終わりなき追及。地元に愛されるボールパークに

2016-02-20 00:00 「パ・リーグ インサイト」新川諒

米国を参考に、新施設ラッシュ

野球専用スタジアムをボールパークに。各地では野球スタジアムのあり方が変貌を遂げつつあり、パ・リーグでもホーム球場やファーム施設の改修ラッシュが続いている。野球ファンだけでなく、多くの人々に楽しんでもらう場を作るため各球団が努力を続けているのである。

楽天Koboスタジアム宮城では内外野を人工芝から天然芝へ張り替え、選手にとってより良い環境をグラウンド内で作り出している。グラウンド外でも観戦に訪れるファンに対して観覧車という新たな楽しみ方を提供する計画を打ち出した。

千葉のQVCマリンフィールドでは、国内最大級となるスクリーン設置の改修工事を行っている。球場全体のスクリーンが連動され、ファンにとってはさまざまな映像が楽しめる場となる。

ホーム球場だけでなく、ファーム施設、そしてキャンプ施設の改修・建設ラッシュも広がっている。福岡ソフトバンクは筑後に二軍・三軍が利用できる巨大なファーム施設を建設中。北海道日本ハムのキャンプ地・名護では名護市長が新施設建設を約束したところだ。

外野にメリーゴーラウンド?ジャグジー?

筆者自身も米国滞在時代、日本のプロ野球の球団スタッフが米国視察として球場を訪れる現場には何度か遭遇したこともある。メジャーリーグだけでなく、マイナーリーグや独立リーグの球場、さらには他スポーツのアリーナ・スタジアムにも足を運んでいるようだった。各球団が各地でいろんなヒントを得たのだろうが、それでも観覧車を球場に作るという日米初の独自の挑戦も行っている。


私がこれまで見てきた球場でもユニークだったのは、外野コンコースにメリーゴーラウンドを設置していたルイビル・バッツ(シンシナティ・レッズ傘下3A)のルイビル・スラッガー・フィールド、そして同じく外野方向のスペースにジャグジーを設置していたラウンドロック・エクスプレス(テキサス・レンジャーズ傘下3A)のデル・ダイヤモンド・パークだ。もちろんメジャーにも各球場特有の魅力があり、私も全ての球場に行ったことはないが、50以上訪れた球場それぞれに特徴があり、とてもではないがここでは挙げきれない。

「野球以外」でも活用されるボールパーク

最近ではシーズンオフや試合がない日にもその球場に人を呼び込むため、いろいろな取り組みが行われている。

ボストン・レッドソックスの本拠地フェンウェイ・パークでは、積極的に他スポーツのイベントを開催している。NHLが毎年屋外で試合を開催するウィンター・クラシックを開催したこともあれば、2010年には「フットボール・アット・フェンウェイ」と題してセルティックFCとスポルティング・リスボンの試合会場となった。

大学アメリカンフットボールの試合も度々開催しており、毎年最低1回は大物歌手のコンサートを主催している。そしてつい先日には「ビッグエア・アット・フェンウェイ」と題したスノーボードとフリースタイルスキーの大会を開催した。野球専用スタジアムではなく、いろいろなスポーツやエンターテイメントの場として、果敢にチャレンジを続けている。

利益、ファンの求めるものの追求

また、さまざまな企画を打ち出すだけではなく、時には利益、そして地元のファンが本当に求めている決断に迫られることもある。

2012年シーズン、ニューヨーク州ロチェスターに位置するフロンティア・フィールドを通常本拠地としているロチェスター・レッドウィングス(ミネソタ・ツイン傘下3A)と、その年ホーム球場の改修工事を行っていたため本拠地がなかったスクラントン・ヤンキース(ニューヨーク・ヤンキース傘下3A)の両チームが、同じ球場をホームとして共有していた。

両チームが同じ日にホームゲームを予定した場合には、スクラントン・ヤンキースはバタヴィア・マックドッグス(現マイアミ・マーリン傘下1A)が本拠地とするドワイヤー・スタジアムで試合を行っていた。収容2,600人とされている球場だ。

5月6日の試合、ニューヨーク・ヤンキースは通算メジャー256勝のアンディ・ペティットを3Aでリハビリ登板させることを発表した。だがその日はレッドウィングスがフロンティア・フィールドでホームゲームをすでに予定していた。ペティットは収容2,600人のスタジアムで登板するはずだったが、同じニューヨーク州のスターが登板という、滅多にないチャンスに、レッドウィングスの試合は前日の土曜日に移されダブルヘッダーとなり、日曜日の5月6日にはスクラントン・ヤンキースのホームゲームを開催することが決断された。このとき以外にシーズン中、チームに帯同していて日曜日が休みだったのはオールスター休暇以外で記憶にない。

利益を生み出すため、そして地元のファンが求めていることを優先するためなら、数日前に公式戦をも動かしてしまうのだ。結果として、ペティットが登板した試合はレギュラーシーズンの試合としては、フロンティア・フィールド史上最多となる13,584人が訪れた。

地元ファンに愛されるために

もう一つ、このフロンティア・フィールドを職場としていた時記憶に残っているシーンがある。試合当日の全体練習が始まる前に、ウェディング衣装の新婦新郎とその友人たちが球場内で写真撮影をしていたことがあった。練習のためグラウンドに出てきた選手たちはその光景を見て、彼ら彼女たちをグラウンドに呼び、キャッチボールをして写真撮影に協力したのだ。地元の球場が地元の人に愛され、さらには選手たちのとっさの判断で一生記憶に残る思い出が作られていくのである。

アメリカの野球界では、今後も建設・改修ラッシュが続く。シカゴ・カブスの本拠地、リグレー・フィールドは100年以上の歴史を誇るが、4年計画で改修工事を進め、着々と伝統と新しい形を融合した球場が完成しつつある。そしてアトランタではブレーブスが2017年開幕から新たな球場をホームにする予定としている。

地元ファンに愛され続けるために進化を続ける球場。時にはファンのため、さらには利益を追求して驚くような決断を求められることもある。そして時には一人一人の笑顔のために、さまざまな企画でスポーツの醍醐味である「何が起こるか分からないストーリー」を生み出すことで、愛されるボールパークを目指す。

野球スタジアムをボールパークにしていく構想は終わりなき追求かもしれない。だが、毎年のように進化を遂げていくスタジアムがあるからこそ、皆が足を運ぼうと思うのではないだろうか?