鷹・武田翔太が見つけた“新境地” 脆さを克服させる「中庸」とは一体なに?

2020-09-01 17:34 「Full-Count」福谷佑介
福岡ソフトバンク・武田翔太※写真提供:Full-Count(写真:藤浦一都)

福岡ソフトバンク・武田翔太※写真提供:Full-Count(写真:藤浦一都)

右肘手術を乗り越え、8月28日の北海道日本ハム戦で約1年ぶりの白星

 8月28日、PayPayドームで行われた北海道日本ハム戦。この日、今季初めて1軍の先発マウンドに上がって勝利投手となったのが、福岡ソフトバンクの武田翔太投手だった。右肘の手術を乗り越え、昨年9月1日の埼玉西武戦以来、約1年ぶりの白星を手にした。

「緊張していましたし、地に足がついていない感じでした。気持ち的に浮いていたなと思いますね」。その立ち上がり。いきなり先頭の大田に中前安打を許すと、三塁まで進め、中田に右前適時打を浴びた。いきなり1点を先制されてしまった。

 だが、その裏、味方打線が一気に5得点。グラシアルの適時二塁打、栗原の2ランなどで瞬く間に試合がひっくり返った。続く2回にも柳田の2ランが飛び出して、先制されたのも一転、武田は大きな援護を受けた。右腕も2回以降は立て直し、2、4、6、7回と先頭打者を出塁させながらも無失点に抑えた。

 7回を投げて5安打無失点。当初は前日27日の2軍戦で先発する予定だったが、東浜が首の張りを訴えたため、急遽、1日あとの1軍戦での先発に決まった。開幕投手の登板回避で巡ってきたチャンスを見事に一発回答でモノにした。

昨季までは脆さのあった武田だが、今は「どれだけ気にならない、気にしないか」

 この日の武田はテーマ「中庸(ちゅうよう)」を掲げ、試合後の取材でも何度もこの言葉を繰り返した。「中庸」とは「儒教」において徳の概念を表す言葉。かたよることなく常に変わらないこと、過不足がなく調和がとれていること、などを意味する。今季の武田はこの「中庸」をテーマにプレーしているという。

 昨季までの武田といえば、ハマれば手がつけられないほどの好投を見せる一方で、ひとたび崩れ出すと歯止めがきかないことが多く見られた。崩れる時の多くはフォームに意識が向きすぎ、打者と勝負する土俵に上がれていない印象が拭えなかった。

 その武田は登板後に「今はどれだけ気にならない、気にしないか。ラインのイメージだけは出しますけど、それだけです。調子がいい時って何も考えない。フォームとか肘の痛みに意識がいった時点でもうおかしくなっている、上がっている。それも含めての“中庸“です」と語る。どこかに意識が偏ることなく、常に調和が取れている状態でいること。導き出したのが、この“中庸”だったという。

 昨年の11月半ば、右肘の遊離軟骨除去手術を受けた。6月に実戦復帰を果たしたものの、なかなか結果はついてこなかった。そこで武田は考えた。

己を見つめ直した2軍生活「そういうボールを投げさせているのは脳」

「手術が終わっても、最初の頃に打たれていた。何にも変わってないな、自分が怪我のせいにして逃げていただけだな、と。怪我のせいじゃないって考えて、フォームかなと思ってフォームを色々いじくったけど、これも違うなと。過去のいいイメージだけを追い続けて、永遠のループになっていた」

「フォームじゃない、球がどうとかじゃない、間合いがどうとかじゃない。それならば、そういうボールを投げさせているのはどこか。頭、脳なので脳を変えようと思って、色々と勉強しました。一皮、二皮剥けた感じですね」

 高卒1年目でいきなり8勝をマークし、2015年と2016年には2年連続で2桁勝利をあげた武田。本来ならば、福岡ソフトバンクのローテを担っていなければならない男のはずだ。怪我を乗り越え、己を見つめ直して、辿り着いた“新境地”。復活を果たした武田翔太は、これまでとは一味も二味も違う。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)