早速アーチ量産の「ホームランラグーン」“先駆者”ホークスはどう変化した?

2019-04-05 11:00 「パ・リーグ インサイト」望月遼太
福岡ソフトバンクを代表するホームランバッターのひとりである松田宣浩選手(写真中央)

福岡ソフトバンクを代表するホームランバッターのひとりである松田宣浩選手(写真中央)

前年の本塁打数がリーグ5位だったホークス打線は、テラス設置を機に生まれ変わった

 2019年シーズンから、千葉ロッテの本拠地・ZOZOマリンスタジアムに「ホームランラグーン」が設置された。球場が狭くなった影響は開幕からの3試合が終わった段階で早くも表れ、ホームの千葉ロッテとビジターの東北楽天にそれぞれ6本、計12本のホームランが生まれている。今後もこの量産態勢が続くことが予想されるが、本塁打・被本塁打の増加は千葉ロッテの各打者、そしてチームにとってどのような影響をもたらすのだろうか。

 そこで、今回は千葉ロッテに先立って2015年にホームランテラスを設置した、福岡ソフトバンクの本拠地・福岡 ヤフオク!ドームのケースを“先例”として振り返っていきたい。「『フィールド狭しと走り回る外野手を間近に感じながら、大飛球に歓声を上げる』という、よりエキサイティングで迫力満点の野球観戦」を実現するために設置されたホームランテラスは、球場を訪れるファンのみならず、チームの戦いぶりにも大きな影響を与えている。

 NPBの試合が開催される球場の大きさは統一されておらず、各球場によって異なっている。例えば、本塁打が出やすい球場とされる明治神宮野球場の規模は両翼97.5m、中堅120m、フェンスの高さは3.3m。横浜スタジアムは両翼94m、中堅118m、外野フェンスの高さは5mだ。

 そして、テラス設置前のヤフオクドームは、両翼約100m、中堅約122mという規模だった。両翼と中堅は打者有利と表現されがちな東京ドームと同じ数字だが、5.84m(東京ドームは4m)という外野フェンスの高さによって、ホームランテラス設置以前は本塁打が出にくい球場として広く認知されていた。

 ところが、ホームランテラスの設置によって、左中間の中央部が最大で5mほど接近して約110mに。また、外野フェンスの高さも4.2mとなり、約1.6m低下した。両翼と中堅の距離こそ変わらなかったものの、この改修によってチームや選手たちにどのような変化が生まれたのだろうか。具体的な数字を用いて、改めて確認していきたい。

 まず、ホームランテラスが設置される前年の2014年シーズンと、設置初年度の2015年シーズンにおける、福岡ソフトバンクのチーム本塁打数を確認していきたい。(カッコ内の数字はヤフオクドームでの本塁打数と、リーグ内での本塁打数の順位)

2014年:144試合 95本(34本)(リーグ5位)
2015年:143試合 141本(77本)(リーグ1位)

 以上のように、試合数が1試合減ったにも関わらず、本塁打数は46本も増加している。ヤフオクドームでの本塁打数も2014年は全体の35.8%にとどまっていたものの、2015年は54.6%と、実に半数以上が本拠地で生まれた計算に。ヤフオクドームはテラスが設置されるまでは本塁打が出にくい球場とされていただけに、まさに劇的な変化といえる。

 もちろん、テラス設置の影響は守備時にも表れる。福岡ソフトバンクのチーム被本塁打は2014年はリーグで2番目に少ない90本だったものの、2015年にはリーグワーストタイの113本へと大きく増加している。やはり、テラスの存在は敵・味方の両者にとって、非常に大きなファクターとなっていたようだ。

熱男、ギータ、韓国の大砲……テラス設置で好影響を受けた選手は多い

 次に、当時のチームにおいて主力打者を務めた選手たちの成績の変遷についても紹介していきたい。主力の中でも特にホームランテラスの影響を強く受けたと思われる選手たちの、2014年と2015年の出場試合数と本塁打数は下記の通り。(カッコ内の数字はヤフオクドームでの本塁打数)

内川聖一選手
2014年:122試合 18本(4本)
2015年:136試合 11本(5本)

松田宣浩選手
2014年:101試合 18本(5本)
2015年:143試合 35本(23本)

李大浩選手
2014年:144試合 19本(10本)
2015年:141試合 31本(21本)

長谷川勇也選手
2014年:135試合 6本(3本)
2015年:30試合 5本(3本)

柳田悠岐選手
2014年:144試合 15本(6本)
2015年:138試合 34本(13本)

 以上のように、主力打者の多くがホームランテラスの設置をきっかけに本塁打数を大きく伸ばしているのがわかる。とりわけ松田宣選手の変化は目を引き、試合数の差こそあれど、ほぼ前年の倍となる本塁打数を記録。初めて30本の大台に乗るシーズンとした。また、ヤフオクドームでの本塁打率の高さも特筆もので、実に全体の65.7%を本拠地で放っている計算に。2014年は本拠地でわずか5本塁打だったことを考えれば、いかにテラスの影響が大きかったかがわかるだろう。

 また、李大浩選手もテラス設置の恩恵を大きく受けた選手のひとり。移籍初年度の2014年には打率.300で優勝に貢献しながらも19本塁打に終わっていた韓国の大砲は、2015年に日本での4年間で最多となる31本塁打を記録。ヤフオクドームでの本塁打数も前年の10本から21本と倍以上に増加させており、こちらも本拠地の変化が打撃成績の向上に大きく寄与したケースと言えそうだ。

 また、今や日本屈指の強打者となった柳田選手の本塁打数も、ホームランテラスの設置を機に倍以上に増加。トリプルスリー、首位打者、最高出塁率、MVPと数多くの栄冠を手にし、球界を代表する選手へと飛躍を遂げた。規格外のパワーを武器に圧巻のアーチを数多く描いてきた柳田選手ほどの打者であっても、テラスの誕生と打撃成績の向上は無関係ではなかったようだ。

 テラスの存在は長距離砲以外の選手に対しても作用し、アベレージヒッターの長谷川選手も473打席で6本塁打(本塁打率78.83)から85打席で5本塁打(同17)と、大幅に本塁打率を向上させた。今宮健太選手や本多雄一氏のようにさしたる影響がなかった選手もいたが、多くの選手に影響を及ぼす重要なファクターであったことは論を待たないだろう。

 そんな中、主力選手の中では内川聖一選手だけが例外的に本塁打数を減らす結果に。ただ、そんな内川聖一選手もヤフオクドームでの本塁打率は大きく増加させている(2014年の22.2%に対して、2015年は45.5%)。本塁打の総数こそ減少したとはいえ、また違った形でテラスの影響が感じられる一例だ。