「確信」とともに、千葉ロッテ・唐川投手が再び歩みを始めた

2016-08-15 00:00 「パ・リーグ インサイト」マリーンズ球団広報 梶原紀章

強い想いでマウンドに上がった。8月11日の楽天戦(QVCマリン)。唐川侑己投手は最後の打者をレフトフライに仕留めると、グラブをポンと叩いた。それは2011年6月28日の北海道日本ハム戦以来、実に5年ぶりの完封勝利だった。

「5年ぶりの完封勝利と言われて、嬉しいかと言われるとそうではないですね。むしろ、なんか寂しいですね」

充実感はもちろん、あったはずだ。しかし、本人の口から喜びの言葉が出ることはなかった。ここまで紆余曲折を考えると、この1勝で満足するわけにはいかない。もっともっと、やらないといけない。そのような強い決意が感じ取られた。

11年に12勝6敗。初めて2ケタ勝利を挙げ、地元出身の若き右腕が、いよいよエースへの階段を駆け上がると誰もが思った。しかし、翌年、右肘を痛めたことで歯車が狂いだした。この年、それまで8勝をマークしていたが、勝ち星はそこから伸びることはなかった。13年が9勝(11敗)、14年4勝。昨年は5勝を挙げたものの8月に抹消されると、その後は一軍再昇格を果たすことなく、シーズンが終わった。

チームがクライマックスシリーズファイナルステージまで進み、盛り上がりを見せる中での8月以降の空白期間。唐川は自分を見つめ直すことに徹した。ビデオを見た。そして二軍の小谷正勝投手コーチに教えを乞うた。横浜、ヤクルト、巨人などで投手コーチを歴任。数々の名選手を育て上げた名伯楽のピッチング理論は興味深かった。

「投げる動作では上半身と下半身や肩と肘など体の連動が大事。手首を走らせてボールに力をこめるために、どうすればいいのか。どのように体を使う必要があるのか。小谷さんに話を聞いて、時間をかけていろいろと議論をさせていただきました」

ボールをもっともっと力強く、勢いよく投げるためにはどのようなフォームで、どのように投げることが必要なのかというメカニックを探求した。その作業に没頭をしていると、不思議と焦りは消えていた。振りやすさを追求して腕を少しだけ下げてみた。ピタリとはまるポイントがあった。大きな発見だった。

「周りの人の考えは別として、自分の中で過去を否定するつもりはない。やってきたことは間違いだったと思っていないし、その積み重ねや、いろいろ試行錯誤した中で、その延長線上に今のボクがある。去年のあの時期はもう一回、しっかりと自分は投手としてどうしていけばいいのかを考えようと思っていた。見つめ直すいい期間だと思って、日々を大事に過ごしました」

言葉で表すことはなかったが、強い決意がみなぎっていた。技術面以外にも見直した。ウェートも研究し、自分に合っているトレーニングは積極的に取り入れた。食事もタンパク質を増やして5キロ増の85キロにした。今シーズン、春季キャンプは二軍スタートだったが、自身の中では必ず結果を出す日が来ると確信が持てる充実感があった。だから、焦ることなく二軍で好投を続けながら出番を待った。

5月6日のオリックス戦(QVCマリン)で今季、一軍初登板を果たすと5月22日の同カード(京セラドーム大阪)で今季初勝利。昨年、平均130キロ後半台だったストレートはMAX143キロを記録し、自分を見つめ直した期間に手に入れたものを存分に発揮した。そして8月11日の楽天戦(QVCマリン)。MAX144キロのストレートを軸にカーブ、カットボール、シュート、スライダー、フォークとさまざまなボールを駆使してイーグルス打線を危なげない投球で完封。5勝目を挙げ、蒸し暑かった夏の夜空に背番号「19」は燦然とした輝きを見せた。

「一番大事なことはチームメートに信頼をしてもらうこと。それは試合の中で作り上げていくしかない。先を見るのではなく、一試合、一球を大事にして、信頼を作っていく。先の目標と言うよりは一つ一つが大事になってくる。今はそれしか考えていない」

飄々とした表情は今もルーキー時代も変わらない。熱く語る方ではないが、その言葉には自信とプライドと負けん気が織り交ざる独特の力強さがある。まだ27歳。怪我を経て掴んだピッチングには絶対な確信がある。ここからの長い野球人生で、一つ一つと前へと突き進み、素晴らしき新たな物語を見せてくれるはずだ。