サブローを支えた中学時代の想い出

2016-09-12 00:00 「パ・リーグ インサイト」マリーンズ球団広報 梶原紀章

ずっと胸に刻んだ言葉があった。『克己』。自分(己)に勝つ(克)という意味である。今季限りでの現役引退を発表したサブロー外野手がこの言葉と出会ったのは中学3年生のとき。担任の先生から教えてもらった。

「中学の卒業前に先生が『いい言葉があるぞ』とオレにプレゼントしてくれた言葉。聞いたとき、スッと胸に入ってきた。大事なことだなあと思った。それ以来、心のどこかにいつもこの言葉はあった」

PL学園の苦しい練習に挫折しそうになったときも、プロ入りして、あまりのレベルの高さに愕然としたときもこの言葉と向き合い、乗り越えてきた。25年以上も前に、ある一人の教師が教えてくれた言葉は、彼の人生の支えであり続けた。

もう一つ、プロ入り後の自分を支えた中学時代の想い出がある。サブローはここぞという場面で打席に入る寸前、拳で額を3度ほどたたくルーティンがある。本人いわく「相当強くたたいている」。これは04年ぐらいから取り入れ出した気合を入れ、集中するためのサブロー流の儀式。当時、メンタル面を強化すべく関連本を読み漁ったが、なかなかピンとくるものがなかった。そんなとき、ふと中学時代の想い出が脳裏に蘇った。ウエートリフティングをしていた理科の教師がいた。興味本位で大会を応援に行ってみた。印象に残るシーンがあった。それはバーベルを上げる前。先生はバーベルを上げる直前に額を何度となく拳で強打していた。「先生、なんで額をたたいたん?」。大会が終わって、興味が赴くまま質問をすると「こうすると集中力が高まるんだよ」との返事があった。当時の印象深い光景をメンタル面に悩んでいたサブローはあるとき、ふと思い出した。

「本当に突然、思い出した。そういえばあの先生、額をたたいて集中していたなあって。それから試してみたら、効果があった(笑)。それ以来、やっていた。最近まで、やっていたよ」

だから、試合後のサブローの額は赤く腫れているときが多かった。人生、どのような出来事がその後の自分を形成するかは分からない。サブローに言えることは良い出会いに恵まれていたということだろう。若かりしときから多くの人と出会い、多くのことを吸収し、多くの人に支えられ自分というものを作り上げ、成長を続けていった。

「プロ入りしたときは、スピードもパワーも違うこんな人たちと対等にできるわけないと思った。テレビで見ているときはそこまで凄さは分からなかったけど、打席に立ってみると、打てるわけないと思った。そんな時期から考えると、よくここまで来たなあと思う」

2016年9月1日。サブローは引退会見に臨んだ。これまで出会ったいろいろな人のことを思い浮かべ、涙を流した。人目はばからず泣いた。その涙には感謝の気持ちが詰まっていた。9月25日、オリックス戦(QVC、13:00試合開始)。背番号「3」は惜しまれながらユニフォームを脱ぐ。多くの人に見守られながら、現役生活に別れを告げる。壮絶なまでにグラウンドで己と闘い続けた日々はいったん、終わりを迎える。