【埼玉西武ライオンズ2019:前編】防御率リーグワーストもパ・リーグ連覇を成し遂げる

2019-12-24 16:59 「パ・リーグ インサイト」吉田貴

より一層ボリュームアップした「シーズンレビュー2019」!埼玉西武ライオンズの名シーンの数々をご覧ください!(C)パーソル パ・リーグTV

 2018年、2019年と優勝を飾り、パ・リーグ連覇を成し遂げた埼玉西武ライオンズ。昨季は一度も首位の座を譲ることなくシーズンを駆け抜けたが、今季は130試合目にして首位に浮上。福岡ソフトバンクとのし烈な優勝争いの末、9月24日に優勝を決めた。今回は、特集動画「シーズンレビュー2019」で試合を振り返り、本記事では選手にフォーカス。前編は投手を中心に、後編は野手を中心に埼玉西武の2019シーズンを振り返っていく。

他球団の「シーズンレビュー2019」特集動画はこちら

 昨季最多勝を挙げた多和田真三郎投手が投手陣をけん引したいところだったが、開幕から不調。4月12日のオリックス戦では7回2死まで完全投球を披露する完封勝利で復活を予感させたが、以降に登板した9試合では全て5安打以上を浴びるなど、結果を出せず。同じく昨季11勝を挙げた榎田大樹投手も故障で大きく出遅れ、菊池雄星投手がオフにメジャーへ移籍したため、開幕から昨季の2桁勝利投手全員が不在、もしくは不調という緊急事態に陥った。

西口コーチから受け継いだ背番号「13」で先発陣の柱に

 そんな中、自身初の2桁勝利(10勝)を挙げたのが高橋光成投手。今季は西口文也投手コーチが現役時代に背負った背番号「13」を継承。ただ、投球フォームは同コーチをほうふつとさせるダイナミックなものから変更した。セットポジションからまず足を上げ、一度下げた後に再び同じ位置へ上げて投球する「二段モーション」に近いものを導入。これが功を奏し、これまでの試合では最速で150km/h程度だった直球が、コンスタントに150km/hを計測するようになった。決め球はフォークであるが、奪三振率はそこまで高くはなく(6.55)凡打を量産するという面で機能したといえよう。

 今季は3年ぶりにローテーションに定着すると、ほとんどシーズンを通して先発の役割を全う。8月には4試合に先発して3勝を挙げるなど、先発陣が最も苦しい夏場に輝きを放った。ただ、自身最長の123.2回を投げた影響もあり、シーズン最終盤に右肘の違和感で登録抹消。以降クライマックスシリーズまで登板無しのままシーズンを終えた。来季、より大きな信頼を勝ち取るためには、4.51の防御率を良化させることが不可欠。そのために、シーズンワースト3位の被安打144という数字をどこまで改善できるかが課題だろう。

「令和初完封」で示した実力と「9敗」に見る来季への最重要課題

 3年目の今井達也投手も、苦しみながらもローテーションを守った。常時150km/h前後の直球と球界屈指の落差を誇る高速チェンジアップを組み合わせる投球スタイルを武器とする将来のエース候補だ。実際のところ、5月5日の楽天戦では「令和初」の完封勝利を挙げるなど、新世代としての可能性を感じさせた。ただ、今季通算では7勝9敗と負け越し、開幕前に掲げた「2桁勝利」という目標は達成できなかった。

 来季への課題は明白。制球力だ。与四球72は福岡ソフトバンク・千賀滉大投手に次いでリーグワースト2位。千賀投手の活躍は言うまでもないが、今井投手は奪三振率6.98、被打率.251と支配力に欠けた。シーズン中はセットポジションから左足を上げ、ホームベースから一度目線を外すなど、多種多様なフォームを試したが、結果にはなかなか結びつかなかった。オフシーズン、そしてキャンプと鍛錬の期間を迎え、シーズン中の課題にじっくり向き合う時間も生まれるだろう。

再昇格から「救世主」へ。球団史に残る助っ人右腕に「あざーっす!」

 フレッシュな面々が揃う先発陣には期待が持てるが、経験値が不足しているという点で不安が残るのも事実。そんな中、シーズン中盤から救世主的な活躍を見せたのが助っ人・ニール投手だ。6月20日に2勝目を挙げると、そこから破竹の11連勝。球団外国人投手のシーズン連勝記録を更新した。特に首位・福岡ソフトバンクを追走し負けられない戦いが続いた9月には4試合で4勝を挙げ、リーグ2連覇に大きく貢献した。

 ただ、ニール投手の開幕は順風満帆なものではなかった。4月2日の千葉ロッテ戦で来日初先発初勝利を挙げたものの、4月は以降の登板で痛打される場面が目立ち、悔しい登録抹消となった。日本球界に適応するため、5月と6月中盤まででファーム6試合に先発。多くの場数を踏んだことで、来日前から定評のあった抜群の制球力を取り戻した。8月27日の北海道日本ハム戦で与四球を許して以降、34.2回、125打者連続で無四球に抑える精密ぶりで、チームの逆転優勝に大きく貢献した。

異次元の「81試合登板」。フル回転を超えて腕を振った2019年

 救援陣ではまず平井克典投手を挙げなくてはならない。「70試合登板」を目標に掲げた今季は、リード時、ビハインド時問わずにマウンドに上がり、フル回転。その奮投ぶりは鬼気迫るものがあった。終わってみれば、パ・リーグ史上初となる80試合登板の大台に乗り、リーグ最多登板記録を大きく更新する81登板を果たした。素晴らしい救援投手が名を連ねるパ・リーグではあるが、ただ一人「異次元」に足を踏み入れた。

 今季は開幕から代名詞の切れ味抜群のスライダーに加え、フォークを織り交ぜたことで投球の幅が拡大。1イニング当たりに出した走者の数は1.32人と完璧に抑えるタイプではなく、走者を得点圏に背負う場面もあったが、驚異的な胆力で切り抜けた。全81登板のうち、疲労も蓄積するであろう8月に3連投を1回、4連投を1回の奮投ぶりを見せたが、その影響もあり、シーズン終盤には失点する場面も目立った。平井投手が本来の力を維持するためには、ともに救援陣の両輪となってくれるような中継ぎ投手が必要だろう。

高卒2年目で158km/h。救援陣の超新星

 その候補としてまず考えられるのが、プロ2年目の平良海馬投手だ。7月8日に一軍登録されると、シーズン終了まで一軍に帯同し、26試合で防御率3.38の成績を残し、終盤には平井投手、増田達至投手とともに勝利の方程式を確立させた。150km/hを軽く超える剛速球と、球速差の少ないカットボールを武器にする救援陣の希望の星だ。

 投手陣の信頼を勝ち取るターニングポイントになったのは8月24日の楽天戦だろう。7回表、先発・高橋光成投手がピンチを背負い降板し、2番手の小川龍也投手も楽天打線を食い止められず2死満塁に。3番手でマウンドに上がった平良投手を迎えるのは元主将・浅村栄斗選手。絶体絶命に見えたが、平良投手は初球でいきなり155km/hを計測すると、以降も投じる直球全てが155km/hを超えるなど覚醒。145km/hのカットボールを挟み、最後は内角155km/hの直球で空振り三振にねじ伏せた。その3日後、8月27日には球団記録タイの158km/hを計測することになる。

走者すら許さない。抜群の安定感で守護神に返り咲き

 投手陣の最後に挙げるのは守護神の増田達至投手。昨季は自己ワーストの防御率5.17に終わり、今季は復活を誓ったシーズンだった。終わってみればチーム2位の65試合に登板し、自己最多の30セーブを挙げ、防御率も1.81と抜群の安定感を見せた。

 本来の位置に返り咲いたのはシーズン序盤の早い段階だった。昨季の守護神・ヒース投手が開幕から調整不足を露呈し、登録抹消。同じく助っ人のマーティン投手も制球力に大きな不安を持っており、9回のマウンドに送るには苦しいものがあったのだ。そこで白羽の矢が立ったのが、クローザー経験のある増田投手。昨季は、持ち味の直球が全体的に高めに浮き、痛打される場面が目立っていたが、今季は制球力が大幅に改善し、1イニングあたりに出した走者はわずか0.88人。支配的な投球で守護神に返り咲き、優勝が決定した9月24日の試合では文句なしの胴上げ投手となった。

「リーグワースト防御率」脱却に不可欠な3投手

 来季、埼玉西武の投手陣においてキーマンとなるであろう投手を紹介する。若手投手が多い先発陣の中で、十亀剣投手の存在は非常に大きくなってくるだろう。今季はチーム3位タイの17試合に先発し、5勝6敗、防御率4.50ながらも、優勝がかかる9月は3試合に先発して防御率1.40。特に今季最後の登板となった9月19日の北海道日本ハム戦では、7回4安打無失点の好投を見せた。FA権を取得し去就が注目されたオフには埼玉西武に残留することを公表した。先発陣の大黒柱として、2015年以来の2桁勝利を目指してほしい。

 若手では松本航投手に期待したい。ルーキーイヤーの今季は開幕前に肺炎を発症。結果的に7勝4敗の好成績だっただけに、出遅れが悔やまれるシーズンとなった。来季は先発陣の柱として開幕からローテーション入りすることが絶対条件だろう。今井投手、高橋光投手と共に、フレッシュな先発トリオを形成したい。

 救援陣では野田昇吾投手がカギを握るだろう。小川龍也投手が55試合で防御率2.58の好成績を残したこともあり、今季はわずか23試合の登板にとどまった。2018年は平井投手に次ぐ58試合に登板しており、実績は十分だ。平井投手は今季81登板。野田投手も負けていられない。

 個人に注目すれば、活躍した瞬間はそれぞれの選手にあるだろう。しかしながら、チーム成績を見ると、防御率4.35、635失点はともにリーグワーストの成績。ここまで挙げてきた投手の活躍だけでは、この成績を大幅に改善することは難しい。リーグ3連覇のためには、上記に挙げた投手はもちろん、若手投手陣、そしてルーキーが一体となることが不可欠だ。

【埼玉西武ライオンズ2019後編】はこちら

文・吉田貴