前を掘り起こした。

【2016年】
◇西川遥輝選手(北海道日本ハム)
第5戦 札幌ドーム 1対1 9回 右越 対中﨑翔太投手(広島)

日本シリーズ史上2人目となるサヨナラ満塁本塁打。当時キャリア5年目で通算22本塁打の西川選手が立つ打席に、誰がこれだけ大それた結末を予想したことか。マウンドの中﨑投手が四死球などでピンチを作り、制球に苦しむ中、高めに浮く狙い球の速球をしっかりと叩いた。1点だけ奪えば勝ちの場面で3点のおつりが出るホームランが飛び出し、北海道日本ハムは本拠地3連戦全勝を決める。西川選手は前年に札幌ドームで満塁弾を1本放っていた。今年もフルベースでは9打数無安打と苦しんだが、8月17日にはやはり本拠地で満塁の場面で本塁打を放放り込んだ。3年連続のグランドスラムで「サヨナラ満塁男」の襲名だろうか。

寒さが増す季節。日本シリーズに特有の緊張感を切り裂きながら、スタンドインした打球がファンの高揚と歓喜を呼び込む。10月28日に幕を開く今年の日本シリーズにも、そんな光景が多く見られることに期待したい。