「『真剣さ』を捨てた分だけ、僕は強くなった」
~福岡ソフトバンク・武田投手インタビュー

2016-03-02 00:00 「パ・リーグ インサイト」岡田真理

今シーズンの目標を尋ねると、「ケガなく一年投げ切ること」と武田投手は即答した。掲げている数字は特にない。「昨シーズンよりいい成績を残すためにも、まずはシーズンを通して投げること。結果は後からついてくればいい」と考えている。

「ケガしなければ、どうにかなる。だから大事なのはコンディショニング。特に肩周りですね。ボディメンテナンスとかケアとか、体調管理はプロとして当たり前のことなんですけど。今回のキャンプでも、まずはそういった基本的なことからしっかりやっています」

昨年と一昨年では、メンタル面で大きな違いがあったという。昨シーズン、武田投手は「野球を真剣にやることをやめていた」のだ。

「ちょっと語弊があるかもしれないですけど、いい意味で『真剣さ』を捨てたんですよね。分かりやすく言うと、心に余裕を持ってやったという感じかな。自分の描いた理想像から外れたとしても、『だいたいここまでは許容範囲だな』という柔軟な考え方ができるようになったんです」

一昨年までは、「こうじゃないといけない」、「こうすべきである」という固定観念が強く、そこから少しでも脱線すると行き詰って悩み、それが数字としての結果にも表れていた。「昨シーズンに関しては思い悩むことが一度もなかったですね。いい意味で完璧主義者じゃなくなったっていうのかな。そんな感覚です」

心にゆとりが生まれた中で迎えた、昨年の日本シリーズ。第5戦で東京ヤクルトに勝利したその瞬間、これまで味わったことのない達成感が湧き上がってきたという。

「ケガをせずに一年間投げ切ったシーズンは初めてだったので、シーズン通してしっかりやれたな、と。その結果として13勝することができました。日本シリーズという大舞台でも投げることができて、日本一の瞬間はまさに達成感そのものでした」

あの達成感をもう一度味わうために、そして、昨シーズン以上の結果を出すために。それを考えたとき、「まずはケガなく一年間投げること」という目標に自然と行きついた。

「僕はいつも、目標は口に出します。小さい頃からそうなんですよ。普通なら恥ずかしくて言えないような目標でもどんどん口に出していました。『何言ってんだ』ってバカにされたこともありますけどね(笑)。でも、口に出さないと叶わないと思うんです。僕はずっとそうやって目標をクリアしてきました。達成できないことなんかないって今は思ってます」

目標を立てるときは、いつもプラスのイメージを思い描く。チームで軸となっている自分、エースとして信頼されている自分。常にいいイメージを描いた上で、逆算して今やるべきことを考えていく。

「エースの条件は人それぞれだと思いますけど、やはり安心感、安定感でしょう。こいつが投げていたら大丈夫だと、チームだけじゃなくファンのみなさんにも思ってもらえること。そのためにも、まずはケガしない体づくりをして、ローテーションを守って信頼を得られる立場を確立して、チームの柱として認められなくてはなりません」

そのプロセスの中で、課題に直面することもきっと出てくるだろう。しかし、「課題は一つ一つクリアしながらコツコツ進めていきたい。状況に応じて課題に取り組めるだけの柔軟性は、昨シーズンに習得できたと思いますから。理想像から脱線しても、もう怖くありません」と武田投手は語る。