申告敬遠導入の影響は? パ・リーグでは導入前後2シーズンで故意四球数が約2倍に

2020-05-30 16:00 「パ・リーグ インサイト」成田康史

 2017年、野球というスポーツにおいて大切な要素の1つに大きな変化が起こった。ピンチの場面など、打者との勝負を避けたいときにあえて四球を与える「敬遠」について、アメリカ・メジャーリーグで審判にその旨を告げるだけで敬遠が成立する「申告敬遠」の制度が施行された。

 この革新的な制度は、翌年海を渡って日本でも導入されることとなった。当初は賛否両論が展開されたが、2年を経て、プレーする選手たち、そして観戦するファンも徐々にこのルールに慣れてきているだろう。

 申告敬遠の主な目的は、試合時間の短縮という点にある。投手、捕手間でのボールの受け渡しがなくなることで、試合の展開を速める効果が見込まれた。一方で、敬遠の方法が変わっただけにも関わらず、ここ2年の記録を見るとその数にも変化が表れている。

 そこで今回はこの「申告敬遠」に注目し、導入以前の2年間(2016年、2017年)と導入後の2年間(2018年、2019年)を比較し、チームごと、選手ごとに敬遠数の変化を見ていきたい。なお、今回は敬遠数としてNPBの記録にある「故意四球」の数を参照する。

パ・リーグ全体では「申告敬遠」導入後に故意四球数が約2倍に増加

 まずはパ・リーグ全体の数字の変化を見ていく。2016年、2017年は61個、47個と1チーム平均で8~10個といった数字となっている。これに対して、申告敬遠導入後の2年間は129個、107個、チーム平均で18~20個とほぼ倍を記録。新ルール導入により、リーグ全体で故意四球の数が増加した。

 続いてはチームごとの数字を比較。申告敬遠の導入を境とした2017年、2018年の間では埼玉西武を除く5球団が倍以上の増加となった。どのチームもルールの変更によって敬遠の数が大きく変化している。

 このうち千葉ロッテと楽天は、2018年から新監督が就任(楽天はシーズン途中で交代)したことが影響している可能性もあるが、福岡ソフトバンク、そして北海道日本ハムはこの期間に工藤公康監督、栗山英樹監督が続けて采配をとっており、オリックスの福良淳一前監督もルール変更時に継続して監督を務めた。この3チームの増加は申告敬遠と無関係ではなさそうだ。

 2019年は、リーグ連覇を達成した埼玉西武も敬遠数が増加し、6球団での合計は2年連続で100個を超えた。今季はシーズン延期によって143試合行うことは難しくなったが、この傾向はどのように変化するだろうか。

投手の個人成績から読み取れる「申告敬遠」ブーム

 続いて投手の個人成績から敬遠数の推移を見ていく。まず先発投手から確認すると、2016年は「規定投球回に到達した上で2個以上の故意四球を与えた投手」が元千葉ロッテのスタンリッジ氏のみ。翌年も岸孝之投手、二木康太投手の2名だったのに対し、申告敬遠の導入された2018年は涌井秀章投手(当時・千葉ロッテ)の4つ、岸孝之投手の3つを筆頭に5人が2個以上の故意四球を記録していた。

 規定投球回に達した投手の平均でも、導入前の2年間が0.6個、0.7個と推移していたのに対し、2018年は1.9個と大幅に増加。球界全体での申告敬遠ブームがこの数字にも表れていた。しかし、去年は規定投球回に達した投手が6人と過去4年で最小だったこともあって、敬遠の数は1人あたり0.3個と大きく減少。その数字を大きく減らしたが、先述したようにリーグ全体としての敬遠数は変わっておらず、徐々にその用いられ方が変化していると考えられる。

 次に中継ぎ投手の成績を見ていこう。最初に過去4年間、シーズンでのセーブ数上位5名の故意四球数を確認すると、2016年はサファテ投手が1つ、増田達至投手が5つ、2017年は増田達至投手が2つ、増井浩俊投手が2つ、その他の投手は0となっている一方、18年、19年は上位5名にすべて故意四球が記録されている。

 楽天・松井裕樹投手を例にとると、2016年、2017年は故意四球が0だったのに対し、申告敬遠の導入以降は2018年に2個、2019年にも同様に2つの故意四球を記録しており、より作戦として選択されやすくなったことが伺える。

 ホールドの上位でも同様の傾向が見られる。2017年は上位5投手で故意四球を与えたのがシュリッター投手(元・埼玉西武)の1つのみであったなか、2018年は一転して加治屋蓮投手の5個、宮西尚生投手の3個を筆頭に全員が故意四球を記録している。昨季は宮西投手が0個となったものの、埼玉西武・平井克典投手が3個を記録するなど、引き続き申告敬遠が多い傾向は変わらなかった。

 先述した内容と重ねると、申告敬遠導入当初は、先発・中継ぎを問わず活用されていたが、徐々に試合後半の緊迫した局面で使われる戦法へシフトしていると考えられる。

2シーズンを経て運用が確立されつつある「申告敬遠」

 2018年の申告敬遠導入によって、故意四球、つまり敬遠の数は大きく増加している。また、試合終盤の勝負どころで用いられるケースが増え、中継ぎ投手に記録されることが多くなってきた。導入1年目の2018年から2019年にかけて数が減少しているのは、各チームがその運用方法を明確にしつつあると考えられそうだ。

 日本球界では過去、「4球のボール球を投げる」というプレーから、敬遠球を捉えてのサヨナラ安打など多くのドラマが生まれてきた。敬遠のルールが大きな転換点を迎えてから2年が経過した今季、「申告敬遠」はどのような傾向となるか注目だ。

文・成田康史

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