恒例の大宮開催を支える人たち 埼玉西武の関係者にも浸透する「We are One」

2019-04-20 19:20 「Full-Count」山岡則夫
埼玉西武・辻発彦監督※写真提供:Full-Count(写真:荒川祐史)

埼玉西武・辻発彦監督※写真提供:Full-Count(写真:荒川祐史)

大宮県営球場開催の埼玉西武ホームゲームを支える人たちの思い

 世間でなにかと話題になっている埼玉県。スポーツ界で言えば、プロ野球の埼玉西武ライオンズだろう。本拠地・所沢のみでなく、同県内の大宮でも試合を開催、多くのファンを集めている。その大宮開催では普段とは違う部分も多く、それを支える人々が存在する。

 恒例となった大宮県営球場(大宮)開催の埼玉西武ホームゲーム。2019年は4、5、8月と3試合が行われる。いまや所沢には連日多くの人が集まっている状況での大宮開催。独特の味がある。同じ埼玉県内でも普段のメットライフドームとは別物の雰囲気を味わえることもあり人気も高い。

 大宮の大きな魅力はやはりフィールドの近さ。選手をすぐ近くに感じることができる。また、都心から電車で約30分というアクセスの良さも大きな魅力であろう。しかし、プロ仕様ではない大宮では、運営上の苦労も大きいはず。というわけで、4月9日に行われた東北楽天戦前のバックステージに迫った。そこには多くの工夫と大きなパワーが満ち溢れていた。

 選手到着前、ひときわ忙しそうにしていたのは両チーム選手への食事などを準備するクルー。大宮開催時はケータリング業者が担当している。

「こういうケータリングサービスは普段からやっている。大きいところだと埼玉スーパーアリーナのライブなどです。球場の場合は外と直結しているので、もっとも気を使うのは衛生面」

 担当者はこう話す。室内環境なら、あらかじめケータリングに適した環境も整っている場合もある。しかしアマチュア野球使用が主の球場では、そうも言ってられない。

「良いプレーにつながればうれしいですね」

「設備はやはり違う。でも前日中に機材など完璧に準備しておいて、当日搬入で対応できる。お腹が減るのか、選手の方々もたくさん食べてくれる。良いプレーにつながればうれしいですね」

 食事場所は、スポーツ施設特有のものがある。その中で正装姿のホテルマンたちが素早く動き回っていた。

 埼玉西武のこだわりは来場したファンをとことん楽しませること。試合前からビジョン映像や音などを活用し常に飽きさせないように気を配る。その中で埼玉西武球場時代から変わらないのは優しい音色のオルガン演奏。まさに埼玉西武戦の風物詩とも言える。音源のみをかける球場が多くなったが、いまだに実演奏にもこだわっている。

「球場が変われどオルガンを弾くことには変わらない。だからやっているうちにすぐ慣れましたし、球場によって音の響き方も違うのでそこがまた楽しいし、やりがいを感じています。」

 この試合で演奏するのは佐藤ゆきさん。所沢のように専用スペースがあるわけではない。バックヤードの一角、パーテーションで仕切られた場所でヘッドフォン装着、黙々と練習している途中に話を聞いた。

「試合がしっかり見えないのが少し難しい部分。だから大宮ではヘッドフォンをずっとつけて、指示などによって自分のペースで演奏する。あとは音響担当の方がうまく合わせたりしてくれる。音響クルーのチームワークですね」

 話し終わると、自身のスマートフォンに出てくる譜面に合わせ、再び鍵盤を叩きはじめた。

「We are One」の共有

 フィールド、スタンドを盛り上げるのは公式パフォーマンスチーム、ブルーレジェンズ。完全密閉ではないとはいえ所沢は屋根に覆われている。完全屋外の大宮では雨風の影響が多大にあると思う。

「一番気になるのは風。旗を使ってのパフォーマンスがウリの1つでもある。風に負けてしまってはダメだし、投げた時の落下場所にも注意を配っている」

 話してくれたのはブルーレジェンズ、ディレクターYukiさんだ。

「屋外球場は風の心地良さを感じる。スタンド内を回る時などは、そういう気分の良い風をファンの方々とお互い感じながら応援したい」

 フィールドでの練習前から、球陽正面入口脇にある空きスペースで振り付けなどの反復練習を重ねる。選手同様、演者としての強いプロ意識を感じた。

「となりにサッカー、大宮アルディージャさんの本拠地もある。他スポーツなどとのコラボとか、今後もいろいろ展開できればいいです」

 まもなく開場、ここから先がブルーレジェンズの魅せ場である。足早に控え室へ戻っていった。

 話を聞いた人たちばかりではない。内野が土のフィールド、予期せぬことがおこらぬよう、グラウンドキーパーは試合中も細部まで協議していた。ビールの売り子さんたちは、通常のように控え室があるわけではない。屋外の階段踊り場に荷物がまとめて置かれ、お客さんの動線すぐ脇で休憩などをとっていた。レギュラー放送をおこなうメディアクルーは普段と機材の場所も異なるために、何度も打ち合わせを重ねる。

 大宮開催だからクオリティが下がっても仕方がない、とは決して言わせない。そういう強い気持ちが誰からも伝わってくるようだった。

 試合に勝てば誰もが喜ぶ。しかし長いシーズン、どんなチームも間違いなく負けはある。そんな時でもチームは1つという意識を持ち、ファンと共有する姿勢があれば、見捨てる人はいないだろう。

「We are One」

 ユニフォーム右袖エンブレムに書かれている想いが、埼玉西武に関わるすべての人々に浸透し始めている。そのビジョンは所沢だけでなく、大宮、沖縄、群馬、どこで試合を開催しようが変わらない。埼玉西武の強みを、大宮で改めて見たようだった。これならばファンが増えるのも納得できる。

(山岡則夫 / Norio Yamaoka)

山岡則夫 プロフィール
 1972年島根県出身。千葉大学卒業後、アパレル会社勤務などを経て01年にInnings,Co.を設立、雑誌Ballpark Time!を発刊。現在はBallparkレーベルとして様々な書籍、雑誌を企画、製作するほか、多くの雑誌やホームページに寄稿している。最新刊は「岩隈久志のピッチングバイブル」、「躍進する広島カープを支える選手たち」(株式会社舵社)。Ballpark Time!オフィシャルページにて取材日記を定期的に更新中。