「世界最速開幕」の台湾プロ野球、8日にも上限1000人で観客入場を解禁へ

2020-05-06 13:30 駒田英
写真提供:CPBL

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入場に上限はあるものの、待望の野球観戦がすぐそこに

 4月12日に世界に先駆けて無観客で「開幕」した台湾プロ野球が、5月8日に上限1000人で、観客を入れて試合を開催することとなった。

 台湾プロ野球は5日、防疫会議を招集。吳志揚・コミッショナーは会議後に記者会見を行い、8日に行われる2試合から、上限1000人で観客の入場を解禁する方針を示した。

 呉・コミッショナーはまず、先日、中央感染症指揮センターへ提示した計画において、屋外活動の人数上限を500人と定めた同センターのガイドラインに基づき、200人の入場を求め、既に同意を得ていたことを明らかにした。

 呉・コミッショナーはそのうえで、「ガイドライン」の設定からは既に1カ月以上経過していること、現在台湾における新型コロナウイルスの国内感染リスクが低下していること、そして、4月12日の開幕以来、この1カ月間、各球団が防疫対策に取り組み、観客を入場させた上での試合運営に自信を得たことを理由に、今日の防疫会議で、入場者数を1000人まで引き上げることを決議した、と述べた。

 一方、中央感染症指揮センターは直後の記者会見の中で、先週行われた台湾プロ野球側との話し合いで、収容人員最少の球場で11000人であることから、1000人を上限に観客入場の解禁をアドバイスしたと説明、そのうえで、チケットの実名制、動線の遵守、観客同士のソーシャルディスタンス確保、個人衛生徹底の4点について、十分に注意するよう求めたと述べ、事実上のゴーサインを出した。

 台湾プロ野球側も、入場者数の引き上げにあたっては、防疫対策を厳格に行うと強調。入場時の検温、消毒、行列時のソーシャルディスタンス確保のほか、マスク着用の義務付け、前日までの実名登記をもとにした入場時の本人確認を行うと説明。また、球場内では、観客は指定された座席に着席することが義務付けられ、観客同士の間隔を確保し、座席をみだりに移動しないよう、スタッフが監視を行うと説明した。

 台湾プロ野球の呉・コミッショナーは、観客入場解禁のタイミングとして、今週末、8日の試合からが望ましいと述べ、野球ファンへの「母の日」のプレゼントにしたい、と希望した。なお、8日の午後6時35分からは、台中インターコンチネンタル球場で、楽天モンキーズ対中信兄弟が、新荘球場で統一セブンイレブンライオンズ対富邦ガーディアンズが行われる。 

世界をリードする台湾政府及び台湾プロ野球のコロナ対策とは

 新型コロナウイルスが世界的に蔓延する中、台湾は、政府がいち早く警戒感をもち、「先手、先手」の対策を打ち出し、時には厳しい措置もとりながら、現在まで抑え込みに成功している。

 台湾プロ野球も、政府の防疫対策と足並みを揃える形で、1月から、各球団と協力。選手、スタッフなどに対し、球場内の措置のみならず、日常生活から意識を高めるよう求め、慎重に開幕への準備を行ってきた。

 当初は、観客入場を認めていたオープン戦も、一軍の公式戦延期による追加分から、無観客試合へと方針転換、3月17日に開幕した二軍も、史上初めて無観客で開催となった。

 東京オリンピック最終予選の延期、4月初旬の連休による感染拡大のリスク回避などの理由から、開幕が二度延期された一軍公式戦は、当初、シーズンチケット購入者を対象に上限150人までの入場を認める方針であったが、地方自治体の慎重な姿勢もあり、無観客での4月11日開幕を決定、そして、選手の権益の考慮、そして記録はリーグ維持の為の基礎であるという立場から、レギュラーシーズン120試合の開催を優先することとなった。開幕戦は雨天順延となったが、12日、統一セブンイレブンライオンズと中信兄弟の試合が世界に先駆け開催された。

 当然のことながら、台湾プロ野球にとって、この開幕は「ゴール」ではなかった。台湾プロ野球では、コーチ・選手、球団スタッフ、リーグ関係者、メディア関係者のうち、一人でも感染者が出た場合にはリーグを一時休止する方針を決めている。そのため、台湾プロ野球及び各球団には、決して「防疫の穴」になるわけにはいかない、という強い思いがあり、世界が台湾プロ野球に注目する中、開幕できた喜びや誇りと同時に、大きなプレッシャーとも戦い続けているのだ。

 現在、一軍公式戦は、本拠地に集約して開催しているほか、一、二軍を問わず、選手の移動は、原則として球団バスのみとし、台湾高速鉄道(新幹線)など公共交通機関は利用しない。また、遠征先での宿泊はできるだけ避け、宿泊の場合もできるだけホテルで待機し、不要不急の外出はしないルールが定められている。各チームの外国人選手も自国メディアに、政府及び球団の新型コロナウイルス対策の徹底ぶりを紹介、安心してプレーできる喜びを語っている。

 なお、二軍の選手数名が、感染が確認された国軍の軍艦の乗組員が立ち寄ったショッピングモールで同日に食事をとったことが判明した際には、所属球団は直ちにこれらの選手を個室に移し、自主的に健康状態を管理させた。

 台湾では4月中旬、新規感染者が約40日ぶりに0人となり、国内感染者も減少傾向がみられるようになった。4月下旬から5月初旬にかけては6日間連続で新規感染者が0人となったほか、5日時点で国内での感染者は、23日連続でゼロが続いている。

 こうしたなか、中央感染症指揮センターは4月30日、防疫対策を維持しながら、市民の屋外活動参加を緩和していく方針を示した。さらに3日には、台湾プロ野球側から、観客の入場に関する計画書が提出されていることを明らかにした。

 台湾プロ野球の呉志揚・コミッショナーは、こうした計画書について、感染リスクの低下を受けてから検討を始めたのではなく、「先手、先手」で準備を行ってきたと強調、スポーツ行政を管轄する教育部体育署や、各球団とも話し合いを重ねてきたと説明した。このような政府、台湾プロ野球、各球団の長期間の取り組み、準備があり、台湾プロ野球は今、観客入場解禁という、新たな段階に進むことになったのである。

海外での注目UP、ツイッター中継は、1週間で延べ700万人視聴  

 台湾プロ野球では、海外へのプロモーション、そして、野球に飢えた世界の野球ファンに力を与えようと、開幕直後から、楽天モンキーズの主催ゲームを皮切りに日本市場、そして主に北米市場をターゲットに英語による実況中継をスタートさせた。5日からは中信兄弟も主催ゲームで英語中継を開始、これで一軍4チームが出揃うこととなる。

 各種の中継プラットフォームのうち、先週「Eleven Sports」が中継を担当したツイッター中継8試合の総視聴者数は、延べ700万人を突破した。

 もともと激しい打撃戦が多いことで知られる台湾プロ野球だが、今季は開幕30試合のホームラン数は85本とリーグ記録を更新、中でも朱育賢(楽天)は開幕からわずか13試合出場で10号HRを達成、従来のリーグ記録20試合を大きく上回るハイペースでホームランを量産し、世界のファンに強烈なインパクトを与えている。

 

朱育賢選手(楽天)写真提供:CPBL

朱育賢選手(楽天)写真提供:CPBL

 アメリカでは、MLBとのレベルの違いや、毎試合3時間以上かかる試合時間の長さが議論になっているというが、アメリカの野球ライター、Bill Thompson氏は、こうした声に対し、「台湾プロ野球は、もともと台湾のファンのものだ。皆さんも、きっと異なる楽しみ方をみつけることができるはずだ」と指摘している。

 プレー以外でも、ホームランを打った選手を出迎える各チームのベンチでのダンスパフォーマンスや、キュートなチアガール、多芸な応援団(楽天はマネキン、ロボットまで登場)、コミカルなマスコットなども話題となっている。時差の関係で、試合が朝となるアメリカ本土では、ツイッターに「#breakfastbaseball」というタグが出現するなど、多くの野球ファンが、台湾プロ野球に魅力を感じているようだ。

 日本においても、イレブンスポーツ、楽天TVによる中継のほか、台湾プロ野球と一部メディアとのタイアップ企画が実現するなど、メディアにおける台湾プロ野球の露出は急激に増えている。国際社会における、その複雑な立場もあり、世界での注目度、存在感を重視する人が多い台湾では、こうした海外での報道が、国内で紹介されることも多く、現状を誇らしく感じている人も少なくない。

 観客入場の解禁に踏み切った台湾プロ野球、当初予定されていたシーズンチケット購入者のみではなく、一般のファンを含む1000人という数への引き上げには、驚きを覚える。

 世界が注目する中、今後はより細心の注意を払いながらの試合開催が求められるが、台湾プロ野球が世界に先駆けこの取り組みを成功させることで、野球ファンに希望を与え、また、世界各国のプロスポーツにモデルケースを示すことを期待したい。

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