チームの主砲も多数輩出。過去11年の二軍打撃タイトル獲得者と、その現在地

2020-01-17 12:00 「パ・リーグ インサイト」望月遼太

《THE FEATURE PLAYER》L山川 純度100%のスラッガー『パ主催の全弾』まとめ

 新入団会見時に、一軍での主要タイトル獲得を目標に掲げる選手は多い。多くの選手にとって、タイトルはそれだけ大きな存在であるということだろう。ただ、一軍と同様、二軍にも投打の各部門におけるタイトルがある。当然ながら、入団時にこちらを目標に掲げる選手はまずいない。しかし、二軍でのタイトルをきっかけに、一軍の舞台でも飛躍を果たしたという選手がいるのも確かな事実だ。

 今回は、2009年以降のイースタン、ウエスタンの両リーグにおける、打撃主要3部門のタイトル獲得者を紹介。その後の活躍も含めて、二軍のタイトルホルダーたちがどのような球歴を辿ったのか見ていきたい。(所属は当時)

イースタン・リーグ

ファイターズ・中田 200号までの軌跡

2009年
首位打者

ムニス選手(千葉ロッテ):打率.342
本塁打王
中田翔選手(北海道日本ハム):30本
打点王
中田翔選手(北海道日本ハム):95点

2010年
首位打者

森岡良介氏(東京ヤクルト):打率.324
本塁打王
筒香嘉智選手(横浜):26本
打点王
筒香嘉智選手(横浜):88点

2011年
首位打者

雄平選手(東京ヤクルト):打率.330
本塁打王
筒香嘉智選手(横浜):14本
打点王
中川大志選手(楽天):63点

2012年
首位打者

隠善智也氏(巨人):打率.327
本塁打王
鵜久森淳志氏(北海道日本ハム):12本
打点王
中井大介選手(巨人):48点

2013年
首位打者

荒木貴裕選手(東京ヤクルト):打率.337
本塁打王
中川大志選手(楽天):15本
打点王
中川大志選手(楽天):71点

2014年
首位打者

高濱卓也選手(千葉ロッテ):打率.355
本塁打王
山川穂高選手(埼玉西武):21本
打点王
青松敬鎔氏(千葉ロッテ):69点

2015年
首位打者

青松慶侑氏(千葉ロッテ):打率.298
本塁打王
青松慶侑氏(千葉ロッテ):15本
打点王
細谷圭選手(千葉ロッテ):62点

2016年
首位打者

中川大志選手(楽天):打率.287
本塁打王
山川穂高選手(埼玉西武):22本
打点王
岡本和真選手(巨人):74点

2017年
首位打者

髙濱祐仁選手(北海道日本ハム):打率.295
本塁打王
内田靖人選手(楽天)
森山恵佑選手(北海道日本ハム):18本
打点王
内田靖人選手(楽天):66点

2018年
首位打者

松原聖弥選手(巨人):打率 .316
本塁打王
和田恋選手(巨人):18本
打点王
和田恋選手(巨人):87点

2019年
首位打者

山下航汰選手(巨人):打率 .332
本塁打王
安田尚憲選手(千葉ロッテ):19本
打点王
安田尚憲選手(千葉ロッテ):82点

 高卒2年目の2009年に30本塁打・95打点という圧巻の成績を残して二冠王に輝いた中田選手や、高卒1年目の2010年に26本塁打・88打点で同じく二冠王となり、翌年にも2年連続となる本塁打王を獲得した筒香選手は、二軍での圧倒的な成績を一軍での飛躍につなげ、球界を代表する選手へと成長していった。

 また、2014年と2016年の2度、本塁打王に輝いた山川選手や、2011年の首位打者を受賞した雄平選手、2016年に打点王を獲得した岡本選手といった面々も、二軍での活躍を経て主力打者の地位をつかみ取った。森岡氏、荒木選手、細谷選手のように、バイプレーヤーとして存在感を発揮した選手がいるのも特徴だ。近年は内田選手、和田恋選手、安田選手といった、スケールの大きな若手選手がタイトルを手にするケースが増えてきている。

 その一方で、首位打者と本塁打王が各1度、打点王2度とイースタンで出色の活躍を見せた中川選手や、同じく打撃三部門すべてでタイトルを獲得した青松氏は、残念ながら一軍では大きなインパクトを残すことができず。二軍で好成績を残した選手の全てが、ひのき舞台で確たる実績を残せるわけではないのも確かだ。

ウエスタン・リーグ

《THE FEATURE PLAYER》なぜ BsT-岡田のホームランは『美しい』と感じるのか!?

2009年
首位打者

バルディリス選手(阪神):打率.358
本塁打王
岡田貴弘選手(オリックス):21本
打点王
岡田貴弘選手(オリックス):59点

2010年
首位打者

小斉祐輔氏(福岡ソフトバンク):打率.307
本塁打王
江川智晃選手(福岡ソフトバンク):14本
打点王
小斉祐輔氏(福岡ソフトバンク):64点

2011年
首位打者

柳田殖生氏(中日):打率.319
本塁打王
柳田悠岐選手(福岡ソフトバンク):13本
打点王
小斉祐輔氏(福岡ソフトバンク):56点

2012年
首位打者

中村晃選手(福岡ソフトバンク):打率.295
本塁打王
竹原直隆氏(オリックス)
高橋周平選手(中日):7本
打点王
田上秀則氏(福岡ソフトバンク):39点

2013年
首位打者

中西健太氏(福岡ソフトバンク):打率.323
本塁打王
森田一成氏(阪神):16本
打点王
森田一成氏(阪神):69点

2014年
首位打者

牧原大成選手(福岡ソフトバンク):.374
本塁打王
猪本健太郎氏(福岡ソフトバンク):17本
打点王
塚田正義選手(福岡ソフトバンク):70点

2015年
首位打者

上林誠知選手(福岡ソフトバンク):打率.334
本塁打王
カニザレス選手(福岡ソフトバンク):18本
打点王
カニザレス選手(福岡ソフトバンク):56点

2016年
首位打者

塚田正義選手(福岡ソフトバンク):打率.305
本塁打王
カニザレス選手(福岡ソフトバンク)
陽川尚将選手(阪神):14本
打点王
陽川尚将選手(阪神):62点

2017年
首位打者

メヒア選手(広島):打率.331
本塁打王
陽川尚将選手(阪神)
バティスタ選手(広島):21本
打点王
陽川尚将選手(阪神):91点

2018年
首位打者

メヒア選手(広島):打率.337
本塁打王
メヒア選手(広島):20本
打点王
メヒア選手(広島):59点

2019年
首位打者

石川駿選手(中日):打率.317
本塁打王
メヒア選手(広島):21本
打点王
メヒア選手(広島):56点

 2009年に本塁打王と打点王の二冠に輝いた岡田貴弘選手は、登録名を「T-岡田」に変更した翌2010年に大ブレイク。33本塁打・96打点と前年の二軍成績を上回る成績を一軍で記録し、22歳の若さで本塁打王に輝いた。ほか、2009年に首位打者を獲得したバルディリス選手、2012年の首位打者・中村晃選手、同年の本塁打王に輝いた高橋選手、2015年に首位打者を獲得した上林選手らは、後に一軍の主力選手として活躍を見せている。

 2011年には、2人の「柳田」選手がタイトルを獲得。プロ1年目で本塁打王を獲得した柳田悠岐選手は翌年から一軍でも実績を重ね、球界を代表する強打者へと成長。同年の首位打者に輝いた柳田殖生氏はなかなか一軍での出場機会に恵まれなかったが、横浜DeNAに移籍した2014年にユーティリティとして74試合に出場し、4本塁打、打率.273とキャリアハイの数字を記録。引退後は球団職員を経て、現在は同球団のコーチを務めている。

 しかしながら、イースタンと同様に一軍では本来の実力を出しきれなかった選手たちも存在。本塁打王1度・打点王2度の小斉氏、本塁打王2度・打点王1度のカニザレス選手、2013年の二冠王である森田氏といった面々は二軍では優秀な成績を収めたが、一軍のチーム事情や選手層の厚さも影響し、上のステージでは満足のいく数字は残せなかった。

タイトル獲得翌年はブレイクの大チャンス?

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 もう一つ紹介したいのが、二軍でタイトルを獲得した翌年に、一軍でそれまでの殻を破る活躍を見せた選手が少なくない点だ。その定義に当てはまる、主な選手の成績を見ていこう。

バルディリス選手(2009年ウエスタン首位打者)
2010年:118試合 385打数116安打 14本塁打50打点 打率.301 出塁率.363 OPS.825

中村晃選手(2012年ウエスタン首位打者)
2013年:109試合 427打数131安打 5本塁打 44打点 打率.307 出塁率.392 OPS.795

中井大介選手(2012年イースタン打点王)
2013年:48試合 139打数45安打 4本塁打 17打点 打率.324 出塁率.361 OPS.814‬

荒木貴裕選手(2013年首位打者)
2014年:55試合 149打数41安打 2本塁打 12打点 打率.275 出塁率.349 OPS.698

細谷圭選手(2015年イースタン打点王)
2016年:116試合 371打数102安打 3本塁打40打点 打率.275 出塁率.313 OPS.696

山川穂高選手(2017年イースタン本塁打王)
2017年:78試合 242打数72安打 23本塁打61打点 打率.298 出塁率.420 OPS1.081

 バルディリス選手、中村晃選手、山川選手の3人はこの活躍をきっかけにレギュラー定着を果たし、中井選手、荒木選手、細谷選手も打撃面で存在感を発揮。前年にファームで得た経験や自信がプラスに作用するケースは、確かに存在していると言えよう。

 また、2011年に二軍でタイトルを獲得した柳田悠岐選手、筒香選手、雄平選手といった面々も、それぞれ大活躍とまではいかずとも、翌年に一軍でその時点でのキャリアハイとなる成績を残し、その後の飛躍の足掛かりを作っている。各選手の成績は以下の通りだ。

雄平選手(2011年イースタン首位打者)
2012年:47試合 143打数40安打 0本塁打8打点 打率.280 出塁率.313 OPS.621

筒香嘉智選手(2011年イースタン本塁打王)
2012年:108試合 386打数84安打 10本塁打45打点 打率.218 出塁率.309 OPS.661

柳田悠岐選手(2011年ウエスタン本塁打王)
2012年:68試合 195打数48安打 5本塁打18打点 打率.246 出塁率.300 OPS.685

 二軍で得た好感触や自信は、よりレベルの高い舞台で活躍するためにも重要な要素となりうる。二軍でのタイトルを飛躍につなげたケースが少なくないことは、その体験が十分に意味を持っていることの証明でもあるだろう。

11年間で9人。「2軍で20本塁打」は低くないハードルだ

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 また、先ほど紹介した過去10年間のタイトルホルダーの成績を見てもわかる通り、本塁打王の中でも20本塁打以上を記録した選手はさほど多くない。打撃が好調であれば基本的には一軍から声がかかり、本数を伸ばせなくなるという二軍特有の事情もあり、1シーズンを通して二軍で多くの本塁打を量産するのは難しいと言えるだろう。

 2009年以降に二軍で20本以上の本塁打を記録した選手は、以下の通りとなっている。

中田翔選手(北海道日本ハム):30本(イースタン・2009年)
筒香嘉智選手(横浜DeNA):26本(イースタン・2010年)
山川穂高選手(埼玉西武):22本(イースタン・2016年)、21本(イースタン・2014年)
大田泰示選手(巨人):21本(イースタン・2010年)
鵜久森淳志選手(北海道日本ハム):20本(イースタン・2009年)

岡田貴弘選手(オリックス):21本(ウエスタン・2009年)
陽川尚将選手(阪神):21本(ウエスタン・2017年)
バティスタ選手(広島):21本(ウエスタン・2017年)
メヒア選手(広島):21本(ウエスタン・2019年)、20本(ウエスタン・2018年)

 中田選手、筒香選手、山川選手、大田選手、T-岡田選手といった、一軍の舞台でも結果を残した強打者たちが名を連ねている。二軍でこれだけの本塁打数を積み重ねられる選手の多くは、近い将来に一軍でもチームの主力として活躍できる能力の持ち主であるということか。

 二軍で20本を超える本塁打を記録できるだけの打数を与えられる選手には、上層部からまだ基礎を固める段階とみなされているであろう若手や、チーム事情や外国人枠の影響で昇格のチャンスが限られてしまう助っ人野手が多い。

 前者と後者で事情はやや異なるが、シーズンを戦い抜ける体力や技術が身に付いてから満を持して一軍に向かう逸材や、高いポテンシャルを持ちながら一軍での出番に恵まれない助っ人は、限られたチャンスを活かして一軍でも存在感を発揮することができるだけの素地を備えているといえそうだ。それだけに、後に結果を出す選手が多いのも納得か。

二軍のタイトルはその後の活躍を保証するものではないが……

 二軍のタイトルはその後の活躍を保証するものではないが、タイトル獲得が後の活躍のきっかけになったケースも少なくはない。過去10年の受賞者の顔ぶれをあらためて確認すると、後のスター選手が何人も名を連ねているのが興味深いところだ。

 近年のタイトルホルダーとしてこのリストに名を連ねた若手選手たちは、そのタイトルをきっかけに、近い将来に飛躍を果たすことができるか。一人でも多くの選手に、先達たちと同じようなスターダムを登っていってほしいところだ。

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