パの規定投球回到達者、わずか4人。昨季との比較に見る、異常事態の理由は?

2019-09-14 12:00 「パ・リーグ インサイト」望月遼太

《THE FEATURE PLAYER》F有原『左打者封じのチェンジアップ』まとめ (C)パーソル パ・リーグTV

先発として毎試合6イニングを投げ続ければ、規定投球回に到達できる

 NPBにおける2019年の規定投球回は、試合数と同じ143イニングと定められている。開幕から中6日で登板し続けた場合、1人の先発投手が年間でマウンドに上がる回数は基本的には24回。そして、143試合を24で割った値は5.96。すなわち、1度の登板につき約6イニングを消化し続けながら年間を通してローテーションを守り続ければ、規定投球回に到達することができる計算となっている。

 もちろん、1試合で7イニング以上を投げられればそれだけ余裕も生まれるが、1年間ローテーションを守りながら平均6回を投げ続けるというハードルは決して低くはない。だからこそ、「規定投球回到達」は先発投手にとって一つの勲章ともなるわけだが、今季はその到達者数に関して、過去に類を見ないほどの異変が生じている。今回の記事では、パ・リーグの先発投手たちを取り巻く状況について紹介するとともに、異変が起こった要因についても考えていきたい。

過去10年と比較してみても、今季の規定投球回到達者は異例の少なさに

 まず、現時点で今季の規定投球回に到達しているパ・リーグの投手たちの顔ぶれと、その成績を見ていきたい。(以下、成績は9月13日の試合終了時点)

有原航平投手(北海道日本ハム)
22試合 151.1回 14勝7敗 150奪三振 防御率2.44
千賀滉大投手(福岡ソフトバンク)
24試合 168.1回 13勝7敗 214奪三振 防御率2.83
山岡泰輔投手(オリックス)
23試合 146.1回 10勝4敗 138奪三振 防御率4.06
美馬学投手(楽天)
23試合 133.2回 7勝5敗 104奪三振 防御率4.17

  以上のように、規定投球回到達者はわずか4名となっている。この数字がいかに少ないかを示すため、過去10年間のパ・リーグにおける規定投球回到達者の人数を以下に列記していきたい。

2009年:17名
2010年:16名
2011年:17名
2012年:13名
2013年:12名
2014年:13名
2015年:12名
2016年:14名
2017年:13名
2018年:9名

 2011年までは16~17名の投手が規定投球回に到達していたが、2012年にやや減少して13名に。以降、2017年まで6年間にわたって12~14名の間を推移しており、パ・リーグにおける到達者数の大まかな目安が生まれていた。そんな中、2018年に到達者が初めて2桁を割り込んで9名となり、安定していた過去6年間の目安から逸脱した数値が出た。2019年の4名という数はさらにその半分以下であり、過去の数字を振り返ってみてもまさに異例の事態といえる。

昨季の顔ぶれと比較してみると、そこから様々な要因が見えてくる

 続いて、今季との比較対象として、2018年に規定投球回に到達していた9名の投手たちの顔ぶれと、その成績を確認していきたい(所属は当時)。

岸孝之投手(楽天)
23試合 159回 11勝4敗 159奪三振 防御率2.72
菊池雄星投手(埼玉西武)
23試合 163.2回 14勝4敗 153奪三振 防御率3.08
上沢直之投手(北海道日本ハム)
25試合 165.1回 11勝6敗 151奪三振 防御率3.16
マルティネス投手(北海道日本ハム)
25試合 161.2回 10勝11敗 93奪三振 防御力3.51
西勇輝投手(オリックス)
25試合 162.1回 10勝13敗 119奪三振 防御率3.60
則本昂大投手(楽天)
27試合 180.1回 10勝11敗 187奪三振 防御率3.69
涌井秀章投手(千葉ロッテ)
22試合 150.2回 7勝9敗 99奪三振 防御率3.70
多和田真三郎投手(埼玉西武)
26試合 172.2回 16勝5敗 102奪三振 防御率3.81
山岡泰輔投手(オリックス)
30試合 146回 7勝12敗4ホールド 121奪三振 防御率3.95

 上記のランキングを比較するだけでも、規定投球回到達者が減った理由の一つが浮かび上がってくる。則本投手岸投手はケガで長期離脱を強いられ、上沢投手マルティネス投手もシーズンの多くを棒に振った。いずれも万全ならば年間を通してローテーションを守れるだけの実力を持った投手であり、主力級の投手の中に故障に悩まされる選手が多く現れたことが、今季の状況に影響したと考えるのは自然なことではないだろうか。

 また、昨季は規定投球回に到達しなかった面々の中にも、ケガの影響を受けた投手は少なくない。石川歩投手(千葉ロッテ)は2年続けてケガによる離脱を経験し、開幕ローテーションに入った有吉優樹投手(千葉ロッテ)も4月に手術で戦線離脱。ディクソン投手(オリックス)も故障で出遅れ、復帰後はクローザーに転向した。昨季11勝を挙げた榎田大樹投手(埼玉西武)も故障で開幕には間に合わず、復帰後も本来の投球を見せられずにいる。

 開幕から先発ローテーションに加わり、防御率2.72と快投を続けてブレイクを果たしつつあった21歳の右腕、榊原翼投手(オリックス)が7月に負傷離脱を強いられたことは、今季を振り返るうえでもとりわけ残念なニュースの一つであった。同じく序盤戦から先発陣の一角として奮闘していた22歳の岩下大輝投手(千葉ロッテ)も8月頭にケガで戦列を離れ、先発としてシーズンを完走することは叶わなかった。

 さらに、実績ある投手の移籍と不振も影響を及ぼした。長年オリックスの先発陣を支えた西投手がFAで阪神に移籍し、埼玉西武のエースだった菊池投手は米球界に挑戦。その後を継ぐ新エースとして期待がかかった前年の最多勝右腕・多和田投手は、わずか1勝、防御率5.83と絶不調にあえいだ。2014年の移籍以来毎年規定投球回に到達していた涌井投手も今季は安定感を欠く投球が続き、7月末を最後に一軍登録を抹消されている。