「コントロールが悪い」は間違い? パ・リーグの暴投ランキング2019

2020-02-05 17:00 「パ・リーグ インサイト」成田康史
北海道日本ハムファイターズの有原航平投手(C)パーソル パ・リーグTV

北海道日本ハムファイターズの有原航平投手(C)パーソル パ・リーグTV

 投手が投じた球を捕手が受け取る。これは野球という競技を進行していく上での原理原則のようなものである。そのため、ボールをそらしてしまう「捕逸」や、制球を乱した「暴投」は走者の進塁を許すプレーとなってしまう。

 言い換えれば、「投手が意図して行う」ことが一切ないのが「暴投」の特徴だ。これを踏まえると、暴投が多い投手はそこに自身の特徴が表れていると推測できる。今回は、2019年のパ・リーグで暴投を多く記録した投手を取り上げ、暴投が記録されたシチュエーションを確認し、その特徴を見ていく。まずは2019年の暴投数ランキングから確認していこう。

【暴投数】
1位:F有原航平投手 9個
2位:L松本航投手  8個
3位:L今井達也投手 7個
3位:L高橋光成投手 7個
5位:F上原健太投手 6個
5位:B榊原翼投手  6個
7位:Fロドリゲス投手5個
7位:E石橋良太投手 5個
7位:M種市篤暉投手 5個

 最多勝に輝いた北海道日本ハムの有原航平投手がリーグ最多の9暴投を記録。2~3位には埼玉西武の3投手が並び、それに続いてオリックスの榊原翼投手や千葉ロッテの種市篤暉投手といった各チーム期待の先発投手たちが名を連ねた。

「暴投が多い=コントロールが悪い」という印象を受けるかもしれないが、1位の有原投手は防御率、奪三振数でリーグ2位の好成績を記録しており、一概にそうとも言えないだろう。

 続いて暴投数5位までの投手について、暴投が記録されたシチュエーションの中からいくつかをピックアップし、それぞれの特徴を探っていく。

有原航平投手(9暴投)

・5月6日対千葉ロッテ 2回裏1死走者なし 0-2からのフォーク(1個目)
 1死から中村奨吾選手を2球で追い込んだバッテリーは、決め球にフォークボールを選択。ハーフスイングで空振りを取ったが、捕手・石川亮選手がこれを捕ることができずに、振り逃げで出塁を許した。

・5月6日対千葉ロッテ 5回裏2死満塁 0-2からのフォーク(2個目)
 1点差を追いつかれ、なおも2死満塁のピンチを背負った場面。ここでも井上晴哉選手を2球で追い込み、3球目にフォークボールを選択した。しかし、投球はベースの手前でバウンドしてバックネットまで到達。3塁走者が生還し、痛恨の勝ち越し点を献上した。この打席では、カウント2-2となってからもう1つ暴投を記録。こちらもフォークボールが外角に外れてのものだった。

・6月7日対阪神 6回裏2死2,3塁 2-2からのフォーク(5個目)
 2点リードで迎えた6回裏、1死満塁から内野ゴロの間に1点を失い、なおも2,3塁とピンチの場面で代打・原口文仁選手と相対する。カウント2-2からの5球目にフォークボールを選択したバッテリーだったが、投球は原口選手の足元へ。石川選手のブロッキングも及ばず、同点のランナーが生還した。

・9月14日対福岡ソフトバンク 3回表2死3塁 2-2からのフォーク(9個目)
 今宮健太選手の二塁打から2死3塁のピンチを背負い、打席にはデスパイネ選手。4球で追い込んだ有原投手だったが、ここでも5球目に選んだフォークボールが打席のはるか手前で跳ねてしまい、痛恨の先制点を許してしまった。

 ここで挙げた4つのケースで共通しているのは、いずれも「追い込んでからのフォーク」が暴投になっていること。有原投手は記録した9つの暴投のうち、6つが追い込んでからであり、すっぽ抜けてコントロールを失ったケースを除くと、実に75%が決め球でのものだった。

 この原因を考えるヒントとなるのが、3年前から4.69→7.08→8.82と向上させ続けている奪三振率。暴投数も2017年が5個、18年は0個だったことから、三振と暴投が関連していると考えられる。暴投の多くがフォークボールであったことから、この球種のキレが増したことが三振数を向上させ、併せて暴投数の激増へとつながったのではないだろうか。

松本航投手(8暴投)

・6月2日対千葉ロッテ 2回裏無死1塁 0-0からのカーブ(2個目)
 2回裏、先頭の4番・井上晴哉選手に安打を浴びて無死1塁となった場面。続く4番・レアード選手に対して初球に投じたカーブは、外角に大きく外れて左打席でバウンドする。捕手の森友哉選手がうまく止めたものの、1塁走者の井上選手が好走塁で2塁へ進んだ。この試合では、5回裏にもカウント1-0からカーブで暴投を記録し、1塁走者の進塁を許した。

・7月7日対千葉ロッテ 5回裏1死2塁 1-0からのカーブ(5個目)
 1対0とリードして迎えた5回裏、自らの失策で2点を奪われて逆転を許した場面。なおも1死2塁で相対した荻野貴司選手に対し、カウント1-0から投じたカーブは左打席へ。高く跳ねたボールを捕手の森選手が見失っている間に2塁走者が進塁した。

・8月19日対福岡ソフトバンク 4回裏2死3塁 0-1からのスライダー(7個目)
 同点の4回裏、打席に立つ福田秀平選手に対して初球のカーブでストライクを取ったものの、続く2球目に投じたスライダーが暴投に。打者の足元をすり抜ける間に3塁走者が生還し、痛恨の勝ち越し点を許した。

 松本投手の暴投に共通していたのは、その多くが「早いカウントで投じられた変化球」であったことだ。有原投手と相反して、追い込んでから投じられたものは2球のみで、半数は2球目以内のもの。これに加えて直球での暴投はわずかに1つと、はっきりとした特徴が表れている。

 また、暴投を記録した試合は防御率5点台後半となっており、シーズン成績(4.54)と比べて1点以上悪化している。2020年のさらなる飛躍に向け、早いカウントでの変化球の制球が1つの課題となるかもしれない。

今井達也投手(7暴投)

・4月6日対北海道日本ハム 5回裏2死2塁 0-1からのカーブ(1個目)
 12点と大量援護に恵まれたこの日。4回まで無失点と好投が続いていたが、5回裏に西川遥輝選手の本塁打などで2点を失う。なおも2死2塁のピンチで横尾俊建選手を迎える。1球目のカーブでストライクを取ると、2球目にも同じくカーブを選択。しかし、これが打席のはるか前で跳ねてしまい、2塁走者の進塁を許した。

・5月11日対北海道日本ハム 3回裏1死3塁 3-1からのカーブ(3個目)
 両チーム無得点で迎えた3回裏に先制点を許すと、なおも1死3塁の場面で中田翔選手と相対する。カウント3-1となって投じたカーブは、捕手・森選手のミットが伸ばしたミットのわずかに先でバウンドし、バックネット方向へ。3塁走者が生還し、痛恨の追加点を与えてしまった。

・7月15日対千葉ロッテ 2回表2死満塁 0-0からのスライダー(6個目)
 4対1と援護点をもらった直後の2回表、1点を失い、さらに2死満塁となった場面。清田育宏選手に対して、初球にカーブを投じると、外角に大きく外れた投球は左打席で跳ね、森選手も止めることができず。ボールが高く上がっている間に2人の走者の生還を許し、試合は振り出しに戻った。

 今井投手の暴投は、松本投手と同じ「早いカウント」そして「変化球」という特徴があった。7月5日に記録したものがマウンドで転倒したものであったことを踏まえると、変化球での暴投は83%となり、松本投手よりも顕著な数字となった。

 内訳を見ると、カーブ、スライダー、そしてチェンジアップと3種類の変化球で暴投を記録。チェンジアップでの暴投だけは、カウント2-2と追い込んでからのものだった。カウントを取る変化球、そして三振を取る変化球と使われ方の違いが表れており、それぞれの精度を上げていくことが2020年のテーマになりそうだ。

高橋光成投手(7暴投)

・3月31日対福岡ソフトバンク 4回裏2死1塁 1-2からのフォーク(1個目)
 0対0で迎えた4回裏、2死から5番・グラシアル選手に死球を与えて1塁に走者を背負った高橋光投手。続く内川聖一選手を3球で追い込むと、バッテリーは4球目にフォークを選択する。ボールはわずかに外角へそれたところでバウンドしたものの、ブロッキングが及ばず1塁走者が進塁した。

・4月21日対福岡ソフトバンク 2回表2死1塁 2-2からのフォーク(3個目)
 上林誠知選手を2-2と追い込んでからの5球目、決め球にフォークを投じたが、ボールは打者の足元をすり抜けてバックネットまで到達した。この試合では4回表にもフォークボールで暴投を記録している。

 高橋光成投手の傾向は、最初に紹介した有原投手と似ている。7暴投のうち4つが打者を追い込んでからのもの、そしてその大半がフォークボールだった。高橋光投手の課題も、決め球として投じるフォークボールの制球にあると言えそうだ。

 一方で高橋光投手の暴投は6月14日を最後に記録されていない。1年を通して投げ抜いたことを踏まえると、課題をクリアして着実にステップを上がっていると考えられる。2020年はさらなる飛躍に期待したいところだ。

上原健太投手(6暴投)

・8月27日対埼玉西武 8回表無死2塁 2-2からのスライダー(5個目)
 2対6と埼玉西武に4点のリードを許して迎えた8回表。この回からマウンドに上がった上原健太投手は、無死2塁のピンチを背負って秋山翔吾選手(現・レッズ)と相対する。2-2と追い込んだが、5球目のスライダーが引っ掛かり、捕手・清水優心選手も止めることができず。2塁走者が3塁へ進み、その後の失点につながる痛恨の1球となった。

・8月30日対楽天イーグルス 7回裏1死1塁 1-0からのフォーク(6個目)
 2対7とリードを許した場面での救援となった上原投手。1死から3番・浅村栄斗選手に安打を許すと、続くブラッシュ選手に対しての2球目、フォークボールが内角に入り込み、ボールはバックネットへと転がった。

 上原投手の暴投は、ほとんどが右打者の内角、左打者の外角へ、いわゆる「引っかかる」ボールだった。シーズン序盤には先発、終盤には中継ぎへと役割を変えた上原投手だが、活躍を狙うポイントとして、この引っかかる投球の改善が1つのカギになりそうだ。

榊原翼投手(6暴投)

・5月15日対千葉ロッテ 1回裏無死2塁 2-2からのフォーク(2個目)
 初回、先頭の荻野貴司選手の出塁を許し、盗塁でピンチを背負った榊原翼投手。続く鈴木大地選手(現・楽天)を2-2と追い込んでから投じた6球目のフォークは捕手のわずかに手前でバウンドする。ボールは捕手のミットからこぼれ、2塁走者が3塁へ進塁した。

・6月29日対埼玉西武 1回裏無死2塁 1-0からのフォーク(4個目)
 初回から3連打を浴びて2点を失った榊原投手。無死2塁で迎えた4番・山川穂高選手に対して2球目に選んだフォークは、捕手のわずかに手前でバウンド。ブロッキングが及ばず暴投となり、走者の進塁を許した。

 榊原投手の暴投は、有原投手、そして高橋光投手と同様にフォークが大半を占めていた。一方で、そのカウントはまちまちで追い込んでからのものは1球のみ、0-1や1-0といった早いカウントからもフォークボールを投じているのが特徴的だ。

 また、多くの投手の暴投が外角に大きく外れていたり、ベースのはるか手前でバウンドするなど捕球が難しい投球であったのに対し、榊原投手のものは、フォークボールを正確に止めることができずに暴投となっているケースが多かった。右腕のさらなる進化に向けて、球を受ける捕手のレベルアップも必要になるかもしれない。

「暴投」にも投手それぞれの特徴が

 ここまで紹介した6投手に表れているように、一口に「暴投」といってもさまざまなケースが考えられ、それぞれに暴投の特徴があった。投手の力は「三振数」や「防御率」といった数字から測ることが多いと考えられるが、視点を変えて、「暴投」のような普段は話題にならないプレーに目を付けるのも面白い。

成田康史

「記録・データ」カテゴリの人気記事