東京大学・矢谷浩司氏が展望。手軽に“自分だけのハイライト”を作れる時代へ

2019-08-21 12:00 「パ・リーグ インサイト」望月遼太
矢谷氏は「人とコンピュータの関わり方」を日々、研究している

矢谷氏は「人とコンピュータの関わり方」を日々、研究している

設定された時間に合わせるというだけでなく、柔軟な対応も求められるように

 矢谷氏は、ユーザーの求めに応じて柔軟に対応していく必要性も感じ取っている。その見通しは、矢谷氏が過去に行った研究と、その成果から来ているようだ。

「ユーザーが見たい時間を自分で指定できるだけでなく、見ているうちに『これ、面白そうだからもう少し長く見よう』みたいに心変わりできるシステムを作りました。なぜかというと、やはりユーザーの気持ちとして、見ているうちに『これ、しょうもないからもうちょっと短くしよう』とか、『これ、やっぱり見たいな』となりうるわけですよね」

 その結果も踏まえて行われている今回の研究の進捗としては、ライトユーザーが求める動画の長さや、その層に重視されるシーンの調査を定量的に行っている最中ということだ。今後の展望について、矢谷氏は次のように語っている。

「今のハイライト動画を作るシステムだと、まず2分で作って、もう少し長く見たいなと思ったら、もう1回機械にかけ直して3分のものを作って、それでまた見て……と、ユーザーさんにとっての負荷が大きくなってしまいます。単に時間に合わせるだけではなく、やっぱりもうちょっと見たいなと思ったら少し伸ばしたり、これは要らないなと思ったら短くしたり、違うシーンに行ったり……ということは我々の技術でも、もう少し簡単にできる部分があると思いますので、そういうものも含めて実現していきたいと」

 今後研究が進んでいけば、特定の選手のプレーだけを抽出したハイライトや、観客席の応援風景や応援歌、球団マスコットだけを見る動画の作成も、個人のニーズに応じて行える可能性があるという。

 また、シーンのカットに伴い、「『この後、こっちのチームが何点入れて』みたいなナレーションを自動的に生成することもある程度は可能だと思っています」という。この機能が実装されれば、自分の好きなチームの打っているシーンや抑えているシーンだけを抽出し、他はナレーションで済ませる……という、ファンならではのハイライトの作り方も可能になってくるだろう。

「皆さんにとって野球が『ちょっと見てみよう』と思ってもらえるような……」

 今回の研究によって、将来的には試合終了直後、あるいは試合中に視聴を始めたタイミングでそれまでのハイライトを確認するといった使い方も、技術的には可能になるかもしれないそうだ。矢谷氏はこの研究の目標について、次のように語っている。

「家の中で過ごせる時間が限られてきている中で、勉強やビジネスにつながることだけではなく、気分転換に野球の格好いいシーンでも見てリフレッシュしようかな、ということもあり得る話です。そんな時に、この技術によって、皆さんにとって野球が『ちょっと見てみよう』と思ってもらえるような一つの選択肢となれば、我々としては嬉しいと思っています」

 自分が好きな選手や場面だけを集めた、オリジナルのハイライトを作る――一昔前では考えられなかったような技術が現実のものとなるのも、そう遠い未来のことではないのかもしれない。