情報発信だけではない。日米スポーツチームによる、遊び心を持ったソーシャルメディア戦略とは?

2016-07-24 00:00 「パ・リーグ インサイト」新川諒

「ソーシャルメディア(SNS)を制するモノは次世代の取り込みを制する」。これは大袈裟な言葉かもしれないが、日米各リーグがSNS戦略を打ち立て、さまざまな仕掛けで次世代の取り込みに奮闘している。

メジャーリーグの球団には、広報とは別にSNSディレクターやコーディネーターという役職を置いているチームもある。従来のメディア対応だけではなく、SNSを活用した球団の広報活動や、ファン層の拡大にどうつなげていくかを各球団模索し続けている。

パ・リーグ各球団はすべてフェイスブック、ツイッター、インスタグラムのアカウントを運営しており、公式サイトからはそれぞれのアカウントへのアクセスが可能となっている。各SNSには特徴があり、使い方を変えることで違った情報を配信することができ、違ったターゲットにもリーチすることができる。またオンシーズンとオフシーズンがあるプロスポーツの興行では、シーズンオフもファンとのつながりを途切れないようにすることが課題でもあり、メジャーリーグのように選手異動やトレードが少ない日本では、より話題作りが必要となる。

例えば楽天はシーズンオフ期間中もインスタグラムなどのSNSを使って、ドラフトされた新人選手の様子から楽天Koboスタジアム宮城の改修工事の様子などをファンへ届け続けた。さらにシーズン開幕100日前から所属選手の写真を交えたカウントダウンを毎日繰り返すことで、開幕に向けてのワクワク感を演出した。ファンとも直接交流を続ける試みとして、「#ベストEスタグラマーは誰だ?」というハッシュタグ企画も発案し、ファン自らが撮ったベストショットを共有させる取り組みを行った。こういった施策も役立ってか、楽天のインスタグラム公式アカウントは2015年1月から2016年1月までで純増約1万7千、増加率にすると287%ものフォロワー増となった。

フェイスブックでは、北海道日本ハムが7月24日時点でリーグトップの約25万6千のいいねを集めている。「台湾の英雄」陽岱鋼選手が在籍していることもあり、台湾マーケット向けの繁体字ページを開設したことも手伝っているのではないだろうか。

ツイッターに目を向けると、福岡ソフトバンクの公式ツイッターアカウントでは、良い意味でフランクに、ファンとの距離を近付ける言葉遣いなどを使っているようにも見える。福岡ソフトバンクのツイッターフォロワー数はパ・リーグで最も多く、7月24日現在時点で約47万7千。2位の楽天に10万以上の差をつけている結果だ。

メジャーリーグの各球団の公式ツイッターでは遊び心満載でファンを楽しませる。7月2日にツイッター上で繰り広げられたのは、ボストン・レッドソックス対ロサンゼルス・エンゼルス・オブ・アナハイムの公開「Tic-Tac-Toe(二人が交互に◯×を書き込んでいき三つ並べるゲーム)」だ。これは約1年前、雨天中断中にエンゼルスの公式ツイッターから「雨天中断中は何をしたら良い?我々はあまり慣れていないので」という「交流」がきっかけだった。1年後となる今年の7月に、エンゼルス側から「あの日の思い出を覚えているか?」という呼び掛けからツイッター上でのゲームが開始された。

その他でも昨年5月には雨天中断中にアリゾナ・ダイヤモンドバックスとフィラデルフィア・フィリーズの公式ツイッターでは、じゃんけん対決が繰り広げられた。ツイッターを試合中断や再開時間を発表するツールとして使うだけではなく、試合というコンテンツが繰り広げられていない時間帯もファンをクスッと笑わせる演出を展開している。

そしてシーズンオフには一人のファンがシカゴ・カブスのツイッターアカウントの方がニューヨーク・ヤンキースのものより面白い!という内容のツイートをしたことから、場外戦が展開された。カブスのツイッターでは、すかさずフォロワーに対して「どちらのツイッターの方が面白い?」という投票を行った。すかさずヤンキースは対抗し

「我々はこの投票形式は初めてだが、ヤンキースは…」
・より優勝リングを持っている
・より多くの優勝リングを持っている
・カブスファンの皆さん、優勝リングとは何か分かりますか?

という皮肉なツイッター上での投票を展開した。それに対してカブスは「友達だと思っていたのに…」というツイートとともにマドン監督の驚いた表情をGIF動画で付け加えた。一方でヤンキースはマリアノ・リベラ投手のニヤリとするGIF動画で返答し、場外戦の幕を閉じた。ファンをも巻き込む場外戦は、試合のないシーズンオフでもチームへのロイヤリティーを高める機会となる。

そしてアメリカの各チームのSNS上で目立つのはチームの情報を発信するだけでなく、同じ本拠地を共有する他競技のプロチームとの交流だ。今季オールスター34人目の選手に選出される投票を制したサンフランシスコ・ジャイアンツのブランドン・ベルト、そしてトロント・ブルージェイズのマイケル・ソーンザースには、同じ街を共有する各プロスポーツチームの呼び掛けも功を奏した。短文でメッセージが伝えることのできるツイッターの特徴を生かし、チーム情報の掲示板としての活用だけではなく、人間味溢れる広報の演出が展開される。

何がヒットするか分からない世の中でのSNS戦略は難しい一面もあるが、さまざまな工夫をすることでファン層の拡大、さらには次世代の取り込みが可能となる。今後もファンとの距離を縮めるためには必須となるSNSの存在だが、日米の各球団がどのような仕掛けで楽しませてくれるのか注目していきたい。