同期の千賀と甲斐に続く育成出身期待の星 鷹・牧原大成という男

2019-02-15 07:30 「Full-Count」山岡則夫
福岡ソフトバンク・牧原大成※写真提供:Full-Count(写真:藤浦一都)

福岡ソフトバンク・牧原大成※写真提供:Full-Count(写真:藤浦一都)

現役時代に実績のある村松、飯田、本多3コーチが証言する牧原の課題

 昨夏、突如として現れた8年目の育成上がりの男は鮮烈な印象を残した。

 牧原大成内野手、26歳。

 7月8日に1軍初昇格を果たし、オリックス戦に「8番・二塁」で先発出場。デビュー戦でマルチ安打を放つ活躍を見せた。その後も自慢の足を生かして内野安打も記録し、マルチに猛打賞を何度も記録した。プロ初本塁打を含む3本塁打もマークするパワーも見せ、1番打者にも起用された。二塁の守備でも好守を連発。このまま、牧原がレギュラーに収まれば、黄金期はまだまだ続きそうだ。そう予感させる選手である。

 しかし、シーズン終盤の9月27日の埼玉西武戦で右前距腓靭帯を損傷し、登録抹消。その後のポストシーズンに出場できなかった。59試合に出場、自身初となる100打席を超え、打率.317、3本塁打、26打点で昨季を終えた。

「昨年に関しては、シーズン途中からスタメンで出られて結果的にも手応えはあった。だからこそ、その後のCSや日本シリーズに出場できなかったのが、本当に悔しかった。今年はシーズンを通じて試合に出たい気持ちが強いです」

 1軍で戦える手応えをつかむも、チームの日本一の瞬間に立ち会うことができなかった。だから今年が「勝負の年」と位置付けている。

 牧原は、近年の強豪福岡ソフトバンクを象徴する「育成上がり」の一人だ。10年育成ドラフト5位で入団。この年の育成4位が千賀滉大投手で、6位が甲斐拓也捕手だった。12年に支配下選手登録。ウインターリーグ派遣やU-21日本代表選出などで着々と実力を磨いた。

 持ち味は昨季、4本の三塁打を放ったことでも見られるスピード。打撃のみでなく足の部分でも大きな期待を受ける。シーズン中から96年パ・リーグ盗塁王の村松有人外野守備走塁コーチは「まだまだ盗塁に関して硬い部分がある」と牧原を育てるため、スタートを切る練習を欠かさず、行っている。村松コーチは「盗塁は技術だけでなく、メンタル面も大きい。何回か失敗するとスタートが切りにくくなる」と精神的な部分から走れなくなる、スランプになるランナーがいることを指摘。「だからこそ、反復練習をしてまずは技術面を高める。それがあるだけでも走者がかなり優位になれる」と指導を続ける。

 福岡ソフトバンクには92年、東京ヤクルトのリードオフマンとして活躍し、セ・リーグ盗塁王を獲得した経歴を持つ飯田哲也三軍外野守備走塁コーチもいる。飯田コーチもスタートの重要性を語る。

「課題はやはりスタート。ダメだと思ったら行かない判断と勇気も大事。今はスタートをきったらそのまま行ってしまって刺されることもある。そのあたりも練習で覚えていくしかないと思う」

「足にスランプはない、とよく言われる。しかし、それはあくまで中間走に関して。メンタル面も大きく作用する盗塁には当てはまらない。身体が固まって動けないこともある。そういう意味では我々、コーチも含め、周囲が声をかけてあげることも必要ですよね」

 牧原は今、かつての盗塁王たちから技術、メンタル面の強化策を叩きこまれている。

開幕前までの戻したい負傷前の感覚

 二塁のレギュラーを奪取するためには、当然、守備も欠かせない。

 18年まで二塁手として活躍し、今年から指導者となった本多雄一内野守備走塁コーチが今年から守備を指導する。牧原のこれからについて聞いた。

「すべてにおいてさらなるレベルアップを目指して欲しい。もっともっと上に行ける選手だと思う。基本は重要。加えて、球際に強くなって欲しい。球際は守備範囲の広さということもある。下半身の粘りが重要。それが走塁面にもいきてくる。自分の役割をしっかり理解して、堅実な部分を伸ばしていければレギュラー定着も見えてくると思う」

 盗塁王2回、ゴールデングラブ賞を2回獲得した本多コーチがすぐ近くにいるのは牧原にとって心強い。

 牧原が目指すのは二塁のレギュラー獲得と昨年、けがで貢献できなかったポストシーズンでチームを勝利に導くこと。その先の優勝、日本一の喜びも心からみんなと分かち合いたい。そのために、まずはやらなくてはならない段階が待つ。

「キャンプに入った時に最初にやらないといけない、と思ったのは感覚を戻すこと。これは打撃、走塁、守備においてすべてです。しばらく(けがで)試合に出ていなかったこともあるので、実戦感覚を戻さないとどうしようもないですから」

「打撃に関しては、多少、いい感覚をつかんだ部分はある。やはり自分の良いところは積極性だと思っている。もちろん簡単に凡打してしまい言われることもあるけど、積極性に関しては失わないでいきたいと思います。守備はとにかく基本を大事にしたい。自分のテリトリーというか守備範囲に打球がきたら形がどうあれ、アウトを一つ増やす。それがまずは最初の一歩。そのためにも基本練習は欠かせないです」

 強豪福岡ソフトバンクの不安点を見つけるとしたら、レギュラー陣の年齢が高くなってきていること。それだけ実力者が揃っているのだが、未来を考えた場合、現在20歳代の選手の台頭が待たれている。実際、牧原欠場中をカバーしたのもベテラン選手が主だった。
 
 九州地方を中心に球界きっての人気チームとなった。だからこそ「育成の福岡ソフトバンク」の次の顔となりうる牧原には、レギュラー定着が期待される。

(山岡則夫 / Norio Yamaoka)

山岡則夫 プロフィール
 1972年島根県出身。千葉大学卒業後、アパレル会社勤務などを経て01年にInnings,Co.を設立、雑誌Ballpark Time!を発刊。現在はBallparkレーベルとして様々な書籍、雑誌を企画、製作するほか、多くの雑誌やホームページに寄稿している。最新刊は「岩隈久志のピッチングバイブル」、「躍進する広島カープを支える選手たち」(株式会社舵社)。Ballpark Time!オフィシャルページにて取材日記を定期的に更新中。