甲斐拓也が“巨人封じ”の真実を独占激白。キーマンに定めた岡本和真の崩し方

2020-11-26 14:24 「Full-Count」福谷佑介
福岡ソフトバンク・甲斐拓也※写真提供:Full-Count(写真:藤浦一都)

福岡ソフトバンク・甲斐拓也※写真提供:Full-Count(写真:藤浦一都)

Full-Countの独占インタビューで巨人封じの真相を明かす

 25日にPayPayドームで行われた「SMBC日本シリーズ2020」第4戦。福岡ソフトバンクが巨人を4-1で下して、史上初となる2年連続の4連勝で4年連続日本一を決めた。この4試合全てでマスクを被り、投手陣をリードしたのが甲斐拓也捕手。2本塁打も放って攻守でチームを牽引した甲斐がFull-Countの独占インタビューに応じ、このシリーズで、いかにして巨人打線を封じたか、その真実を明かした。

 日本シリーズが始まる数日前に「繋がりを持ってやることが大事。初戦、1試合目が大事になる試合だと思うので準備、対策をしていきます」と語っていた甲斐。では、果たして、具体的にどんなプランを持って初戦に臨んだのか。

「今年は交流戦がなかったですけど、去年の日本シリーズとの繋がりもあるな、と思っていました。去年の戦い方と、今年はどうなのかという部分を合わせていく必要があるなと。あと、日本シリーズが始まるにあたって、僕らはCSがあったけど、ジャイアンツは間が空いていた。試合はあったけど、それが全てなのかと言えばそうではなかった。シーズン最後の試合で打者がこう振ってくるから、そのままシリーズでも振ってくるではなくて、どうやって入ってくるかを見る必要があるなと思っていました」

 新型コロナウイルスの影響で開幕が遅れた今シーズン。例年ある交流戦は中止となり、真剣勝負の場で巨人と顔を合わせるのは昨季の日本シリーズ以来だった。徹底した封じ込めに成功した昨年からの“繋がり”。そこもポイントだった。また、CSのあった福岡ソフトバンクに対し、巨人はCSがなく試合間隔が空いていた。その影響があるのか、も見極めるべきところだった。

「向こうがどう入ってくるか分からない、と千賀にも正直に言いました。ミーティングで話すことと違うことが起きるかもしれない。お互いが見えることが1番大事になってくる。2打席見ることで見えることがたくさんある。お互いで見る必要がある、と話していました。その中でも『こうしていくよ』というプランは立てた上で初戦に入りました」

岡本和真をキーマンに定めインコース攻めで崩しにかかった第1戦

 こうして迎えた第1戦。甲斐と千賀のバッテリーは、巨人打線で封じ込めるべきシリーズのキーマンを4番の「岡本和真」に定めた。今年、本塁打王と打点王の2冠王に輝いた巨人の主砲。かつ、クリーンアップで坂本勇人と丸佳浩の間に挟まる4番。まずは、この3、4、5番を分断することで巨人打線の破壊力を削ぐことを考えた。

「岡本というところがポイントになると思っていたので、千賀にも『いくよ』と。もちろん状況、シチュエーションによっても変わるので『こういう状況だったらこう』という所まで話をしていました。こっちが千賀に伝えることで不安なく投げられるだろうと思って伝えていました」

 重要な初戦、初回2死一塁で迎えた岡本の第1打席。初球の甲斐の要求はインコースへの真っ直ぐだった。これに千賀が応える。154キロを狙い通りにインコースへ投げ込むと、岡本のバットは真っ二つに折れた。力ない飛球が舞い上がり、捕邪飛に打ち取った。インパクト十分のボール。この1球が岡本の脳裏に深く焼き付いたことは想像に難しくない。

 第2打席もストレートで徹底した内角攻めにした。結果的にはフォークを見極められて四球を与えたものの、甲斐は「あれは僕としてはOKだと思っていました」という。この打席、岡本は初球の153キロをはじめ、内角のボールに次々と手を出してきた。ことごとくファールとなったが、これこそが脳裏に“内角”が刻み込まれている証。これを察知できたことはこの打席の大きな収穫だった。

「インサイドにいったときに、だいぶ振ってきてくれているなと感じました。それが2打席目で見えた」

 3打席目は前の2打席と一転して、外のカットボールを中心に攻めた。3球目のカットボール。このボールに岡本のバットが空を切った。この時、甲斐は岡本の“変化”を見逃さなかった。「左膝が開くのが早い」。岡本がインコースを意識するあまり、打撃が崩れたことを表していた。最後は内角の真っ直ぐで詰まらせて一飛。“岡本封じ”の土台が出来上がった。

第1戦で染み込ませたインコースへの意識、第2戦は「十分だな」

 石川柊太が先発マウンドに上がった第2戦、甲斐は無安打に抑えた第1戦とは一転して、岡本のアウトコース中心にリードした。石川の武器であるカットボールやパワーカーブで外を攻めた。第1打席は外のカットボールで空振り三振。第2打席の初球、外に構えたストレートが抜けて内角への逆球になった。これを岡本はファウルにした。狙いとは違うボールだったが、このファウルから感じるところがあった。

「内に抜けたファウルがあったんですが、そこを振った時に、これはインコースにいくところじゃないと思った。十分だな、と」。岡本の頭の中にはインコースが嫌というほど染み付いている。そうなれば、外のボールには踏み込んで来られない。無理に内角を攻める必要はなかった。

 2勝0敗と絶好のスタートを切り、舞台を本拠地PayPayドームに移した第3戦。甲斐はまた新たに仕掛ける。

「1日、間が空くし、投手もムーアになる。左投手になるんで、リセットされるなと思っていました。僕の考えでは千賀と石川さんで1つ、ムーアと和田さんで1つ、だと思っていた。また3戦目から始まると。ムーアは右打者のインコースのボール力があるし、強い球を投げられる」

 2死二塁で迎えた第1打席は1球目、2球目とインコースへ。最後は154キロで差し込み、遊ゴロに打ち取った。4回の第2打席でも内角を中心に攻め、最後はナックルカーブで空振り三振に。7回の第3打席はそこまでの内角攻めを生かすように、最後は外のチェンジアップで泳がせて二ゴロ。甲斐と千賀、石川、ムーアの福岡ソフトバンクバッテリーは完璧に巨人の主砲を翻弄した。

 第4戦になっても岡本のバットは湿ったまま。初回に4試合目で初めて巨人が先制し、なおも1死二塁で打席に立ったが、あえなく空振り三振。続く第2打席も空振り三振に倒れ、結局、この日も3打数無安打1四球。4試合を通じて13打数1安打、打率.077に終わった。主砲が眠った巨人打線はシリーズ史上最少の16安打、最少タイの4得点。甲斐の“岡本封じ”が福岡ソフトバンクの4年連続日本一を支えていた。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)