矢野謙次特命コーチ(北海道日本ハム)が、アメリカコーチ留学で学んだこととは?

2019-05-13 08:00 「パ・リーグ インサイト」編集部

チームの環境・体制に見る、メジャーと日本の違い

 選手のロッカールームは、ソファーがあったり音楽が流れていたりと、くつろげる環境でした。GMやスタッフの人たちは全員、グラウンド上のことでも、グラウンド外の生活のことでも、選手にストレスを与えたくないという考えを持っています。なので選手たちにとってロッカールームは、自分の家や部屋みたいな感覚。そこが日本とは違うのかなと思いました。

 あと日本と違うところは、練習のスタートが早いということ。朝の5時からやって、全体練習を12時、13時までやって終わり。あまり日本みたいに居残り練習はなかったですね。早朝に来てコンディションを整えて、体操やストレッチ、ウエイトトレーニングをして、守備の基本、ゴロの捕球動作やハンドリングの練習をします。それから素振りしたり、ケージで打ったり。その後全体練習に入るわけです。全体練習が終わったらその日は終わり。午後からは家族と過ごすっていう感じです。

 アメリカの球団にあって、日本の球団にはないもので言うと、レンジャーズでは、メンタルトレーニングコーチがいました。日本にもフィジカルトレーニングコーチやトレーナーはいますが、レンジャーズではメンタルトレーナーも置いていましたね。

 僕は、プロ野球2年目の終わりに、メンタルトレーナーにトレーニングを受けていた経験があります。シーズン中はもちろん、シーズン中でなくても、なにか不安は抱えているはずなんですが、でもそれを吐き出すところがない。話を聞いてくれて、こうやって考えたらいいんじゃないとか、それちょっと違うよとか、軌道修正していい考え方を提示してくれる。そうした考え方とか気持ちの面をケアする存在の人は、ものすごく大事だと思います。

 若い頃も「なんかしんどいな」ってときがあるんですけど、年齢重ねていくと、年上だから愚痴を言ったらかっこ悪いって思う場面もあるじゃないですか。立場的に言えないとか、レギュラーをずっと張っている人間が、弱いところを見せられないとかもあると思うんです。それを吐き出せる人、1年間を通して戦ううえでの不安材料を除去してくれる人がいるってことは大事だなと思いますね。

 あと、レンジャーズではコーチやマネージャーじゃなくて、マイナーリーグや若手選手のそばに寄り添って見てくれる人がいるんです。グラウンドでの表情とか仕草から、悩みを抱えていないかどうか日常生活にも目を光らせる役割の人。それはすごく大事だなと感じました。

5/11、対埼玉西武戦で捕手陣相手にノックをする矢野コーチ。

5/11、対埼玉西武戦で捕手陣相手にノックをする矢野コーチ。

次はマイナーの選手が育っていく様子を見たい

 日本では「きっちりちゃんとやりましょう」とよく言われますよね。気配りや先を読むことに秀でています。このプレーのあとには、これが起こるだろうからカバー入ろうかなとか。プレーではなく気配りの面は、間違いなく日本の方が優れている点だと思います。それに比べて、いい意味でのいい加減さ、それゆえの思い切りのよさがアメリカにはあります。アメリカのいいところ、日本のいいところをうまく組み合わせて、いい部分をファイターズの選手に還元して、それが選手にとって簡単でわかりやすく伝えることを意識していきたいです。

 これからまたアメリカへ飛び立つわけですが、今度は、AAAから下のカテゴリーを見に行く予定です。試合前の練習からベンチにも入っていいということになっているので、AAAの現状や一番下のルーキーリーグといったマイナーの現状をみて、選手がステップアップするために監督コーチが何を提供し、それを選手たちはどう受け取っているのか、またどう行動に移しているのかを一緒に過ごしながら感じていきたいと思っています。

 先ほど、メジャーの食事はおいしかったと話しましたが、マイナーの食事は一般的によく言われているように、多分よくないと思います。量もないし、パンとソーセージを渡されて、「ほら、食え」みたいな。でも、それもまたおもしろいじゃないですか。僕もそれを体験して、そこから選手たちがどうやって這い上がってくるのか、ふるいにかけられてどう残っていくのか見られるのを楽しみにしています。

文・海老原 悠

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