ミスターファイターズ・田中幸雄さんに聞く! 北海道日本ハムファイターズの現在地〜ファーム編〜

2020-09-21 10:00 「パ・リーグ インサイト」吉田貴

 選手時代は北海道日本ハム一筋22年、2007年には生え抜き選手史上2人目となる通算2000安打の偉業を達成した「ミスターファイターズ」田中幸雄さん。

 選手としてだけでなく、現役を退いた後には北海道日本ハムの一軍コーチ、ファームの監督をなどを歴任したレジェンドの中のレジェンドだ。現在は一軍、ファームの解説を務めており、試合を通してその声を聞いているファンも多いだろう。そんな田中さんに、北海道日本ハムの選手について話を聞いた。前半はファームの話題を中心にお送りする。


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ファームで大活躍中の樋口龍之介の強みと「将来像」はいかに

 北海道日本ハムのファームを語るにあたって、間違いなく筆頭に上がるのはルーキー・樋口龍之介選手だろう。育成選手ながらも取材時点(8月8日試合終了時点)で打率.381出塁率.495、7本塁打と圧倒的な成績を残している。田中さんは、「現時点でも非常に数字が出ている」と高評価。身長が168cmとプロ野球選手としてはやや小柄ながらも、長打を連発しているのが特に印象的だ。

「解説などでファームの試合を見ていますが、横幅はガッチリしていて、遠目に見ていても大きく見える選手です。小柄ですけどスイングもしっかり振り切れていて、強くて速い。まず一番素晴らしいと思うのが、ボールにコンタクトする能力が非常に高いところですね」

 小柄でコンタクト力に優れた選手となると、まず思い浮かぶのはチームメイトであり、横浜高校の1年先輩でもある近藤健介選手だろう。その他にも森友哉選手(埼玉西武)や吉田正尚選手(オリックス)など、体格を感じさせない打撃を見せる選手が増えつつある。こうした選手に共通しているのも「コンタクト力」だ。

「コンタクト力は一番大事ですよね。形がきれいでもバットに当たらなければ意味がないですしね。その中で結果をしっかり出している、数字を出しているというのは素晴らしいと思います」

 気になるのは樋口選手の将来像。本人は先輩の近藤選手を目標に掲げる場面もある一方で、田中さんが挙げたのはかつてのチームメイトだ。

「左打者ですが、小笠原道大はあれだけ打って、打点も挙げられるというバッターでしたね。近藤はどちらかというと率が高いバッターですから、(樋口選手には)長打力もあってホームランも打てる、パワー系の打者になってもらえたら」

 小笠原道大さんは今季から北海道日本ハムの一軍ヘッドコーチ兼打撃コーチに就任している。育成選手の樋口選手が支配下登録され、一軍昇格を果たした暁にはその指導を受ける機会があるかもしれない。

一軍昇格に必要なのな何よりも「コントロール」

 話題は投手陣へ。北海道日本ハムのファームには、昨季のドラフト1位右腕・吉田輝星投手を筆頭に、社会人で実績のある生田目翼投手など期待の投手が並ぶ。そんな中で、田中さんが指摘したのは「コントロールの重要性」だ。

「生田目はスピードがあるのが魅力です。ただやはり、打者と1対1で対戦するとなると、制球力が重要ですね。一軍の打者になると、甘いところに投げたら速い球でも打たれる。打者との駆け引きだったり、配球だったり、失投を少なくして良いボールを良いところに投げられる、そうした能力を上げていくしかない」

 一軍の第一線で活躍する投手は四球が少ない。実際、エースである有原航平投手が昨季与えた四球は164.1回で40個。9イニングでわずか2つという計算になる。今後、ファームから昇格する投手の成績を見る際には、与四球にも注目していく必要があるだろう。

「コントロールは投手全員に重要と言えます。やはり、良いコースに投げられる確率を上げていく、甘いボールを少なくする。もちろんカウントによって打者を見て、打ち気などからも判断する、そういった技を身につけたほうが良いと思います」

 もちろん、全てのボールを狙ったコースに制球できる投手はいない。打者との駆け引きとなるとサインを出す捕手も関係してくる。ただ、田中さんの指摘する通り、実際に打者と勝負するのは投手だ。変化球や球速だけでなく、相手打者を含めたさまざまな状況判断能力が求められる。

北海道日本ハムファイターズ・生田目翼投手(C)H.N.F.

北海道日本ハムファイターズ・生田目翼投手(C)H.N.F.

浅間大基は「一軍レギュラー候補」の実力者

 ファームは若手だけではなく一軍の主力選手が調整を行う場でもある。話題に上がったのは王柏融選手と、浅間大基選手の2人だ。王選手はファームでの出場試合数は少なかったものの、取材時点で打率は7割超と圧倒的な成績を残していた。ただ、一軍の成績とファームの成績は分けて考えることも大切だという。

「一流投手と比べると、ファームの投手の方が球速、コントロールなどは劣ります。王選手は能力が高い選手ですから、こうした投手に対してなら当然打つでしょう。ただ、今の状態であれば十分一軍でも戦力になると思いますね」

 浅間選手は2014年のドラフト3位で入団。田中さんがファーム監督に就任したのは2015年シーズンからであり、そのルーキーイヤーから見守ってきた選手だ。そんな浅間選手の魅力は「野球に対する隙のなさ」であるという。

「一軍のレギュラーをつかんでもおかしくない選手。走攻守全てがすごく堅実で、やるべきことがしっかりできる。今は一軍に近藤健介と西川遥輝と大田泰示がいるじゃないですか。そこに入っていく候補かなと思いますね。試合に出る機会を与えてもらえたら、十分レギュラーになれる素質のある選手です」

 その評価通り、浅間選手はファーム22試合に出場、打率.328、9盗塁の好成績を残し、8月12日に一軍昇格の切符をつかんでいる。昨季は故障にも苦しんだが、ここからの巻き返しに大きな期待が寄せられる選手だ。

一軍に選手を送り出す。「ファーム監督」の役割

 ファームで活躍した選手についてはファンの間でも話題に上がるが、その首脳陣については話題に上がりにくい。そこで「ファーム監督」の仕事について話を聞いた。

「ファームの場合は育成環境というものがあるので、選手の起用法などは一軍と全部違いますよね。一軍はある程度レギュラーが決まっていて、その選手主体で勝つためにやりますが、ファームの場合は各選手を一軍に送り込むためにその選手の能力を、技術力を伸ばしてあげるために試合を経験させて、一軍に向けて準備させていくという場所だと思います」

 勝利が最優先事項となる一軍に対して、ファームで重要になってくるのは「成長」と「機会」そして「結果」だ。浅間選手のように、結果を残し続けることで一軍昇格のチャンスは必ずやってくる。ファーム監督としてそうした選手を送り出す際の期待は、ファン以上のものがある。

「とにかく…… とにかく与えられたチャンスを生かして結果を出してほしい。ハラハラドキドキじゃないですが、頑張ってほしいという気持ちがありますよね。

 それで結果を残してくれると本当にうれしいです。もちろん内容も大事ですが、やはり一軍に上がると、どうしても結果が求められます。フルに自分の持っているものを一軍で出せて、結果を出してもらえたらうれしいです」

 最後に、ファームの現場を知る田中さんにとって『ファームの魅力』とは何かを聞いた。

「それは鎌ケ谷にきているファンの方が知っていると思います(笑)。やっぱり、ファーム本拠地の鎌ケ谷でも多くのファンの方が来て、よく顔を見かける人もいます。新しい選手も入ってきて、その選手の成長を見届けるというか、一軍に上がるまでの成長を見るのが楽しいという方も多いですね」

 北海道日本ハムの本拠地であるファイターズ鎌ケ谷スタジアムはマスコットの「カビー」を中心に、ファームオリジナルグッズなどさまざまなコンテンツを発信している。一軍とはまた違った楽しみ方を見つけられるかもしれない。


 後半の内容は、現在の北海道日本ハムの一軍について。一軍、ファームともにコーチ経験がある田中さんが携わった選手の中には、現在の北海道日本ハムの核となる選手がズラリと並ぶ。成長した選手たちを、田中さんはどのように見ているのか。

取材・文 吉田貴

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