「どこに、何を投げても打たれる」恐怖。データに示された、吉田正尚の類稀なるスケールの大きさとは

2020-10-20 16:30 「パ・リーグ インサイト」望月遼太

 続けて、今季の吉田正選手が残してきたコース別の打率を見ていこう。ボールコースも含めて各エリアを25分割したゾーンの中で、今季の吉田正選手が結果球(ラストボール)となった球に対して残してきた打率は、下記の通りだ。

 このように、内角および四隅のボールゾーンを除く場所であれば、ほぼ全てのコースで一定以上の数字を残していることがわかる。辛うじて真ん中から低めのアウトコースが苦手と言えなくもないが、それでも「4回に1回は打たれる」というレベルであり、外角高めや、さらに遠いボールゾーンに行けば3割以上の確率で打ち返されることを考えても、外角を攻めれば安全とはとても言い難いだろう。

 また、内角以外のボール球は高低を問わずほぼ3割以上の数字を記録しており、通常であればバットが届きにくいであろう外角のボール球に対しても優れた数字を残している。すなわち、「高めの釣り球」、「低めに落ちる球」、「アウトコースに外す球」といった、本来リスクの低い配球に対してもヒットというかたちで対応してくるということだ。

 ストライクゾーンの球ならそのほとんどが痛打され、かといってボールゾーンで安易に様子を見ることも許されない。そのうえ、先述した通りに吉田正選手は抜群の選球眼まで兼ね備えているのだからたまらない。吉田正選手と対戦するバッテリーが往々にして苦しい投球を強いられているように映るのは、なにも強打者としてのイメージだけが理由ではないのだ。

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 次に、吉田正選手が今季記録してきた、球種別の打率についても見ていきたい。

 コース別の打率と同様、球種別の打率という点でも大きな穴が見当たらないという結果に。この中でもっとも打率が低いのはスライダーだが、それでも打率.279と決して低くはない数字にとどまっている。チェンジアップとカーブに対してかなり優れた数字を記録していることからも、タイミングを外して打ち取るという策が易々と通用する打者ではないことが読み取れる。

 それに加えて、ストレート、シュート、カットボール、シンカー・ツーシームといった、速い球に対しても十二分に高い打率を残しており、緩急どちらに対しても苦もなく打ち返している。さらに、多くの投手にとって決め球となりうるフォークに対しても.400を超える打率を記録しており、低めのボール球を得意としていた先ほどのデータと照らし合わせても、追い込まれてから決めに来る球を安打にできる対応力の高さが感じられるところだ。

 打球方向に目を向けると、右への引っ張りが30本、センターへの安打が38本、左方向への流し打ちが21本、右中間6本と左中間5本と特定の方向に大きく偏ることなく、ある程度まんべんなく打ち分けていた。その一方で、今季記録した12本の本塁打は右方向が多く、安打と本塁打で打球方向に差異が見受けられるのも興味深いところだ。

手術によりケガを克服して以降、2年連続で全試合に出場

 以上のように、打撃面で極めて優れた才能を有している吉田正選手だが、プロ初年度の2016年は63試合、2年目の2017年は64試合と、それぞれ出場試合数がシーズン全体の半分以下にとどまっていた。豪快なフルスイングの代償として腰にかかる負担も大きく、故障によって年間を通じて一軍に帯同できない時期が続いていたのだ。

 この課題を解消するべく、吉田正選手は2017年のオフに腰つい椎間板ヘルニアの摘出手術を受けた。この判断は奏功し、2018年から2シーズン連続でシーズン全試合出場を達成。現在も継続中の連続試合出場は既に300試合を超えており、故障によって本来の実力を発揮しきれなかった時期を、完全に過去のものとしつつある。

今なお進化を続けている、底知れないスケールを誇る大器

 以上のように、一目見てわかる強いスイングという見た目のインパクトに加え、数字や指標の面でも非常に優れた数字を記録しているのが吉田正選手の特徴だ。それに加えて、年々増加している本塁打数や、ひときわ高い今季の打率を見てもわかる通り、今なお進化を続けている途中という底知れないスケールの大きさも、吉田正選手の魅力をより一層引き立てている。

 名実ともにパ・リーグを代表する強打者の一人となった吉田正選手は、さらなる活躍の気配をうかがわせる今季、イチロー氏以来となるオリックス生え抜き選手としての首位打者獲得を果たし、自身初となる主要打撃タイトル獲得を成し遂げられるか。鍛え抜かれた身体から生み出される迫力満点のひと振りに、今後のオリックスの命運が託されていると表現しても、決して過言ではないことだろう。

文・望月遼太

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