「無敗の男が負けない理由」福岡ソフトバンクホークス代表選手・平山大輝インタビュー

2020-01-11 13:28 「パ・リーグ インサイト」編集部
福岡ソフトバンクホークス代表選手・平山大輝(ひらD)(C)PLM

福岡ソフトバンクホークス代表選手・平山大輝(ひらD)(C)PLM

 福岡ソフトバンクホークス代表選手・平山大輝。2019年、オンライン予選、オフライン予選と合わせて35試合に挑んだ彼は、一度も負けることなくプロへの切符を勝ち取った。プロの舞台でも開幕から4連勝。「無敗の男」が負けない理由とは何なのか。

平山選手がプロになるまで。原体験、裏方だった1年目、憧れの選手、予選無敗の秘訣。

 平山選手がパワプロを始めたのは小学生の頃のこと。仲の良かった少年野球チームの友達と家で集まって対戦をしたのがきっかけだという。多くのパワプロプレイヤーに共通する原体験だろう。家でわいわいと楽しむ、家庭用ゲームならではの光景だ。

 その後中学、高校と間が空き、大学に入学した平山選手は再びパワプロに戻ってくる。プロリーグ設立前から大会はあったが、参加はしなかった。そして2018年7月、「eBASEBALL パワプロ・プロリーグ」の開催が発表され、挑戦を決めた。

「やるからには1番になりたいという気持ちがあって。めちゃくちゃ練習しました」

 しかし、1年目はドラフト本指名にかかることはなかった。平山選手は埼玉西武の予備登録選手として、華やかな舞台の裏にいた。その時に出会ったのが、当時チームのキャプテンだった大川泰広選手(現東京ヤクルト)だった。

「プロになるきっかけという意味では自分の中で大きい存在でしたね。自分はやっぱり裏方の役割だったので、そういった裏方のところにも気を遣って声をかけてくれたりして。自分もこういう選手になりたい、絶対プロになってやろうと思いました」

 2019年7月、プロリーグ2年目の予選が始まった。オンライン、オフラインの予選を平山選手は無敗で進み、9月16日、eドラフト会議で福岡ソフトバンクから1位指名を受け、念願のプロになった。負けなかった予選を平山選手はこう振り返る。

「日本一練習してきたという自信はありました。試合中、ビハインドで負けていても、これだけ練習してきたから負けるはずがないという自信がありました。気持ちの面で強気に行けたので、それが結果につながったんだと思います」

 その自信を裏付ける練習量には目を張るものがある。特に、夜から練習を始め、気づけば朝方になっているというのだから驚きだ。打撃では甘い球を捉える練習を中心に、徐々に難易度を上げていく。投球ではナイスピッチを出す練習をし、とにかく繰り返す。それが平山選手の練習法だという。

順調な滑り出しから徐々に増すプレッシャー。そして、初の黒星。

 こうして立つことができたプロの舞台。開幕節の11月3日、東北楽天の岡田郁斗選手との対戦では、3回に一挙4点のビックイニングを作り、6対1で勝利を収めた。「思い切ってやろうという気持ちでした」という平山選手は淡々と語る。

「自分の中で開幕戦が1番緊張しないでやれましたね。内容も1番良かったので、特別な感情とかはなかったですね。良い打撃もできて理想的な展開で勝てました」

 思い通りの幕開けで始まった平山選手のシーズン。千葉ロッテの下山祐躍選手、阪神の辻 恭平選手、北海道日本ハムの相澤一久也選手との試合でも勝利を収め、4連勝と負け知らずのまま進んでいった。この3試合はいずれも1点差で試合を制し、うち2試合では完封勝利。手ごたえは十分だった。

「自分の中では負ける気も全然しなくて。点差以上に気持ちに余裕があったかなと思います。試合中は打たれるビジョンが全くなかったです」

 いまだ無敗。始めは勢いも余裕もあった平山選手だったが、次第に高まっていったのはプレッシャーだった。

「気にしないっていう方が難しかったですね。とりあえず勝とうという方に気持ちが行き過ぎてしまって、本来のプレイスタイルがうまく発揮できなかったです」

 この日は12月14日。福岡ソフトバンクはオリックスとのカード3連戦だった。初戦を任された平山選手の対戦相手は今季無敗のオリックスのキャプテン・指宿聖也選手。負けられない試合、結果は0対3。予選から通して初めての敗戦となり、悔しげに語る。

「自分が勝てばチームに勢いが付くと思って、本当に大事な試合だったんですけど、不甲斐ない試合をしてしまいました。あの場所(試合会場)でやるのは独特で、そこで負けちゃダメなんですけどね。練習が足りないかなって思いますね」

 投球を得意としているが、周りからはよく打撃型と言われるという。だが、実際の結果は僅差が多い。本来の打撃ができればもっとできる。悔しいけど思い通りにいかない。「練習が足りない」――その言葉には重みがあった。

隣には頼れる仲間。チームメイトと優勝、日本一を目指して。

 初の敗戦に悔しさをにじませる平山選手だったが、ただうつむくだけではなかった。

「この負けが良い負けになると思うんですよね。今まで負けなしで来たんですけど、今日こうやって初めて負けたことで、より一層気持ちが入ると思うので。ここはプラスに考えて次につなげていこうと考えています」

 そんな彼を助けるのはチームメイトだ。この日、初戦こそ負けたが福岡ソフトバンクは2戦目を三好航太郎選手が取り返すと、キャプテンの加賀谷颯太選手が3戦目を引き分けに持ち込みカードを五分で終えた。チームについて問うと「良い雰囲気です」と一言。続けて最大のポイントを平山選手が語る。

「誰かが負けたらそれをカバーする人がいるんです。今日、自分が負けてしまって、本当にプレッシャーがかかっていたと思うんですけど、三好さんが勝ってくれた。お互いカバーし合える良い仲だと思いました」

 負けても、チームメイトが勝ってくれる。試合中のプレイヤーは孤独だが、プロリーグはチーム戦だ。誰かが負ければ誰かが勝てばいい。福岡ソフトバンクは現在3位。まだ優勝の可能性もある。最後に、最終の第5節に向けて、決意を語ってもらった。

「良い意味で間が空くので、自分を磨く鍛錬の時間だと思っているので有効に使ってチームが勝てるように頑張ります。優勝とポストシーズンに向けて自分を高めて行こうと思います」

「1番になりたい」――その気持ちを胸に、負けを知った「無敗の男」は、さらに強くなる。

取材・文 丹羽海凪