最終S打率.143と徹底的に封じられた森友哉 鷹・甲斐が初戦第1打席で仕掛けた“罠”

2019-10-14 10:16 「Full-Count」福谷佑介
福岡ソフトバンク・甲斐拓也※写真提供:Full-Count(写真:荒川祐史)

福岡ソフトバンク・甲斐拓也※写真提供:Full-Count(写真:荒川祐史)

「和田さんの第1打席が大きかった」4球連続で内角を攻め、森の頭に意識付け

 13日に行われたクライマックスシリーズ ファイナルステージ第4戦で勝利し、4連勝で3年連続日本シリーズ進出を決めた福岡ソフトバンク。4試合連続で2桁安打、2試合連続毎回安打、4試合で計55安打で32得点を奪い、パ・リーグ王者の埼玉西武を投打で圧倒した。

 パ・リーグ史上初となる第1戦からの“下克上”を果たした福岡ソフトバンク。埼玉西武を圧倒する攻撃力を発揮して攻め勝った印象が強いが、ディフェンス面で埼玉西武の反撃を要所で凌いだところが大きかった。4試合でリードを許したのは、第1戦の3回から7回までのみ。失点はあったものの、埼玉西武打線に要所、要所で痛打を許さなかった。

 福岡ソフトバンクのバッテリーにとってポイントとなっていたのが、埼玉西武の3番を打つパ・リーグ首位打者となった森友哉の存在だった。試合後、正捕手の甲斐拓也捕手は「森をポイントとして考えていました」と明かした。

 森はこのクライマックスシリーズファイナルステージで18打席に立ち、14打数2安打5四球1犠飛で打率.143。シーズンで105打点をマークし、埼玉西武のポイントゲッターの1人だったが、この4試合では犠飛での1打点だけしか挙げられなかった。

 埼玉西武の“森対策”は9日の第1戦の1打席目に始まっていた。甲斐は言う。「和田さんの1打席目が大きかった。最後までできたのは和田さんのおかげかなと思います。ヒットは別にいいと割り切った」。結果的に中前安打を許すこととなったこの打席に、その後、森を封じ込める布石があったという。

「詳しくは言えないですけどね」。戦略面もあることから甲斐は詳細を伏せたが、それは森の頭にインコースをどれだけ染み込ませるか、だったのではないか。

初戦の第1打席、甲斐は和田に対して4球連続でインコースを要求した

 初球は140キロの真っ直ぐ。外角に外れたものの、甲斐の構えはインコースだった。1ボールとなって投じた2球目も構えは再びインコース。森の顔付近を通過する厳しい真っ直ぐが外れてボールとなった。3球目もインコース。やや真ん中低めにきて、これはファウルに。そして、4球目。再び内角への真っ直ぐを要求し、森は腕を畳みながら、中前へと弾き返した。

「和田さんの投球で意識付けできた」。この第1打席、和田と甲斐のバッテリーは4球連続で森の内角を攻めた。パ・リーグ首位打者で卓越したバットコントロールを誇る森の脳裏に、インコースを徹底的に染み込ませるように仕向けた。続く第2打席。1死一、二塁で迎えると、1ボール1ストライクからバッテリーは外角へのスライダーを選択。森は体が開き気味になりながら、当てるだけのバッティングになり二ゴロに倒れた。またインコースに来るのでは、との意識が窺える打ち取られ方だった。

 5回の第3打席では、変則左腕の嘉弥真がマウンドに上がっていた。嘉弥真は大きなスライダーを武器とするが、ここでも甲斐は初球、2球目とインコースにストレートを要求した。1ボール2ストライクからの4球目、外角のスライダーを森は手だけで懸命にファウルにした。スイングは明らかに崩されていた。5球目も外角のスライダー。これはスイングが止まりボールとなったが、2ボール2ストライクからの6球目、再びアウトコースのスライダーに森のバットはあえなく空を斬った。

 レギュラーシーズンで打率.329をマークした森。この日の第1打席での安打以降、4試合で森が放った安打は第2戦の7回の中前安打だけ。一発はもちろん、長打を許さなかった。第3戦の千賀は森のインコースに次々にカットボールを投げ込み、まともにスイングさせなかった。本来の思い切りのいいスイングをする森の姿は、この4試合、ほとんど見ることはできなかった。

 甲斐は「森はバットコントロールがいいですし、シーズン中にやられていたので」と言う。その技術で外角のボールでも安打にしてしまう森。そんな好打者に対して、いかにしっかりとしたスイングをさせないか。スイングを崩せさえすれば…。そう甲斐は踏んでいたのではないか。

「こっちから仕掛けていかないといけない。CS前にも和田さんと話して僕の気持ちを伝えて。和田さんからも『そう思う』と言っていただいた」。甲斐はこう振り返る。第1戦の初回にあった“和田の4球”。これがクライマックスシリーズ ファイナルステージの勝敗を分ける1つのキッカケだった。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)