国際化の中でチームと球団を強くする。
オリックス・バファローズ 国際渉外部 羽場大祐さん【パ・リーグお仕事名鑑 Vol.11】

2019-10-21 18:59 「パ・リーグ インサイト」編集部

 グラウンドの上で輝く選手やチームを支えているのはどんな人たちなのか。パ・リーグで働く全ての人を応援する、パシフィック・リーグオフィシャルスポンサーのパーソルグループと、パ・リーグインサイトがお届けする「パーソル パ・リーグTVお仕事名鑑」で、パ・リーグに関わるお仕事をされている方、そしてその仕事の魅力を紹介していきます。

選手の調査。それはベンチでの態度まで注視すること

 国際化が進むプロ野球。海外からの選手の獲得というだけではなく、選手の派遣やチャレンジ、海外球団との交流や提携、情報の共有などますます広がり、複雑になっている。オリックスも先を見据えて積極的な展開を進めているが、こうした業務を担当するのが国際渉外部だ。まずは野球ファンにとって興味深い、外国人選手の獲得に関わる仕事から聞いてみよう。

「渉外担当の主な仕事内容は、外国人選手を獲得するにあたっての情報収集、駐米スカウトへの指示や連携などのマネジメント。新外国人選手候補においては駐米スカウトからも推薦がありますし、また、選手自身や選手の所属事務所からの売り込みもあります。その中から日本で活躍できそうな選手をリストアップ。その後、編成部長などが選手を決定し、実際に契約の段階となれば代理人との交渉や契約書の作成などを手がけます」

 2016年から現職に就いた羽場さん。実際に関わった選手の中には、ロメロ、マレーロ、アルバースといった選手がいる。実力も十分でチームに貢献してくれた選手だが、ハート(内面)の部分でもファンに支持される選手たちでもあった。

「ガッツを出してやってくれる選手は性格の面でも日本に合うだろうなと思います。プレイ内容や技術の部分はスカウトと一緒に観て評価してもらう。こうした技術面とともにやはりハートの部分の見極めも大切です」

 情報収集はプレイとハートの両面から。どちらがわかりやすいということはないが、それでもなかなかハートという部分はわかりにくそうだ。どのようなところを見て、分析しているのだろうか。

「現地で調査している時には、例として、打者であれば三振してからのしぐさや態度。ベンチに戻るまで気にするようにしています。また、インタビュー動画がインターネット上にアップされていたら話し方はどうか? なども確認します。必ずしもそれがすべてではないと思いますし、それだけで全てわかるわけではないですけど、人物像が見えてきます」

 あらゆる角度から選手の情報を得る。人が良くてもプレイに良さが出なければ意味はないし、プレイが良くてもチームに過度な迷惑をかけるメンタルでも困る。見極めは難しいが、きめ細やかな情報は大きな助けになる。そのためにも常時アンテナを立てる。忙しい1年、普段どんなスケジュールで動いているのだろうか。

「1年の始めに年間のスケジュールを組みます。主な渡米スケジュールとしては4月、6月、8月。4月と6月は主に緊急補強用の視察、8月には次の年に向けてのリストアップ。このようなスケジュールを組んではいますが、難しいのはリストアップしてもオリックスに確実に来てもらえるという保証がないという点。例えばメジャーのセプテンバーコールアップ(9月に行われる登録枠拡大による昇格)で動いてしまうことや、他球団との競合になることも。あとは、ドミニカ、プエルトリコのウィンターリーグの活躍が翌年の参考になることもあるので、こうした動向にも注視しています。また、国際試合があればそこのスケジュールは空けておきます(2019年であれば「プレミア12」の11月2日~17日)」

国内のドラフト同様、長い目で見ての準備が大切。国内11球団だけではない。メジャー30球団、さらには韓国や台湾などの球団との競争でもあり、選手の環境や意識の変化などの動向にも左右される。国際渉外部ならではの日本の球界の時間軸だけではない仕事。でも、球団にとって外国人選手は重要なピースだ。大変な仕事だがやりがいは?

「難しい仕事だとは思いますが、なんといっても契約した選手が活躍すれば勝利に直結します。役割としては大きなものを担っていると思います。ですから関わっている選手が活躍し、チームの勝利に貢献できた時。それが一番のやりがいになっていますね」

ドライとウェットの両面を持って

 では、この仕事に就くまでの経緯を聞いてみよう。羽場さんは高校、大学で野球部に所属。もともと野球は好きだったようだが、スポーツビジネスへの興味はいつから始まったのか。

「大学時代です。2度の語学留学で、アメリカの大学のスポーツ施設のすごさに驚きました。それでスポーツビジネスに興味を持ってこの業界に進もうと思ったんです。そのなかでまずは通訳という仕事があるんだなと」

 そこで通訳を目指し、大学卒業後、プロ野球の通訳として採用され、2016年から現職に就いた。現職でもしばらくは通訳も兼任。同じ英語を扱う仕事だが、どうやら内容も意識も大きく違うようだ。

「どちらもやりがい、良い点があるんです。通訳であれば現場やダグアウトにいてチームと戦っているという実感がありますし、今のポジションであればチームを作り、強くしていくことに関われているというやりがいがあります。時に通訳はリハビリや二軍で調整している外国人選手の悩みを聞いたりして寄り添うことが求められ、逆に国際渉外では、時にドライに接さなければいけないこともある。交渉もそうですし、この年限りで契約満了という選手もいますので……そのあたりは辛いですね」

 それでも選手の悩みに寄り添ってきたからこそ、契約のドライな部分の中にも選手や球団の想いというものも考えることができる。それが羽場さんの強みだろう。今後は国際的な枠組みも増えていく。

「日本人選手の海外派遣やビジネスサイドの海外研修など、海外におけるネットワークの構築と拡大が球団・国際渉外部のミッションとしていますので、その調整、パイプ役になることも仕事の一つです。選手の獲得だけではなく国際的な座組みが今後さらに広がっていく可能性があります。通訳面でも野球用語だけではなくビジネスやリーガルの専門用語も把握していかなければいけません。新しいことが多いので大変なときもありますが、自分にとっても新しい発見があって刺激的ですね。そこにもやりがいを感じています」

 ベースボールビジネスがますます世界とつながっていく。そこで期待されている人材はどんなものだろうか。

「好奇心旺盛、新しい発見を求める人がいいかもしれませんね。国際渉外部という観点で言えば、文化が違うというのがあるので、それを理解して仕事ができる人。そこを面白がれる人。いろんな人と交流ができる人が良いでしょう。一方で細かいことができる人。マネジメントや契約書類などの実務もありますし、予算も関わる職種なので」

 好奇心旺盛かつきちんとミッションをこなす。非常に難しいようにも聞こえるが、それをやりがいとして全うしている羽場さん。それは能力以上にハートが動かしているのかもしれない。そう思ったのは最後に聞いた質問、「通訳から国際渉外部へ。変わらない思いはありますか?」への答え。

「今でも外国人選手のケアはしていきたいです。何かあったら僕のところに来てくれたらうれしい。相談はいくらでも乗りたいと思っています」

◇過去のお仕事名鑑はパーソルの特設サイトからご覧いただけます。
https://www.persol-group.co.jp/special/pacificleague/index.html

文・岩瀬大二