最大ゲーム差「11.5」。大逆転で4年ぶりの栄冠に輝いた北海道日本ハムの軌跡をたどる

2016-09-29 00:00 「パ・リーグ インサイト」松下雄馬

決して順風満帆なスタートとは言えなかったシーズン序盤から、球団新記録の15連勝を経て、最後は福岡ソフトバンクとのデッドヒート制して4年ぶりとなるリーグ優勝を成し遂げた北海道日本ハム。6月24日の段階で最大11.5ゲーム差という位置からの猛追で大逆転優勝となった。しかし、そこに至るまでの道のりは大変険しいものであった。いくつもの壁を乗り越えてようやくたどり着いた、北海道日本ハムの今季のシーズンの戦いぶりを月ごとに振り返る。

【3・4月】
<13勝15敗0分 月間勝率.464 チーム順位3位>
敵地・QVCマリンで迎えた3月25日の開幕戦は、終盤に追い上げを見せるも、初回にエース・大谷選手が失った3点が重くのしかかり敗戦。2016年のシーズン初戦は黒星発進となる。続く2戦目も黒星で連敗を喫するが、3月27日の3戦目に有原投手が8回無失点の好投。増井投手が3人で抑えて今季初セーブを挙げ、1対0で今季初勝利を挙げる。

札幌ドームでの本拠地開幕戦は、3月29日。5回に大谷選手の今季初本塁打が飛び出すなど、17安打13得点の猛攻。4万1138人の大観衆の前で圧勝劇を演じた。

4月1日は静岡で迎えた福岡ソフトバンクとの今季初対戦。初回に幸先良く3点を先制し、8回に追い付かれたものの、最終回に陽選手の右中間を破る殊勲打で今季初サヨナラ勝利。今季の対福岡ソフトバンクでの勝ち越し6は、この勝利がきっかけとなった。

3・4月は大きな連敗もなければ、大きな連勝もなく、13勝15敗。4月終了時の順位こそ3位だったものの、決して好スタートとは言えない2016シーズンの幕開けであった。

【5月】
<13勝9敗1分 月間勝率.591 チーム順位3位>
5月は打者2人の活躍が特に光った。大谷選手が打者として出場の全試合で安打を放つなど、絶好調。5月4日からは5戦連続本塁打を放つなど、「打ち出の小槌」状態で快打を量産。相手投手に警戒させて四球での出塁も増加し、出塁率も上昇。チームの得点機会も増えた。

もう一人のレアード選手も5月は打棒が爆発。全23試合に出場し、そのうちの9試合でマルチ安打を記録。打率.326、28安打、12本塁打、21打点の活躍で来日初の月間MVPを受賞。チームの勝ち越しに大きく貢献する活躍を見せた。

チームは5カード連続の勝ち越しを果たすなど、状態が徐々に上向きに。13勝9敗と4つの貯金を生み出すも、順位は変わらずに3位。4月の半ばに首位を奪取した福岡ソフトバンク、2位・千葉ロッテを追う展開となる。

【6月】
<15勝7敗0分 月間勝率.682 チーム順位3位>
5月は打者として大きく貢献した大谷選手が、6月は投手としてチームをけん引する。6月5日の巨人戦では、自身最速、そして日本球界最速の163キロを計測。敵地・東京ドームの4万6239人の観客の度肝を抜いた。

翌週の登板となった12日の阪神戦(札幌ドーム)では163キロを5度計測。7回を投げて31球が160キロ超えと規格外の投球を見せ、無失点の好投。その後の2度の登板機会もいずれも無失点に抑える好投で6月は自身4連勝。4試合を投げて4勝0敗0セーブ、31回、41奪三振、自責点1、防御率0.29という圧巻の成績で6月度の月間MVPを受賞した。

チームは大谷選手の活躍もあり、19日の中日戦から連勝がスタート。7連勝で締めて15勝7敗と大きく勝ち越し。6月終了時の順位は3位と変わらずも、ここから北海道日本ハムの快進撃が始まった。

【7月】
<17勝4敗0分 月間勝率.810 チーム順位2位>
7月3日の福岡ソフトバンク戦、大谷選手が1番・投手として出場。さらに大谷選手は第1打席で初球先頭打者本塁打。球場内のファンも何が起こったのか分からないほどざわつくなど、衝撃的な一発であった。結局その一発が決勝点となり、投げても8回無失点で自身7連勝。福岡ソフトバンク相手に同一カード3連勝を飾った。

その後もチームの勢いは止まらず、7月11日の試合まで怒とうの15連勝。球団新記録となる快進撃で首位・福岡ソフトバンクとのゲーム差を「5」に縮めた。

7月10日の試合でも大谷選手は勝ち投手に。しかし、右手中指のマメをつぶすアクシデントにより、「投手・大谷」は離脱。以降は野手として覚醒し、チームに貢献していくことになる。その他にも宮西投手がフル回転で29試合連続無失点。有原投手が7月22日の試合で勝利し、2年目にして自身初の2桁勝利を記録。岡選手が打率4割をキープする大活躍を見せるなど、チーム一丸となって戦い、「負けない野球」で白星を積み重ねた。

【8月】
<14勝12敗0分 月間勝率.538 チーム順位2位>
7月終了時までで10勝4敗、防御率1.90とエース級の働きを見せていた有原投手が8月は大ブレーキ。夏場の暑さによる疲労が影響したか、4度の登板で0勝3敗。25イニングで15失点と苦しみ、白星から遠ざかる。

投手・大谷選手が怪我による離脱。勝ち頭・有原投手が未勝利。そして8月2日の試合中に田中賢選手との交錯で岡選手が負傷交代。7月の快進撃を支えた選手たちがこぞって離脱もしくは不振という事態に陥ってしまう。しかし、このピンチの場面でもチームの救世主が現れる。8月4日に先発に配置転換となった増井投手である。

ルーキー時代は全試合で先発登板も、2年目以降はリリーフとして活躍。昨年も守護神として39セーブ、防御率1.50という素晴らしい働きを見せたものの、今季は打ち込まれる場面が目立ち、防御率は6.30と悪化。そこで栗山監督が思い切った配置転換を決断し、これが見事にハマる形となった。

配置転換後初登板の8月4日は5回無失点と試合を作るも勝ち負けつかず。翌週の登板では7回2失点と力投を見せるが、惜しくも黒星。8月18日の登板で8回途中1失点の投球を見せ、これが2010年5月27日以来の先発勝利。3度目の正直で自身6年ぶりの先発勝利を挙げると、そこからは勢いに乗って8月25日の登板でも白星を挙げ、チームを今季初の首位浮上へと導いた。

【9月】
<14勝6敗2分 月間勝率.700 (9月28日終了時)>
首位浮上の翌日(8月26日)に福岡ソフトバンクに首位を奪い返され、2位で勝負の9月に突入。すると、9月早々にまたもチームに試練が襲い掛かる。ここまで安定した投球でシーズン途中から守護神を務めていたマーティン投手が怪我で離脱。勝負所での守護神の離脱により、以後頭を悩まされることになる。

9日には増井投手が7回1失点の好投を見せ、首位に浮上。7日に約2カ月ぶりの先発登板を果たした大谷選手が、13日の復帰後2度目の先発登板で日本プロ野球最速の164キロを計測。しかし、14日にまたも首位を奪い返され、僅差での白熱のペナント争いが続く。

18日の試合では、新人王獲得を狙う高梨投手が6回1失点の好投で自身初の2桁10勝。チームはこの勝利で今季のパ・リーグ全球団からの勝ち越しを決める。

そして21日からのゲーム差なしで迎える天下分け目の大一番、福岡ソフトバンクとの直接対決は2戦とも手に汗握る熱戦となった。北海道日本ハムが序盤にレアード選手の38号弾で先制するも、5回裏に大谷選手がバント処理を誤り、1点差に。しかし7回裏に、痛みをおして出場の陽選手がフェンスに激突しながらも打球を離さないスーパープレー。最終回には一打サヨナラという場面を迎えるが、またも陽選手が必死の背走からチームを救うスーパーキャッチ。結果的にこの勝利が優勝へのターニングポイントとなった。

翌22日の天王山第2ラウンドは、先制を許すも2回表に西川選手の一打ですぐさま逆転。2カ月間勝利から遠ざかる有原投手が相手の反撃を封じ、終盤に主砲・中田選手の一発で勝負あり。敵地での激しい攻防戦を連勝し、優勝マジック「6」を点灯させた。

その後の4戦は3勝1敗と順調にマジックを減らし、26日の試合で北海道日本ハムが逆転勝ち。福岡ソフトバンクが逆転負けという対照的な結果となりついにマジックは「1」。歓喜のときが刻一刻と近付く。

そして迎えた28日、先発マウンドにはこの「優勝決定」という舞台に最もふさわしい男・大谷選手が上がった。昨日の代打出場の疲れを全く感じさせず、初回から全力で飛ばす。4回に主砲・レアード選手の39号弾で先制すると、中盤以降も球威は全く衰えずに快投を続けていく。そして1点のリードを保ったまま、最終回に突入。球がやや浮き始め、四球で出塁を許すも2死までこぎつけ、ついにその瞬間は訪れた。

最後の打者・外崎選手を切れのあるスライダーで左飛に打ち取り、ゲームセット。やはり優勝時の中心にいたのは他でもなく、エース・大谷選手であった。

苦しみながらも優勝を目指して戦い抜いた選手、首脳陣が喜びを噛みしめるようにグラウンド上で何度も何度もハイタッチ。そしてハグを交わし、満面の笑みを見せながら、マウンド付近に集まると、数多の名采配を生み優勝へ導いた栗山監督が8度宙に舞った。

福岡ソフトバンクとの激しいペナント争いを制し、4年ぶりの優勝を成し遂げたが、まだまだここは通過点に過ぎない。ヒルマン監督が率いた2006年以来、10年ぶりのさらに大きなタイトル獲得へ。北海道日本ハムがこの勢いのまま、一気に駆け抜ける。