本塁打王の「長打率」は優秀? 3つのランキングからその傾向を探る

2020-04-08 18:30 「パ・リーグ インサイト」望月遼太
埼玉西武ライオンズ・中村剛也選手【撮影:丹羽海凪】

埼玉西武ライオンズ・中村剛也選手【撮影:丹羽海凪】

「長打率」という名前ながら重要なのは塁打を稼ぐ能力

 野球における指標の一つに、「長打率」というものがある。「塁打数÷打数」という計算式で求められるこの数字は、1打数あたりに稼いだ塁の平均値を示すものである。「長打」という言葉が含まれてはいるものの、計算式を見てもわかる通り、実際の性質としては長打を打つ確率というよりは、むしろ塁打の数と密接にかかわってくる数字だ。

 長打を記録せずとも単打を増やせば長打率も上昇していくため、長打率が実際の長打力を示しているわけではないという指摘もある。その一方で、打者の能力を示す指標の一つであり、得点との相関性が高い数値の一つとして知られる「OPS」を求める計算式は、「出塁率+長打率」となっている。このことからも、長打率が一定の価値を持つ指標であることは確かと言えるだろう。

 さて、長打率が必ずしも選手が持つ長打力を示しているわけではないのは先述の通りだが、各シーズンの本塁打王が記録した長打率は果たしてどのようなものになっていたのだろうか。実際に、各年にリーグトップの長打率を記録した選手たちの顔触れを見ていくと、そのあたりの傾向についても確認することができた。

 今回は、そんな「長打率」について、より深く知るための3つのランキングを紹介したい。直近10シーズンにおけるパ・リーグの長打率ランキングトップ5と、通算長打率の現役選手、および歴代の名選手たちによるトップ10のランキングを見ていき、ホームランバッターたちが記録した長打率を調べていこう。(所属は当時)

10シーズン中9シーズンで本塁打王がリーグトップ5の数字を記録したが……

 まず、直近10年間のパ・リーグにおける長打率のランキングを見ていきたい。各年のトップ5に入った選手の顔ぶれと、その成績は以下の通りだ。なお、同年に本塁打王を獲得した選手に関しては、成績の項にその旨を追記している。

2010年
1位:T-岡田選手(オリックス)

長打率.575、33本塁打 ※本塁打王
2位:アレックス・カブレラ氏(オリックス)
長打率.569、24本塁打
3位:多村仁志氏(福岡ソフトバンク)
長打率.550、27本塁打
4位:中島裕之選手(埼玉西武)
長打率.511、20本塁打
5位:ホセ・オーティズ氏(福岡ソフトバンク)
長打率.489、24本塁打

2011年
1位:中村剛也選手(埼玉西武)

長打率.600、48本塁打 ※本塁打王
2位:松田宣浩選手(福岡ソフトバンク)
長打率.510、25本塁打
3位:内川聖一選手(福岡ソフトバンク)
長打率.485、12本塁打
4位:糸井嘉男選手(北海道日本ハム)
長打率.448、11本塁打
5位:中島裕之選手(埼玉西武)
長打率.433、16本塁打

2012年
1位:ウィリー・モー・ペーニャ氏(福岡ソフトバンク)

長打率.490、21本塁打
2位:李大浩選手(オリックス)
長打率.478、24本塁打
3位:中村剛也選手(埼玉西武)
長打率.461、27本塁打 ※本塁打王
4位:中島裕之選手(埼玉西武)
長打率.451、13本塁打
5位:稲葉篤紀氏(北海道日本ハム)
長打率.421、10本塁打

2013年
1位:浅村栄斗選手(埼玉西武)

長打率.554、27本塁打
2位:中田翔選手(北海道日本ハム)
長打率.550、28本塁打
3位:ケーシー・マギー氏(楽天)
長打率.515、28本塁打
4位:井口資仁氏(千葉ロッテ)
長打率.511、23本塁打
5位:長谷川勇也選手(福岡ソフトバンク)
長打率.510、19本塁打
※同年本塁打王のミチェル・アブレイユ選手は6位(長打率.506)

2014年
1位:エルネスト・メヒア選手(埼玉西武)

長打率.581、34本塁打 ※本塁打王
2位:中村剛也選手(埼玉西武)
長打率.579、34本塁打 ※本塁打王
3位:糸井嘉男選手(オリックス)
長打率.524、19本塁打
4位:陽岱鋼選手(北海道日本ハム)
長打率.495、25本塁打
5位:ウィリー・モー・ペーニャ氏(オリックス)
長打率.486、32本塁打

2015年
1位:柳田悠岐選手(福岡ソフトバンク)

長打率.631、34本塁打
2位:中村剛也選手(埼玉西武)
長打率.559、37本塁打 ※本塁打王
3位:松田宣浩選手(福岡ソフトバンク)
長打率.533、35本塁打
4位:李大浩選手(福岡ソフトバンク)
長打率.524、31本塁打
5位:秋山翔吾選手(埼玉西武)
長打率.522、14本塁打

2016年
1位:柳田悠岐選手(福岡ソフトバンク)

長打率.523、18本塁打
2位:ブランドン・レアード選手(北海道日本ハム)
長打率.516、39本塁打 ※本塁打王
3位:浅村栄斗選手(埼玉西武)
長打率.510、24本塁打
4位:エルネスト・メヒア選手(埼玉西武)
長打率.509、35本塁打
5位:アルフレド・デスパイネ選手(千葉ロッテ)
長打率.480、24本塁打

2017年
1位:柳田悠岐選手(福岡ソフトバンク)

長打率.589、31本塁打
2位:秋山翔吾選手(埼玉西武)
長打率.536、25本塁打
3位:アルフレド・デスパイネ選手(福岡ソフトバンク)
長打率.513、35本塁打 ※本塁打王
4位:茂木栄五郎選手(楽天)
長打率.497、17本塁打
5位:ゼラス・ウィーラー選手(楽天)
長打率.493、31本塁打

2018年
1位:柳田悠岐選手(福岡ソフトバンク)

長打率.661、36本塁打
2位:山川穂高選手(埼玉西武)
長打率.590、47本塁打 ※本塁打王
3位:吉田正尚選手(オリックス)
長打率.553、26本塁打
4位:秋山翔吾選手(埼玉西武)
長打率.534、24本塁打
5位:浅村栄斗選手(埼玉西武)
長打率.527、32本塁打

2019年
1位:森友哉選手(埼玉西武)

長打率.547、23本塁打
2位:吉田正尚選手(オリックス)
長打率.543、29本塁打
3位:山川穂高選手(埼玉西武)
長打率.5400、43本塁打 ※本塁打王
4位:ジャバリ・ブラッシュ選手(楽天)
長打率.5399、33本塁打
5位:中村剛也選手(埼玉西武)
長打率.528、30本塁打

 同年の本塁打王が長打率でもリーグトップに立ったのは、2010年のT-岡田選手、2011年の中村選手、2014年のメヒア選手の3シーズン。2016年を除いた全てのシーズンで本塁打王は長打率のリーグトップ5に入っており、その2016年に本塁打王を獲得したアブレイユ選手も僅差の6位と、それに準ずる数字を記録していた。それぞれしっかりとリーグ上位に食い込んではいたが、リーグトップには手が届かなかったというケースが多かった。

 また、2016年の長打率がリーグ1位だった柳田選手と、2019年に同じくリーグ1位の長打率を記録した森選手は、ともに同年の本塁打数ランキングではトップ10にも入っていなかった。どちらも球界を代表する好打者であることに疑いの余地はなく、本塁打の少ないタイプの打者というわけでもないが、やはり本塁打よりも打率や二塁打をコンスタントに稼ぎ出せる選手が有利になるケースは少なくなさそうだ。

 その一方で、各選手の本塁打数を見てみると、20本塁打以上と水準以上の長打力を持った選手が多くなっていた。ただ、10本台の本塁打数でトップ5に食い込んだ選手も全部で10名存在。そのうち半数は統一球が導入されていた2011年と2012年に記録されたものだが、リーグ1位の長打率だった2016年の柳田選手が18本塁打にとどまっていたケースもあり、あくまで多くの本塁打が狙えればより有利だが、必須ではないと見るべきか。

 個人の受賞回数に目を向けると、柳田選手が2015年から2018年まで4年連続でリーグトップの数字を記録している点が目につく。本塁打王を獲得した経験こそないものの、確実性、長打力、俊足と多くの塁を稼ぐために必要な能力を高いレベルで兼ね備えており、その才能を考えれば4シーズンにわたるタイトル独占もなんら不思議ではない。

現役選手のなかでトップに立ったのは?

 次に、現役選手の長打率ランキングについても見ていきたい。その結果と、各選手の成績は次の通りだ。(4000打数以上の選手を参照)

1位:中村剛也選手
長打率.530 1664試合 415本塁打
2位:福留孝介選手
長打率.495 1866試合 280本塁打
3位:松田宣浩選手
長打率.476 1636試合 274本塁打
4位:丸佳浩選手
長打率.465 1232試合 174本塁打
5位:浅村栄斗選手
長打率.462 1256試合 180本塁打
6位:糸井嘉男選手
長打率.4571 1502試合 163本塁打
7位:坂本勇人選手
長打率.4569 1670試合 223本塁打
8位:青木宣親選手
長打率.455 1246試合 110本塁打
9位:秋山翔吾選手
長打率.454 1207試合 116本塁打
10位:中島宏之選手
長打率.452 1682試合 195本塁打

 以上のように、中村選手が2位以下を大きく引き離してトップに立っている。通算の長打率が.500を超えているのは、現在の日本球界ではただ1名だ。その長打率.500ラインに近い数字を残している福留選手をはじめ、2位以下にも実績十分の好打者たちが並んでいるが、通算本塁打は10名中6名が200本未満となっている。やはり、本塁打数の多さというよりも、二塁打や三塁打も含めた“塁を稼ぐ能力”が高い選手が多いと言える。

歴代選手のランキングは現役選手とは大きく異なる傾向に

 最後に、歴代選手の長打率ランキングも紹介していきたい。その内容は以下の通りだ。(4000打数以上の選手を参照)

1位:王貞治氏
長打率.634 2831試合 868本塁打
2位:アレックス・カブレラ氏
長打率.592 1239試合 357本塁打
3位:松井秀喜氏
長打率.582 1268試合 332本塁打
4位:落合博満氏
長打率.564 2236試合 510本塁打
5位:タフィー・ローズ氏
長打率.559 1674試合 464本塁打
6位:ブーマー・ウェルズ氏
長打率.555 1148試合 277本塁打
7位:中西太氏
長打率.553 1388試合 244本塁打
8位:レロン・リー氏
長打率.5419 1315試合 283本塁打
9位:山本浩二氏
長打率.5416 2284試合 536本塁打
10位:小笠原道大氏
長打率.5399 1992試合 378本塁打

 通算本塁打数の世界記録保持者の王氏が、長打率においても堂々のトップとなった。ただ、積み上げるタイプの記録ではなく、成績によって上下する記録であるため、ある程度選手として成熟してから来日するケースが多い外国籍選手がやや多くなっている。いずれもNPB史上にその名を残す優良助っ人たちであり、ホームラン数や打点に加えて塁打も稼ぐという、外国籍選手に求められる役割を十二分に果たしていた。

 また、塁打の通算記録には昭和時代の大打者たちが多く名を連ねていたのに対して、長打率の場合はカブレラ氏、松井氏、ローズ氏、小笠原氏と、1990年代から2010年代にかけて大きな活躍を見せた、比較的近年の選手が上位に顔を出しているのも特徴だ。このあたりにも、通算の数字ではなく、キャリアの平均値を求めるという長打率の計算方法が影響している部分はあるだろう。

 また、現役トップの長打率を記録している中村選手は2019年終了時点で長打率.530と歴代の大打者たちに決して引けを取らない数字を残しており、実際に通算のランキングでも18位につけている。2000年以降にデビューした日本人選手としては図抜けた数字であり、その傑出度があらためてうかがい知れるところだ。

決して一筋縄では語れない「長打率」という指標の奥深さ

 以上のように、本塁打王が同年の長打率ランキングでトップに立てたケースは決して多いとは言えなかった。しかし、そのシーズンの本塁打王を獲得した選手が長打率でも1位を獲得したケースは3度、同2位は4度と、リーグ最上位クラスの数字を記録していたケースも多かった。パワー自慢の助っ人選手や和製大砲がトップ5に入っていた年も多く、そのままリーグトップとはいかずとも、一定の数字を記録できていたのは確かと言える。

 とはいえ、通算成績の面でも現役選手の部門では、強打者よりも安定してアベレージを稼げる選手たちが上位にくる傾向が強かった。しかし、圧倒的な数字でそのランキングのトップに立ったのは中村選手であり、通算成績では球史にその名を残す長距離砲たちが顔を並べていた。一発長打よりも塁打を安定して稼げる選手のほうが有利なのは間違いないが、歴代最高クラスの数字となると本塁打の多さも求められるようだ。

 冒頭でも述べたように、「長打率」が持つ指標としての価値は決して小さくない。それに加えて、これまで述べてきたように、その傾向についても一筋縄ではいかない奥深さを持っている。2020年シーズン以降も、この数字を追ってみる価値は十二分にあるのではないだろうか。


文・望月遼太

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