涌井秀章が最多勝も…… 投手陣の成果と課題を振り返る【東北楽天ゴールデンイーグルス2020:投手編】

2020-12-30 11:00 「パ・リーグ インサイト」編集部

東北楽天 シーズンレビュー2020 vol.1(C)パーソル パ・リーグTV

 2013年以来7年ぶりとなる日本一を目指し、「NOW or NEVER いまこそ 日本一の東北へ」というスローガンのもと戦い抜いた東北楽天ゴールデンイーグルス。終盤の失速が響き4位という結果に終わったものの、チーム打率はリーグトップの.258を記録するなど来季への収穫もあった。本記事は投手を中心とした前編、野手を中心とした後編に分けて、各選手にフォーカス。上記の「パーソル パ・リーグTV」特集動画「シーズンレビュー2020」とともに、楽天の2020シーズンを振り返っていく。

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 コロナ禍で開幕がおよそ3カ月押し、120試合制、さらに同一カード6連戦という変則日程になった2020シーズン。2年ぶりに開幕投手を任された則本昂大投手が白星を挙げると、楽天投手陣は抜群のスタートを切った。今季から抑えに配置転換された森原康平投手をはじめ、新戦力の牧田和久投手やシャギワ投手、昨季9勝を挙げた辛島航投手も中継ぎに回り、開幕5戦目まで無失点と盤石のリレーを披露。投打もかみ合って序盤戦首位をキープし、Aクラス入りは必至と思われた。

 しかし、中盤以降徐々に投手陣が安定感を欠き、最終的にはリーグワーストの32度の逆転負けを喫するふがいない結果に。チームも4位に終わった。

プロ野球史上初「3球団で最多勝」完全復活した涌井秀章

 そんな中、シーズンを通して先発ローテーションを守り続けたのが涌井秀章投手である。埼玉西武、千葉ロッテと2球団を渡って今季から楽天に加入した涌井投手は、開幕から自身8連勝を挙げると、シーズン計11勝で最多勝を獲得し、プロ野球史上初の「3球団で最多勝」を達成した。2016シーズンに10勝を挙げてから2桁勝利から遠ざかっていたことを考えると、期待値以上の結果を残したといえる。

 8月5日の福岡ソフトバンク戦では、9回1死まで無安打に抑える好投を披露。惜しくもノーヒットノーランとはならなかったものの完封勝利を飾るなど、主戦としてチームを支え続けた。しかし、9月以降は10試合で3勝3敗、防御率5.08と不安定な結果に。来季はプロ17年目を迎える涌井投手。投手陣の柱として、則本昂大投手や岸孝之投手とともにシーズンを通して活躍し、東北の地で日本一を達成したい。

序盤は好投も…… 則本昂大は自身ワーストの防御率

 昨季は右肘のクリーニング手術の影響で後半戦からの復帰となり、自身ワーストとなる5勝にとどまった則本昂大投手。2年ぶりに開幕投手に復帰した今季は「20勝」を掲げ、人一倍チームの日本一に強い気持ちを持っていた。そしてその熱意は序盤、結果を伴う。ノーワインドアップの新フォームに適応し、開幕戦から3戦3勝、防御率0.87と誰もがエースの復活を確信しただろう。

 しかし、シーズン中盤に入ると調子が下向きに。大量失点も目立ち、およそ1カ月半にわたって勝ち星が付かない苦しい時期も続いた。投打がかみ合わない不運もありつつ9月以降失速するチームの流れを変えることはできず。18試合に登板して結局昨季と同じ5勝、防御率は自身ワーストの3.96と悔しさが残るシーズンとなった。

 9月4日のオリックス戦では、3回裏終了後にベンチ裏で転倒して緊急降板、チームを一時離脱するなど投球内容以外でも反省点が残った。しかし、いつまでも引きずってはいられない。チームもファンも背番号「14」の完全復活を待っている。7年前はルーキーとして日本一を経験したが、今度は文句なしのエースとしてチームを頂に導きたい。

岸孝之は勝率10割でチーム2位の7勝

 連敗が続き、チームが苦しくなってきたシーズン終盤に力を発揮したのが岸孝之投手だ。序盤は7月4日の千葉ロッテ戦で初登板初白星を挙げて以降、変則日程で調整が難しかったためか思うような投球ができず。7月20日に登録を抹消され、長期間チームを離脱した。しかし、9月20日の福岡ソフトバンク戦で約2カ月半ぶりに2勝目を挙げると、そこから調子は上向きに。失速するチームを頼もしくけん引した。

 圧巻だったのは、10月に入ってからの投球だった。6試合に先発し、2完投1完封を含む5勝0敗、防御率1.38。10月・11月度の「大樹生命月間MVP賞」を受賞し、来季に大きな期待が持てる形でシーズンを締めくくっている。

先発、中継ぎ、抑え……すべてを経験した背番号「1」

 今季から本格的に、クローザーから先発への配置転換を明言し、シーズンに臨んだ松井裕樹投手。守護神としての実績は申し分なく、まだ若いこともあって大きな期待が寄せられたが、自身開幕からの2戦でともに5回まで持たずに降板、その後はファームでの調整が続いた。

 しかし、一軍復帰後は希望も見えた。8月27日の千葉ロッテ戦では、7回1安打11奪三振無失点と完璧に抑え、今季初白星をマーク。確かな手応えをつかんだ一戦となった。先発としては10試合に登板、51.2回を投げ、3勝3敗、防御率3.66とまずまずの結果だったが、この経験は今後のキャリアで生きてくるに違いない。

 10月以降は、チーム状況もあり中継ぎでの起用が中心となると、すぐに勝ちパターンの一角に。15試合に登板して失点した試合は2試合のみで、防御率も1.65と優れた数字を残した。また、そのうち2試合ではセーブも記録するなど、1シーズンで先発、中継ぎ、抑えすべてを務めた。経験値を高めて迎える来季、さらなる活躍が期待される。

うれしい誤算? 2人のルーキーが投手陣を支える

 野手では小深田大翔選手の活躍が目立ったが、投手陣でも来季以降の活躍を予感させる新人が。慶応義塾大学からドラフト3位で入団した津留崎大成投手は、開幕から中継ぎとして登板し、9試合連続無失点と即戦力に相応しい働きを見せた。最終的には、33試合に登板して1勝1敗1ホールド、防御率4.19と1年目から十分な成績を残している。

 ドラフト6位でHonda鈴鹿から入団した瀧中瞭太投手は、シーズン終盤に躍動した。ファームで結果を残して一軍昇格を果たすと、プロ初登板・初先発となった9月19日の福岡ソフトバンク戦では6回途中1失点と好投し、チームの勝利に貢献する。さらに10月11日の埼玉西武戦では、完封勝利まであとアウト一つという大健闘でプロ初白星。10月25日の千葉ロッテ戦でも7回無失点で2勝目を挙げるなど、来季以降の先発ローテーションの一角として大きく期待される。

 1年目で存在感を見せ付けた両投手。初めて迎えるプロのオフシーズンで、どのような進化を遂げるか。来季のさらなる活躍に期待しよう。

リーグワースト32度の逆転負け…来季へ向けての強化ポイントは

 今季チームは、8月中旬まで首位争いを繰り広げながらも、終盤に失速。10月以降は、「パーソル CS パ」進出へ負けられない上位チームとの直接対決で勝ち切れず、Bクラスに甘んじた。リードしても試合中盤以降に追いつかれ、逆転を許す試合が目立ち、実際、逆転負けはリーグワーストの32回。来季へ向けて、この課題をどのように克服するか。

 まずは、先発投手。今季先発ローテーションを守り抜いたのは、涌井投手のみだった。先発の柱として期待された則本投手と岸投手は、不調や怪我に苦しみ、シーズン通しての活躍とはならなかっただけに、来季はこの先発3本柱を軸として戦っていきたいところだ。また瀧中投手や石橋良太投手、弓削隼人投手ら若手投手の台頭にも期待したい。

 中継ぎ陣は、盤石の勝利の方程式を築くことが必須だ。今季は森原投手がクローザーに配置転換となるもシーズン途中から不調に陥り、セットアッパーを務めていたブセニッツ投手が代役に。しかしそれもうまくいかず、逆転負けが続いてしまった。

 また、昨季までブルペンを支えていたハーマン投手や高梨雄平投手が他球団に移籍したことで、中継ぎ陣の顔ぶれも一新した今季。新戦力の牧田和久投手や酒居知史投手の加入や、先発を務めていた辛島航投手や安樂智大投手も中継ぎに配置転換されるなど、試行錯誤を繰り返したが、勝ちパターンの確立とまではいかなかった。ここ数年の課題となっている終盤の失速を最小限に抑え、1年間戦い続けるために、安心して終盤を任せられる投手を増やしていきたいところだ。

文・小野寺穂高

【イーグルスシーズンレビュー2020:野手編】はこちら

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