「野球とゴルフ」、「野球とアイスホッケー」。垣根を超えるノウハウの共有

2016-08-06 00:00 「パ・リーグ インサイト」新川諒

パ・リーグ6球団共同出資で創設されたパシフィックリーグマーケティング(以下PLM)は、公式ライブ動画配信サービス「パ・リーグTV」や、パ・リーグ6球団公式サイトの企画・運用・管理、6球団の海外でのプロモーション活動、さらには「親子ヒーロープロジェクト」なども手がけている。

多くの事業を取りまとめているが、中でも競技の垣根を超えた事業として広がっているサービスがある。2012年からのパ・リーグ主催における2,000試合以上のライブ配信実績に基づく、野球だけではないゴルフや他競技のスポーツのインターネットライブ配信を援助する「ライブ配信プラットフォーム貸出サービス」だ。

野球で培った動画配信技術は、2015年秋に開催された女子ゴルフトーナメントで活用された。PLMの配信プラットフォームを活用して、今までとは違った視点から大会の模様をリアルタイムでネット中継をした。これまでのテレビ中継では物足りないゴルフファンに全選手のプレー視聴を可能とし、1打席毎のショット検索機能を付けることで、これまでにない視聴体験をもたらした。

このような動きは米国でもMLBAM(アドバンスドメディア)が先駆者となり、その動画配信技術をスポーツ界に還元している。2015年4月にMLBAMはPGAと複数年契約に合意し、30以上のPGAの大会を米国そして主要国のゴルフファンへ届けることを発表した。そしてPLMより一足先の7月30日から開催されたクイッケン・ローンズナショナルズで初めてのネットでの動画配信を実施した。

30球団の共同出資で創設されたMLBAMの他競技進出はゴルフだけにとどまらず、8月にはプロアイスホッケーリーグのNHLとも複数年契約を結んだ。ホッケーリーグのオンラインコンテンツを野球のMLBAMが統括するのは、不思議な構造ではある。それだけ野球で培った動画配信技術からオンラインコンテンツを熟知している表れだろう。

そして今年に入ると、6月にはウォルト・ディズニーカンパニー傘下のスポーツ専門チャンネル「ESPN」がMLBAMの33%の株を買収し、今後はESPNもオンラインストリーミングを強化することが予想される。

米国でも、野球界からスタートした動画配信の技術が競技の垣根を超え、スポーツ界全体によりよいサービスを提供することとなった。1つの業界にとどめておくだけではなく、他競技にそのサービスやノウハウを共有することで、さらなる相乗効果が生まれる。日本でもPLMが先駆けとなり、ゴルフ界との実験を行ったことから、今後さらに他競技へ広がっていくことが期待される。

動画配信技術だけでなく、これまで多くのプロモーションやチケットの売り方までさまざまなサービスが競技の垣根を超えて、共有されてきたことだろう。面白いものは取り入れる。他競技でもあってもより良いサービスをファンに届けることができると思えば、協力を要請する。そのような流れがスポーツ界全体でこれからさらに広がれば、業界としても良いものがファンの元へ届いていくのではないだろうか。