【埼玉西武ライオンズ2019:後編】連覇を飾った「獅子おどし打線」を振り返る

2019-12-24 17:00 「パ・リーグ インサイト」吉田貴

より一層ボリュームアップした「シーズンレビュー2019」!埼玉西武ライオンズの名シーンの数々をご覧ください!(C)パーソル パ・リーグTV

 2018年、2019年と優勝を飾り、パ・リーグ連覇を成し遂げた埼玉西武ライオンズ。昨季は一度も首位の座を譲ることなくシーズンを駆け抜けたが、今季は130試合目にして首位に浮上。福岡ソフトバンクとのし烈な優勝争いの末、9月24日に優勝を決めた。今回は、特集動画「シーズンレビュー2019」で試合を振り返り、本記事では選手にフォーカス。前編は投手を中心に、後編は野手を中心に埼玉西武の2019シーズンを振り返っていく。

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 当然のことながら、打線は個々の力では機能しない。それぞれの打順の選手がその役割を果たすことで、リーグ屈指の「獅子おどし打線」を形成したといえよう。そこで今回は、まずはテーマごとに選手を取り上げたい。

「獅子おどし打線」に穴など作らせなかった男

 毎年、主力野手の移籍が目立つ埼玉西武。2018年オフもその例に漏れず、扇の要である炭谷銀仁朗選手が巨人へ、そしてキャプテンの浅村栄斗選手が楽天に移籍した。こうしたことから、開幕前はチームの打力低下が懸念されていたことは否定できない。しかし、シーズンが終わってみれば、チーム打率.265(リーグ1位)、174本塁打(同2位)、718打点(同1位)、134盗塁(同1位)と昨季に比肩する「獅子おどし打線」を実現させた。

 上記のことから、昨季以上の活躍を見せ、チームの穴を埋めた選手がいるはず。その筆頭が森友哉選手だ。炭谷選手の移籍によって「1人立ち」を求められた今季、打率.329の好成績を残し、パ・リーグの捕手では1965年の野村克也氏以来、そして自身初の打撃タイトルとなる首位打者を獲得。ただ、より注目したいのはリーグトップの得点圏打率.411という数字が示すその勝負強さだ。規定打席到達打者で、得点圏打率が4割の大台に乗っているのは両リーグ合わせても森選手のみだ。昨季の打点王に輝いた浅村選手の得点圏打率は.369。単純に比較できない数字ではあるものの、その穴を十分に埋めたことは間違いないだろう。

 森選手の魅力といえば、全身を使った豪快なフルスイング。実際のところ、今季は23本塁打、長打率.547と長距離砲としての役割も十分に果たしている。ただ、今季はその卓越したバットコントロールが光ったシーズンであるとも言えるだろう。時には持ち味のフルスイングを封印し、足を上げる高さ、タイミングなどを細かく調節。ミートに徹することで昨季から32本増の162安打を放った。

 来季への課題は守備力のさらなる向上だろう。クライマックスシリーズでは痛恨の捕逸で悔しさも残った。来季の春季キャンプでは、今季のキャンプ以上に守備練習に打ち込む姿が見られるのではないか。

豪快打線に潜む2人のスピードスター

 昨季に引き続き、打順変更こそあったものの、今季も打線のメンバーはほぼ固定。球団タイ記録となる8人が規定打席に到達、そして6人が2桁本塁打を記録した。ただ、先述した通り、長距離砲だけでは打線は回らない。ここでは、「2桁本塁打に到達しなかった」源田壮亮選手と金子侑司選手の2人に焦点を当てていく。

 まずは源田選手だ。今季は死球でスタメンを外れ、自身の持つ新人フルイニング出場記録が299試合でストップしたが、チームへの貢献度は決して劣ることはなかった。その卓越した遊撃の守備は、二遊間を組む相方が浅村選手から外崎修汰選手へ変わっても全く問題なし。助っ人右腕・ニール投手がヒーローインタビューで「ゲンダ、トノサキ、タマラン」と評していることからも、投手陣からも全幅の信頼を得ていたことがわかる。

 話題をメインテーマである「打線での役割」に移す。源田選手は昨季に引き続き、シーズンのほとんどの試合で2番打者として出場した。近年は北海道日本ハム・大田泰示選手のような「超攻撃型」の2番打者が台頭するなかで、25犠打(リーグ1位タイ)、30盗塁(同2位)を記録し「つなぎの2番」に徹していたといえよう。チーム全体としてはリーグ5位タイの78犠打であることを考えれば、源田選手の犠打が1点を争う試合で大きな価値を持っていたことが見えてくる。

 一方の金子侑選手も同様の活躍を見せた。守備面では、7年前に内野手として入団した過去を忘れてしまうような美技を連発。広大な外野のフィールドを、帽子を落としながら疾走する姿はもはや見慣れた光景だ。そうした一方で、8月1日の福岡ソフトバンク戦では、死球を受けて一度は担架で運ばれながらも試合に復帰し、直後に逆転のホームを踏む激走。結局、一度は登録抹消となったものの、最短の抹消期間である10日で戦線復帰した。ファン心理としては心配になる部分もあるが、華麗なプレーに加えて内に秘めたガッツも見せた。

 打線では持ち前の俊足ぶりを遺憾なく発揮。41盗塁を記録し、3年ぶり2度目の盗塁王を獲得した。一方で、その打撃成績と盗塁数には金子侑選手の打線内での役割も見えてくる。開幕から5月までの約2カ月間の打率は.208だった一方で、21盗塁と驚異的なペースで盗塁を決めた。それに対し、6月から9月にかけては20盗塁とペースこそ落ちたものの、その期間の打率は.282と向上。特に8月は月間打率.311を記録した。単に盗塁を決めるだけでなく、他球団の盗塁への警戒が上がったシーズン後半では、9番打者としてバットでも結果を残したといえよう。

打線に2人の4番がいる脅威

 73本塁打、243打点。これは山川穂高選手と中村剛也選手の2人でたたき出した成績だ。打順変更をした辻監督の判断は、まるで「2人の4番」が座っているように感じさせる驚異的な打線を生むことになった。

 山川選手の開幕は間違いなく順調だった。3月29日の開幕戦では8回に同点に追いつく満塁弾を放ち、勢いそのままに3月、4月度の月間MVPを受賞。昨年に引き続き、4番に相応しい活躍だったといえるだろう。状況が一変したのは7月。4本塁打こそ放ったものの、月間打率.173と大きく低迷することになった。そして迎えた8月11日の千葉ロッテ戦。2017年の終盤から守り続けた4番の座を、中村選手に「返還」することになった。

 中村選手は今季でプロ18年目の36歳で、すでにベテランの域に到達している。しかし、その選手人生の大半を過ごしてきた「4番」というポジションに返り咲いた中村選手は、もはや誰にも止められなかった。4番に復帰した8月は月間打率.384、5本塁打、25打点と絶好調だった。満塁本塁打の日本記録保持者であることから、もともと満塁に強いことは知られていたが、今季は満塁打率.531の「満塁神」ぶりを発揮した。シーズン終盤の首位追走において、最大の起爆剤となったことは間違いない。

 7番となった山川選手も重圧から解き放たれたことで打棒が復活。本塁打にくくらずにチームバッティングを見せる場面も増え、8月は中村選手に並ぶ25打点を記録している。一方で持ち味の長打力も復活し、8月12日以降で月間8本塁打を放った。山川選手の復活により、どこからでも得点、本塁打が期待できる「ダブル4番」ともいえる強力打線が実現した。

やはり触れておきたい個性派ぞろいの野手陣

 まずはキャプテン・秋山翔吾選手だ。開幕当初は3番に座ったものの不調に苦しんだ。ただ、5月に月間打率.402を記録して完全復活。定位置の1番に復帰すると、本来の安定感ある打撃を取り戻し、終わってみれば179安打で3年連続の最多安打を獲得。オフに海外FA権の行使を表明、次なるステージでの活躍も期待される。

 外崎修汰選手も146安打、26本塁打、90打点を記録し、3番や5番、6番、9番と、どこで起用されてもコンスタントに結果を残した。特に打点は昨季の67打点を大きく上回るなど、森選手と同様に、浅村選手が抜けた穴を埋める活躍を見せたといえるだろう。木村文紀選手は自身初の規定打席到達とはならなかったものの、自己最多の130試合に出場し、5年ぶりとなる2桁本塁打を記録。守備でも元投手の強肩ぶりを披露した。

 指名打者、もしくは代打を中心に活躍した栗山巧選手、メヒア選手の存在も大きい。栗山選手は8月31日の試合で通算1807本目の安打を放ち、球団の最多安打記録を更新。今季18年目ながらも、同期の中村選手と共に規定打席に到達した。一方のメヒア選手は、9月20日の楽天戦で守護神の松井裕樹投手からサヨナラ2ランを放つなど、シーズン終盤に優勝を大きくたぐり寄せる活躍を見せた。

目指すはパ・リーグ3連覇。活躍が期待される若手たち

 まず第一に、山川選手や森選手が今季と同様の成績を残すことができれば、野手陣に大きな不安はないと言えるかもしれない。しかしながら、2018年から2年間にわたりスタメンをほぼ固定してきた現状を考えれば、主力選手には間違いなく疲労が蓄積されている。ここでは不測の事態が発生した場合に、その穴を埋める活躍が期待される選手を挙げたい。

 内野手では山野辺翔選手に期待したい。即戦力候補として入団した今季だったが、一軍での出場はわずか9試合と悔しい結果に終わった。ただ、ファームでは87試合に出場し、打率.271、12本塁打と能力の高さを示し、29盗塁でファーム盗塁王にも輝いた。社会人出身であるため、来季は26歳。プロ2年目といえど、結果が求められてくるシーズンになる。

 来季プロ2年目を迎える佐藤龍世選手にも注目だ。今季はルーキーながらも試合後半の代打や守備固めで52試合に出場。三塁を守る中村選手の休養日にはスタメンにも名を連ねた。その中村選手は来季で19年目、37歳のシーズンとなる。もちろん今季と同様の活躍を期待したいが、山川選手、外崎選手、多和田投手に次ぐ「4人目の富士大出身」である佐藤選手の台頭にも注目だ。

 最後に、外野陣では愛斗選手の名前を挙げたい。2017年にファームで打率.358の好成績を残し、飛躍を期待されたが、2年連続で足踏みが続いている。今季は待望の一軍初安打を放ったものの、42試合で打率は.151にとどまり、またしても一軍の壁に跳ね返された。一方で、ファームでは51試合で打率.302と依然としてレベルの違いを示している。来季でプロ5年目を迎え、大卒1年目のルーキーと同い年になる愛斗選手。ファームでの研さんを終え、いよいよ戦力としての活躍が求められるだろう。

 2年連続で「打ち勝つ野球」を完成させた埼玉西武。ただ、オフには主将・秋山翔吾選手がメジャー挑戦を表明。その動向についてはまだ未定であるが、チームに新戦力の台頭が期待されることは間違いない。来季は、「新生・獅子おどし打線」がどのようなつながりを見せるだろうか。

文・吉田貴

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