埼玉西武ライオンズがCiscoと歩む、スマートスタジアムへの道 「Cisco Super Series」レポート

2020-10-12 13:30 「パ・リーグ インサイト」編集部

 広告やニュースが表示されているディスプレイ。突如映像が切り替わると、そこに選手が現れて、ファンと試合前の束の間の会話を楽しむーーそんな日も近いかもしれない。

 西武ライオンズでは、「メットライフドームエリアの改修計画」の“スマートスタジアム化の加速”の一環として、ファンに新たなスポーツの楽しみ方を提供するべく、ITを活用したスマートスタジアム化の取り組みを進めている。海外のスタジアムで豊富な実績をもつシスコシステムズ合同会社とのパートナーシップにより、メットライフドーム内外で利用できるFree Wi-Fiサービス「Lions Wi-Fi」を提供しているほか、改修工事が完了する2021年3月までに高速通信ネットワークの整備を進め、合計約290台のデジタルサイネージ(Cisco Vision)を新たに設置する予定だ(現在までにチケットセンターなどに約73台を設置)。

 すでに試合映像を場内のサイネージにリアルタイムで配信しているが、来シーズンからはデジタルならではのダイナミックな映像表現や音響設備などと連動した演出によって、球場のどこにいても試合の臨場感が味わえ、非日常を体感できるボールパークとなる。

チケットセンターのデジタルサイネージ。

チケットセンターのデジタルサイネージ。

 9月22日〜24日に行われた「Cisco Super Series」は、その“改革”を垣間見ることができる機会となった。

 DAZNデッキなどで行われていたのは、ファンと選手のコミュニケーションの新しいかたち。新型コロナウイルスの影響で選手と直接触れ合うイベントが実施できないなか、「Cisco Webex Board」のデジタルホワイトボード機能を活用し、オンラインで試合前の選手と会話やメッセージでコミュニケーションをはかった。この日「Cisco Webex Board」にファンがメッセージを寄せていたが、実はそのメッセージや書いているファンの様子はロッカールーム付近に設置されたもう1台の「Cisco Webex Board」にもリアルタイムで反映されており、選手はロッカールームとベンチ裏を行き来するたびに、その応援メッセージが目に入る仕組みだ。

 そのうち、ファン側のメッセージボードが突然ビデオ会議のディスプレイに切り替わると、そこには微笑む選手が。ファンは試合直前の選手たちと短い会話を楽しんだ。西武ライオンズ広報によると、足を止めてメッセージを眺めている選手も多いとのことだ。

家族と応援に来ていた10代の男性は、メッセージを描いている途中に突然始まったニール投手とのグリーティングに参加。「まさかニール投手としゃべれるとは思わなくてびっくりしました。テレビで見たそのままの優しい人柄が画面越しでも伝わってきました」と興奮が隠しきれない様子。

家族と応援に来ていた10代の男性は、メッセージを描いている途中に突然始まったニール投手とのグリーティングに参加。「まさかニール投手としゃべれるとは思わなくてびっくりしました。テレビで見たそのままの優しい人柄が画面越しでも伝わってきました」と興奮が隠しきれない様子。

 さらに、メットライフドーム外野の大型ビジョン(Lビジョン)と同様の映像演出を、球場内のデジタルサイネージ73台と池袋駅の55インチ16面マルチの「池袋駅マルチビジョン」でも同時に放映する実証実験も実施。試合中継の放映実験も同時に行い、駅利用者も少し足を止め試合のゆくえを見守った。

池袋駅マルチビジョンの実証実験。

池袋駅マルチビジョンの実証実験。

 このような改革が進んだ背景には、間違いなく新型コロナウイルスの影響もあるが、スタジアムのスマート化に投資し、これまでにない野球観戦の体験を模索し、新たな価値として露出していこうというアグレッシブな球団の動きもある。

 2019年にトレーニングセンターと若獅子寮、グッズショップの改修を終え、今季はファーム球場である「CAR3219(カーミニーク)フィールド」のリニューアルや、「グリーンフォレスト デリ&カフェ」のオープンなど、着々とハード面の改修が進んでいる。さらに、ソフト面でのコンテンツの充実化を図っていくことで、今回の実証実験のような、デジタルやオンラインを活用したファン向けのプレミアムな企画が加速しそうだ。

 今季チームスローガン「Leolution!」はまさに球場内外で行われているのだ。


文・海老原 悠

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