なぜ周東佑京は速いのか? 元巨人・鈴木尚広氏が分析する6つのポイント

2020-11-30 14:58 「Full-Count」編集部
福岡ソフトバンク・周東佑京※写真提供:Full-Count(写真:荒川祐史)

福岡ソフトバンク・周東佑京※写真提供:Full-Count(写真:荒川祐史)

巨人で通算228盗塁をマークし、走塁の神として原野球を支えた鈴木氏

 4年連続日本一を飾った福岡ソフトバンクの周東佑京内野手は、今季50盗塁を決めて育成ドラフト出身初の盗塁王を獲得した。開幕当初はベンチスタートだったが、10月はほぼ1番打者に定着。13試合連続盗塁の世界記録を樹立した。では、パ・リーグ盗塁王はどこが優れていたのか? 巨人の走塁のスペシャリストとして活躍した鈴木尚広氏にポイントを分析してもらった。走塁を突き詰めてきた男だから見て取れたものとは……。

 現役時代、その足を武器に巨人で20年間、プレーした鈴木氏。現役の晩年、試合の終盤、勝負所で代走で出場すると場内の空気は一変した。足で1点をもぎ取り、制したことも多かった。周東とは置かれている状況は違うが、盗塁に研究と練習を重ねて、走ることへの奥深さを知ることは同じだ。

(1)1歩目のリアクションが小さい
「周東選手の1歩目、よく見てください。動き出しが本当に小さくて、速い。これは右股関節に重心が乗り、始動できているからです。僕の場合は軸を大事にして立っていた。片方に傾きすぎるとスタートが合わなかったので真ん中で立つようにしていました。周東選手は右なので、次への動きが少なく、小さいんです。動きが小さいと捕手も打者が左打席にいると走ったことに気付きづらいと思います」

(2)方向転換と加速が瞬時にできる
「2歩目か3歩目でトップスピードに乗っていますよね。映像を見ると、その2歩、3歩で砂煙が舞っているときもあります。走者としては0歩(ゼロ)で加速したいくらいの気持ちでいます。自分も3歩目でトップに乗ることが勝負だと、心がけて練習してきました。そのポイントは足裏の接地にあると思います。足裏の使い方は(4)で分析します」

(3)二塁まで最短、真っ直ぐ進むことができている
「これが簡単そうに見えて、なかなか難しい技術です。プロでも多少膨らんで走ってしまう。周東選手は自分の走るラインのイメージができている。指導者の方がコーチングする時は、線を書いてあげるのがいいと思います。それくらい、はっきり見えていないと難しいものをイメージ通りに走れている。体がイメージ通り、動かせているというのも大きい」

巨人で活躍した鈴木尚広氏※写真提供:Full-Count(写真:荒川祐史)

巨人で活躍した鈴木尚広氏※写真提供:Full-Count(写真:荒川祐史)

地面を蹴るという感覚が「もしかしたら持っていないかもしれない」

(4)足裏全体で地面を踏んでいる
「後ろ(一塁コーチャーの視点)から見ていないので、正確かは分かりませんが、おそらく、足は地面と垂直につけることを心がけているのではないかと思います。なので走る姿もキレイ。よく『地面を蹴る』と言いますが、周東選手の場合は『蹴る』という表現よりも『踏む』という方が適切かもしれませんし、蹴るという感覚を持っていないのではないでしょうか。地面に着いただけで床の反力が大きい。後ろに蹴るイメージだと力は逃げてしまうので、接地の仕方も考えられた走り方だと思います」

(5)頭がずっと上がらないからスライディングまで速い
「これも本当に難しいことです。走っていると頭はだんだんと上がってきてしまう。スライディングの時もそのまま、入っていけているからスピードが落ちません。『スライディングをするぞ』と意気込むと人は一瞬、動きが止まる。スピードが落ちる。なので周東選手の場合は『スライディングする!』みたいな感覚も持っていないかもしれません。頭の位置が上下左右に動いて、盗塁シーンが静止画のように見える人は、速くはない人。速い人は“スーーッ”と行くような見え方を映像ではします」

(6)ストライドが大きく、回転率が高い
「歩幅が大きくなると体の使い方が難しくなるので、普通は足の回転率は悪くなるのですが、周東選手はそんなことはない。100メートルの世界記録保持者のウサイン・ボルト選手を見ても分かるように速さは、ストライド(歩幅)とピッチ(回転)によって決まります。周東選手はしっかりと膝が前に出て、勝手に足が上がっていくイメージ。体も目線もブレていない」

 他にも細かく分析すると、周東の速さのポイントはあるという。鈴木氏は引退しても後進育成のために、体の使い方、走り方などの走塁分析を続けている。

「いいスタート、速いスピード、良いスライディングをいかにできるか。ひとつひとつの精度が高ければ、セーフになるし、それが自信に繋がっていく。それができていれば、たとえアウトになっても、ぶれることはない。大事なことは再現性です。確信の持てる裏付けがあれば、アウトでも落ち込む必要がない。周東選手は千葉ロッテ戦で柿沼捕手に刺されたシーンがありましたが、あの走塁は見事だったと思います。柿沼くんの送球が素晴らしかったのと、遊撃の藤岡くんのタッチも真下にグラブを落とすうまさもありましたから、千葉ロッテ側を褒めるべきと思います」

 鈴木氏は「あくまで仮説です」と繰り返していた。現役生活20年で自分なりに考えてきた走塁哲学と照らし合わせた中で「なぜ速いのか」「だから速いと思う」と周東が長けているポイントを分析した。これから盗塁を極めたい人には周東の真似をするのではなく、“なぜ”を紐解いて、自分なりの回答を出し、練習方法を導き出して欲しいと願っていた。