所属球団の成績には明白な傾向が。「シーズン最多得点」の選手が持つ価値とは?

2020-01-20 17:00 「パ・リーグ インサイト」望月遼太
中村剛也選手【撮影:丹羽海凪】(C)PLM

中村剛也選手【撮影:丹羽海凪】(C)PLM

得点数とチーム総得点数、そしてチーム成績の相関性は?

 野球における指標の一つに、本塁に生還した回数を示す「得点」というものがある。打率、本塁打数、打点といった数字は、シーズン中からタイトルの行方が話題になるほどに注目度が高い。だが、得点数はタイトルとしての連盟表彰もなく、どの選手がリーグ最多の得点数を記録していたかを知る機会すら少ないのが現状だ。

「得点」は後ろを打つバッターの打撃能力に大きく左右される指標でもあり、選手の能力を計る上ではさほど役立たないという見方もある。今回は、そういった意見を理解したうえで、あえて得点数から見えてくるものについて探っていきたい。

 まず、過去10年間のパ・リーグにおいて。リーグトップの得点数を記録した選手たちと、その所属チームの成績を以下に紹介する。(所属は当時)

2010年
西岡剛選手(千葉ロッテ):121得点
チーム得点:708点(リーグ1位)
チーム順位:3位(75勝67敗2分 勝率.528)
2011年
中村剛也選手(埼玉西武):97得点
チーム得点:571点(リーグ2位)
チーム順位:3位(68勝67敗9分 勝率.504)
2012年
中田翔選手(北海道日本ハム):79得点
チーム得点:510点(リーグ2位)
チーム順位:1位(74勝59敗11分 勝率.556)
2013年
陽岱鋼選手(北海道日本ハム):93得点
チーム得点:534点(リーグ5位)
チーム順位:6位(64勝78敗2分 勝率.451)
2014年
柳田悠岐選手(福岡ソフトバンク):91得点
チーム得点:607点(リーグ1位)
チーム順位:1位(78勝60敗6分 勝率.565)
2015年
柳田悠岐選手(福岡ソフトバンク):110得点
チーム得点:651点(リーグ1位)
チーム順位:1位(90勝49敗4分 勝率.647)
2016年
秋山翔吾選手(埼玉西武):98得点
チーム得点:619点(リーグ2位タイ)
チーム順位:4位(64勝76敗3分 勝率.457)
2017年
秋山翔吾選手(埼玉西武):106得点
チーム得点:690点(リーグ1位)
チーム順位:2位(79勝61敗3分 勝率.564)
2018年
山川穂高選手(埼玉西武):115得点
チーム得点:792点(リーグ1位)
チーム順位:1位(88勝53敗2分 勝率.624)
2019年
秋山翔吾選手(埼玉西武):112得点
チーム得点:756点(リーグ1位)
チーム順位:1位(80勝62敗1分 勝率.563)

 以上のように、2013年を除いた全ての年において、年間最多得点を記録した選手を輩出した球団は、チーム全体の総得点数でもリーグ1位もしくは2位となっていた。先述の通り、得点という指標自体が後続の打者の結果に少なからず依存するものであるため、チーム全体の得点力との相関性がある程度見られるのも当然といったところだろう。

 また、西岡選手、陽選手、柳田選手、秋山選手といった、1番や3番といったチームの上位打線を担った好打者たちがランキングの大半を占めているのも特徴的だ。その理由としては、より多くの打席数が得られやすいこと、後続に優秀な打者が並ぶケースが多いこと、俊足を生かして微妙なシチュエーションでもホームを突ける可能性が高くなることなどが挙げられるだろうか。

 そんな中で、典型的な長距離砲タイプの選手たちが最多得点に輝いている年が3度あるのも興味深いところ。中村選手は2011年のリーグ全体の本塁打数のうち.106を1人で占めるという驚異的な成績を残した。当然ながら、本塁打を打てば後続の打者に依存せずに得点数を上積みできるため、2012年の中田選手も含め、ボールが飛びにくい統一球の導入によって、一時的にリーグ全体の得点数および本塁打数が激減していた影響はあるかもしれない。

 一方、2018年の山川選手はパ・リーグMVPに輝くほどの圧倒的な打棒を見せており、115得点のうち47点を自らの本塁打で記録している。後ろを打つバッターたちの打撃力も手伝い、今回取り上げたシーズンの中では2010年の西岡選手に次いで2番目に多い得点を記録している。埼玉西武の得点力の高さは秋山選手が直近の4年間で3回最多得点に輝いていることからも明らかで、その強力打線は近年のパ・リーグを席巻し続けていると言えるか。

おおむねチーム成績、打撃成績ともに優秀だったが、例外となった2シーズンは……

 また、2013年の陽選手(北海道日本ハム)と2016年の秋山選手(埼玉西武)を除く8シーズンは、最多得点を記録した選手を擁するチームが年間順位でもAクラスに。選手が得点を記録するということは所属チームに得点がもたらされるということでもあり、主力選手が多くホームを踏んでいるチームが上位に入りやすいのも当然ではないだろうか。

 そんな中で、成績が伸び悩んだ2つのケースについても詳しく見ていこう。陽選手がリーグ最多得点となった2013年の北海道日本ハムは、今回取り上げた選手の所属チームの中で唯一、総得点がリーグ3位以下(5位)に。球団史上初の盗塁王にも輝いた陽選手に加え、打率.305、28本塁打を記録した中田選手や、本塁打王を獲得したアブレイユ選手ら個々の奮闘がありながら、打線の得点力にはつながらず。防御率(3.74)もリーグ5位と投打に精彩を欠き、前年のリーグ優勝から一転してリーグ最下位に沈む苦難のシーズンとなった。

 秋山選手が最多得点を記録した2016年の埼玉西武は、得点数が北海道日本ハムと並んでリーグ2位タイ、打率がリーグ2位、安打と本塁打数がリーグトップと、打線はよく機能していた。しかし、源田壮亮選手の入団前年ということもあり、内野の要である遊撃手のポジションは固定されず、守備面における大きな課題となっていた。それに加え、チーム防御率もリーグ4位の3.85と、ディフェンス面でAクラスの3チームに後れを取ったことが、上位進出を果たせなかった要因の一つとなったか。

3年連続で1位と2位が1得点差と、僅差の争いを繰り広げていた時期も存在

 また、2012年から2014年の3年間は、得点数1位の選手と2位の選手の差がわずか1点。2015年もその差は2点と、相当な僅差で最多得点のタイトルの行方が決まっていた。その際に惜しくも2位となっていた、4名の選手は以下の通りだ。

2012年
聖澤諒氏(楽天):78得点
チーム得点:491点(リーグ4位)
チーム順位:4位(67勝67敗10分 勝率.500)
2013年
長谷川勇也選手(福岡ソフトバンク):92得点
チーム得点:660点(リーグ1位)
チーム順位:4位(73勝69敗2分 勝率.514)
2014年
西川遥輝選手(北海道日本ハム):90得点
チーム得点:593点(リーグ2位)
チーム順位:3位(73勝68敗3分 勝率.518)
2015年
秋山翔吾選手(埼玉西武):108得点
チーム得点:631点(リーグ2位)
チーム順位:4位(69勝69敗5分 勝率.500)

 こちらも所属チームの得点数はおおむね優秀だが、チーム順位は3位が一度、4位が3度と、先ほど紹介したデータに比べればやや伸び悩んでいた。しかし、4チームとも勝率.500以上という数字を記録しており、極端に成績が悪かったというほどでもない。全体的な傾向としては、得点数がリーグトップだった選手たちと同様に、所属チームは打線と勝敗数の両方で一定以上の数字を残していると言えそうだ。

過去の偉人たちが残したシーズン記録においても、その傾向は同じ?

 ここからは、長いNPBの歴史において、とりわけ優れた得点数を記録した選手たちについても同様の考察を行っていきたい。1シーズンにおける得点数の、歴代トップ5の記録は以下の通りだ。(所属は記録達成当時)

1位:小鶴誠氏(1950年:松竹):143得点
チーム得点:908点(リーグ1位)
チーム順位:1位(8チーム中)(98勝35敗4分 勝率.737)

2位:タフィー・ローズ氏(2001年:近鉄):137得点
チーム得点:770点(リーグ1位)
チーム順位:1位(78勝60敗2分 勝率.565)

3位タイ:藤村富美男氏(1950年:阪神):130得点
チーム得点:766点(リーグ2位)
チーム順位:4位(8チーム中)(70勝67敗3分 勝率.511)

3位タイ:山田哲人選手(2018年:東京ヤクルト):130得点
チーム得点:658点(リーグ2位)
チーム順位:2位(75勝66敗2分 勝率.532)

5位:別当薫氏(1949年:阪神):129得点
チーム得点:735点(リーグ1位)
チーム順位:6位(8チーム中)(65勝69敗3分 勝率.485)

 以上のように、歴代の好記録の場合でも、所属チームの総得点はリーグ1位か2位を占めている。チーム順位も1位が2度、2位が1度、Aクラス入りが4度と優秀で、近年の成績と同様の傾向が出ている。やはり、どの時代においても、ずば抜けた得点数を記録した選手を擁するチームは、チーム成績、打線ともに良い状態にあるということが言えそうだ。

 NPB歴代最高の記録を樹立した小鶴氏は、「水爆打線」と呼ばれた強力打線の主軸として、137試合で143得点と、試合数を上回る驚異的な得点ペースを記録。同年には歴代最多の161打点という大記録も達成しており、打率.355、51本塁打とその他の数字も高水準。その打棒は、まさに球史に残るものだった。歴代2位のローズ氏も当時のシーズン最多タイとなる55本塁打を記録し、打率.327、131打点と猛打を発揮。圧倒的な打撃力でリーグを席巻した「いてまえ打線」をけん引する大活躍を見せた。

 藤村氏もNPB史上初のサイクルヒットを達成するなど、戦前から戦後にかけての阪神を支え、「初代ミスター・タイガース」と呼ばれた名選手。別当氏は1950年に岩本義行氏とともにNPB史上初のトリプルスリーを達成しており、偉大な名選手たちが名を連ねたランキングと言える。そんな中で、現役選手で唯一の歴代トップ5入りを果たしている山田選手の存在感は際立つところ。今後さらなる好結果を残し、伝説の領域に足を踏み入れる可能性もあるはずだ。

「得点」という指標は、選手自身の能力を計るにあたっては少なからず問題点があるものかもしれない。しかし、その選手のチームに対する貢献度の高さや、その選手が在籍するチームの打線や好不調を計るうえでは、少なからず参考にできる数字と言えるはずだ。来たるシーズンにおいても、そういった観点から、選手たちの得点数を眺めてみてはいかがだろうか。

「パ・リーグ インサイト」望月遼太

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