今季81試合登板の埼玉西武・平井は何が凄いのか? パの強打者3人が鉄腕の特長を証言 

2019-10-09 07:45 「Full-Count」編集部
埼玉西武・平井克典※写真提供:Full-Count(写真:荒川祐史)

埼玉西武・平井克典※写真提供:Full-Count(写真:荒川祐史)

北海道日本ハム大田、楽天浅村、千葉ロッテ井上…右のスラッガーが平井を語る

 21年ぶりにパ・リーグ2連覇を達成した埼玉西武。9日からは11年ぶりの日本シリーズ出場を懸けて本拠地で福岡ソフトバンクとの「パーソル クライマックスシリーズ パ」ファイナルステージに臨む。レギュラーシーズン143試合で計756得点と、圧倒的な攻撃力で混パを席巻したが、忘れてはならないのが、セットアッパー・平井克典投手の大車輪の活躍だ。2016年ドラフト5位でホンダ鈴鹿から入団すると、徐々に登板数を増やし、今年は81試合に登板。「神様、仏様、稲尾様」で知られる稲尾和久が1961年に残した1シーズン78登板という球団記録を更新した。

 3年目にして初めて1シーズンをフルで投げ抜いた鉄腕は、主に試合終盤に颯爽とマウンドに上がると、パ・リーグの名だたる強打者たちと対峙し、きりきり舞いにしてきた。ここまで登板数を伸ばした理由は、もちろん本人が公言している“投げたくて仕方ない体質”や、首脳陣からの厚い信頼、故障知らずの強い身体……。挙げればキリがないが、1番はその巧みな投球術にある。“神様、仏様、平井様”は一体何がすごいのか。対戦してきた右の強打者たちの証言を紹介する。

「真っ直ぐの力があるから、スライダーも生きるんだと感じます」と、平井の投球を語ってくれたのは、今季の対戦成績が8打数1安打だった北海道日本ハム・大田泰示だ。「ただ横に曲がるんじゃなくて、真っ直ぐの軌道に見えてスライダー。(打者からは)真っ直ぐに見えるけど、曲がる。サイドスローで、ああいう球を投げられるのは少ない」。MAX150キロの直球とスライダーのコンビネーションが特長だという。「真ん中からインコースの球はシュートしてくる。(直球を)内角にもしっかり投げられるし、内角のスライダーも投げられるから、ストライクゾーンを大きく使った幅広い投球が出来る」と内角攻めに長けた巧みな投球術を証言した。

 次の証言者はリーグを代表する右の強打者、楽天・浅村栄斗だ。昨年はチームメイトとしてリーグ優勝の喜びを分かち合ったが、今季は“強敵”として埼玉西武投手陣の前に立ちはだかった。シーズンを通じ、埼玉西武に対しては打率3割超え。今季放った33本塁打のうちの11本が埼玉西武からと圧倒的な相性の良さを誇ったが、平井には7打数無安打に終わった。浅村は「打ちづらいっす……」とかつての同僚右腕の攻略に苦しんだようだ。「良いピッチャーですよ。コントロールもいいし、独特な投げ方もあって打ちづらい。内角にもスライダーを投げられるし、外からボール球になるスライダーも投げ分けられる」と大田と同様に、ホームベースの横幅を広く使った投球を平井の特長のひとつに挙げた。

 そんな平井の“大ファン”だというのが、千葉ロッテの主砲・井上晴哉だ。「どれだけ(継投の)計算をしても、後ろで絶対に出てくる。辻監督が(継投を告げるために)立った瞬間に、『ここは平井でしょ』『平井って言ってくれ!』と思っちゃうんですよ」と毎回の対戦を心待ちにしている様子だ。

 2人の初対戦は2018年7月9日。この時は3球三振で平井に軍配が上がっている。それから対戦を重ね、2018年は9打数2安打。2019年は7打数2安打。井上は「対戦しすぎて、もう面白いですよ。普通のピッチャーとは全然違う。腕の振りっぷりがよくて、真っ直ぐが来るか変化球が来るかわからない。真っ直ぐも球速があるから、どっちも待つのは絶対に無理。カウントごとに、一生懸命、相手の動きを読み取る。まあ、僕の場合は対戦しすぎて心理戦になってしまいますが」と読み合いの勝負を楽しんでいるようだ。

転機はオーバーハンドからサイドスローに変えた社会人時代

 3人の強打者たちが揃って口にするのは、「サイドハンドから投げ込んでくる内角へのスライダーの打ちづらさ」だ。

 大田は言う。「(一般的に)サイドスローの投手は外中心に組み立ててくることが多い。それが、(平井は)2ストライクに追い込んでからも内角の真っすぐもスライダーも投げられる。内角を使えるから真っ直ぐ、スライダーの中でも幅広い投球が出来る。それが他のサイドスローの投手とは違う」。

 浅村が「インコースをしっかり使って意識させられて、スライダーを振らされるのがいつものパターン。それをわかっていても、なかなか打てない」と舌を巻けば、井上も「内角のスライダーが使えるサイドスローは厄介すぎる」と変則右腕が投じる伝家の宝刀を煙たがった。

 そんなリーグを代表する強打者の証言を平井本人にぶつけてみた。三者三様の言葉を聞いた平井は「そう思ってもらえるのは嬉しいですね」とニヤリ。もともとオーバーハンドだったが、ホンダ鈴鹿に入社して1年目を終えたときに「このままではクビになる」と言われたことをきっかけにサイドに転向した。もともと身体の回転が横投げに適していたこともあって球速や変化球の精度が飛躍的に向上し、プロへの切符をつかみとった経験を持つ。

 シーズンを通して強打者たちと繰り返し対峙した右腕は「(何度も対戦するのは)しんどい」と言いながらも、「対戦はじゃんけんみたいなもの。グー、チョキ、パーでどれかを出すだろうって。(抑えた場面は)じゃんけんに勝ったということ」と潔い割り切りがあるようだ。「気持ちで負けない。“やばい”と思ったとしても、悟られない」とマウンドではポーカーフェイスを貫く。どんな窮地でも飄々とかわす“平井様”と、勝負を決める一打を狙う強打者たちの駆け引きから目が離せない。

(安藤かなみ / Kanami Ando)