【千葉ロッテ売り子名鑑】売り子歴24年を誇る幕張のレジェンド・近藤さん「自分の可能性に挑戦してみたい」

2019-09-12 21:44 「Full-Count」編集部
売り子24年目のレジェンド・近藤晃弘さん※写真提供:Full-Count

売り子24年目のレジェンド・近藤晃弘さん※写真提供:Full-Count

ソフトドリンクとホットドッグを担当、デビュー戦は「銚子商業VS拓大紅陵」

 千葉ロッテは今季も、ZOZOマリンスタジアムでの主催ゲームを対象に大好評企画「売り子ペナントレース」を開催。現在は、厳選メンバー5人が、ハイレベルな決勝ラウンドで白熱したを繰り広げている。

 昨年はドリンクメニュー(ソフトドリンクも含む)の立ち売り販売をする売り子経験5年以内のメンバーが参加対象となったが、2年目の今年はハンデをつける形で売り子経験年数に関わらず参加が可能となった。勤続年数に応じて、日々の売上げ杯数にボーナスを加算。1年目は1日の売上杯数の150%、2年目は140%、3年目は130%、4年目は120%で、5年目以上はボーナスなしとなり、ソフトドリンク・日本酒の売上げは勤続年数に関わらず200%に設定された。

 さらに、月ごとの売上杯数1位の売り子が、9月からの決勝ラウンドに進出する新方式を採用。昨年の88名から一気に110名までアップした参加者の中から、各月の頂点に立った精鋭5人が9月1日から新たな戦いに臨んでいる。「Full-Count」では決勝ラウンドに進出した5人に直撃インタビューし、売り子という仕事に対する思いや情熱を語ってもらった。

 第4回は5月チャンピオンの、近藤晃弘さん(コカ・コーラ)だ。

 ZOZOマリンを訪れる千葉ロッテファンなら誰もが知る存在、それが近藤さんだ。ソフトドリンクとホットドッグの売り子を始めて、今年で24年目。誰よりもマリーンズを知り、マリーンズを愛する人物でもある。

 デビュー戦は高校野球だった。1995年夏の千葉県大会決勝。高校卒業後に就職した会社では、新入社員が高校野球の売り子の手伝いをすることが恒例で、近藤さんも借り出されたことがきっかけだった。その年のセンバツで準優勝した銚子商業と拓大紅陵という好カード。炎天下での熱戦でドリンクは飛ぶように売れ、初日から200杯以上を売り上げた。「ここまで売れると思っていなかったんですよ、いきなり(笑)」。人見知りだった近藤さんの心の中に、接客の面白さが刻みこまれた。

 1995年。千葉ロッテを率いたのは、ボビー・バレンタイン監督だった。第1次バレンタイン政権で、中心選手は初芝清、小宮山悟、伊良部秀輝。この年にデビューしたルーキーは、サブローと“ジョニー”こと黒木知宏だ。売り子の魅力に惹かれると同時に、野球の魅力にも取り憑かれた24年。ソフトドリンクとホットドッグを入れた飯台を担ぎ、スタンドを縦横無尽に歩き回りながら、いい時も悪い時もマリーンズのすべてを見守ってきた。

 思い出深いのは、第2次バレンタイン政権で日本一に輝いた2005年シーズンの盛り上がりだ。大好きな選手は、この時に正捕手でもあった里崎智也。「野球の実力はもちろんですが、里崎さんの人間性ですね。説明するのは難しいんですが、簡単に言うと、やっぱりいい人。会うと『近藤さん、お疲れ様です』と声を掛けてくださって。覚えていてくださるのが、うれしいです」と話すと、照れくさそうに笑った。

後輩にも必ず伝える売り子の心得「怪我をしない、させない」

 仕事場でもある球場の客席に立つと、まず「スタンドを全体的に見渡すようにしています」。飲み物がほしいお客さんを見逃していないか、集中力を研ぎ澄ます。最近は紙幣や硬貨をポーチにしまう売り子が増えているが、近藤さんは畳んだ紙幣を中指に巻き付けて挟む、昔ながらのスタイル。「ポーチに入れるとゴチャゴチャするので。コツはなるべく深く入れることですね」と熟練の技で、迅速な接客を心掛ける。

 後輩たちに、必ず教えてきた売り子の心得がある。「怪我をしない、させないってことですね。お客様を怪我させてしまったら、取り返しのつかないことになりますから」。特に子供が近くにいる時は、より慎重な気遣いを見せる。

「小さいお子さんがいる時は、飯台を少し高く持ち上げて、ぶつからないようにしています。あと、以前は飯台が金属製だったので、角を手で覆ったりしていました。当たったら角が一番痛いところなので。今は素材が変わりましたが、ぶつかったら危ないのは変わらない。お客様の間を通る時は、必ず『失礼します』と声を掛けています」

 近藤さんの気遣いは、ファンにもしっかり伝わっている。売り子歴5年以内という条件がなくなった今年、「自分の可能性に挑戦してみたいと思って」と売り子ペナントレースにエントリーした。すると、ファンから「頑張って下さい」「1位取って下さい」「近藤君に勝たせてあげたい」といった声を掛けられるようになった。すると、5月には2103杯(ハンデつき4206杯)を売上げてチャンピオンに。決勝ラウンドは「順位に関係なく、自分で楽しみながらやりたい」と控え目だが、応援してくれるお客さんの声には応えたい。

 9月はもう一つ、チームの行方が気になる。今年のパ・リーグは混戦模様で、千葉ロッテはクライマックスシリーズ(CS)出場を巡り、激戦の真っ只中だ。「CS出場はあると思います。千葉ロッテの場合だったら3位に入れば何とかなる。唯一下剋上をしたチームですから」と、2010年の再現を期待している。注目選手は、新加入のマーティンだ。「来てからチームがだいぶ変わった。あのレーザービームは見ていて衝撃的でした」と声を弾ませる。

 時折、スタンドを歩きながらチャンステーマを口ずさんでしまうことがある。「やっぱり千葉ロッテの応援は12球団イチ楽しい応援だと思います」。幕張のレジェンドは、今日もスタンドからチームをサポートし続ける。

(Full-Count編集部)