再び日本一の東北を目指して。【東北楽天ゴールデンイーグルス 犬鷲の軌跡 Vol.5】

2020-12-28 20:00 「パ・リーグ インサイト」編集部
写真提供:(C)Rakuten Eagles

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 2019年に球団創設15周年を経た東北楽天ゴールデンイーグルス。スタートの分配ドラフト、東日本大震災などさまざまな苦難を乗り越え、2013年には日本一を成し遂げるなど、ファンに愛される球団へと着実に成長を続けている。

 そこで、その苦楽を振り返りつつ、15年の歩みをたどっていく。第5回は「再び日本一の東北を目指して」。チームの再編、強化を通して行われたチームの底上げ、そして現在の状況と今後の展望について触れていく。

過去の連載はこちら
【Vol.1】東北にプロ野球がやってきた。
【Vol.2】東日本大震災を乗り越えて。見せた、野球の底力。
【Vol.3】球団創設9年目に成し遂げた悲願の初優勝&日本一。
【Vol.4】地域に愛される球団を目指して。

着実に進むチームの底上げ

 2017年は3、4月に16勝5敗、5月に16勝7敗の好成績をマークするなど、スタートダッシュに成功。則本昂大投手、岸孝之投手の2本柱を中心に勝ち星を積み重ね、前半戦を首位で折り返す。また、6月9日の横浜DeNA戦では則本投手8試合連続の2桁奪三振をマークし、世界記録に並んだ。しかし、8月に入ると、7勝18敗1分と失速。9月も負け越し苦しい状況となるも、かろうじて3位でシーズンを終え、クライマックスシリーズ進出を決めた。

 迎えたクライマックスシリーズファーストステージは2勝1敗で埼玉西武を破り、ファイナルステージへ駒を進める。ファイナルステージでは、首位・福岡ソフトバンクに1勝のアドバンテージがあるという不利な状況だったが、第1戦、第2戦ともに1点差のゲームで競り勝つ。しかし、以降は粘りきることができず、惜しくも日本シリーズ出場は叶わなかった。

 翌2018年は、則本昂大投手、松井裕樹投手が精彩を欠き、打線をけん引していたウィーラー選手のバットから快音は響かず。3、4月は9カード連続で勝ち越し無しに終わると、5月には自力優勝が消滅。6月には梨田昌孝監督が休養を発表し、平石洋介ヘッドコーチが監督代行に就任した。

 平石監督代行に交代してからチームの状況はわずかながらに良化。田中和基選手・茂木栄五郎選手・島内宏明選手の打順が固定されると、ファンの間で「タナモギアイランド」と称され、話題を呼び、スマイルグリコパークに「タナモギアイランドビーチ」が設置された。

 二軍監督の経験を持つ平石監督代行は、若手を積極的に起用。結果的には最下位に終わったものの、岸孝之投手が4年ぶりに2桁勝利をマークし、『最優秀防御率』と『ゴールデングラブ賞』に輝くと、リードオフマンとして躍動した田中和基選手は『新人王』を獲得。苦しんだ分、収穫も多い1年となった。

 2019シーズンに平石監督代理が正式に監督に昇格すると、松坂世代の同志である後藤武敏氏、小谷野栄一氏をコーチに招へい。則本昂大投手、岸孝之投手のWエースが不調に苦しむも、石橋良太投手がその穴をカバー。ブセニッツ投手、森原康平投手が中継ぎとしてフル回転すると、打線は新たに加入した浅村選手、ブラッシュ選手がともに33本塁打をマーク。ルーキーの辰己涼介選手、渡邊佳明選手も期待以上の活躍でチームに貢献するなど、課題とされていた得点力不足が解消され、71勝68敗4分の3位でシーズンを終え、大きく躍進した。

コロナ禍で求められる新しい観戦スタイル

 2019年に二軍を初のイースタン・リーグ王者に導いた三木肇二軍監督が一軍監督に昇格、さらに鈴木大地選手が加入するなど、満を持して迎えた2020シーズン。本来であれば東京オリンピックの影響で例年よりも早い開幕が予定されていたが、新型コロナウイルスの影響で開幕が大幅に延期されると、楽天はいち早くチーム活動を休止し、安全を最優先。

 緊急事態宣言が発令されるなど、これまで通りの生活を送ることはままならず、先が見えない状況が続いたが、そのような状況でも楽天はファンにさまざまなコンテンツを提供し続けた。「おうちでイーグルス supported by inゼリー」もそのうちの一つだ。

「おうちでイーグルス supported by inゼリー」のサイト内では、球団の通訳の方々による英会話レッスンの動画や、アカデミーコーチや専属トレーニングスタッフによるお家でできる簡単な運動の動画を公開。さらにお子様向けにクラッチくんなど球団マスコットのぬりえや、野球用語や楽天の選手名を用いてひらがなやアルファベットを学習できる表を提供するなど、試合が行われなくても、楽天を身近に感じてもらえるようなコンテンツを提供し続けた。

 そしてついに迎えた6月19日の開幕戦。無観客という物寂しい雰囲気ではあったが、普段は歓声や応援でかき消されてしまう打球音や選手の声などがクリアに聞こえ、新しい野球観戦の楽しみ方を発見できる良い機会になったとも言えよう。新規感染者数が少し落ち着くと、7月10日からは収容人数に制限を設けての観客動員を開始。しかし飛沫感染防止の観点から歓声をあげることはできず、ソーシャルディスタンスとして左右2席を空けた配席とされたため、従来の雰囲気とはほど遠いものとなった。

 開幕が遅れたことなどから、同一カード6連戦が行われるなど、イレギュラーな試合日程が組まれた2020年シーズン。7勝3敗で6月を終えるなど、序盤は好調の滑り出しで上位をキープするも、夏場以降は徐々に調子は下落。最終的に55勝57敗8分の4位でシーズンを終えた。

 しかし、今季からチームに加わった涌井秀章投手が11勝を挙げて『最多勝』に輝くと、打線をけん引した浅村栄斗選手が32本塁打で『本塁打王』に輝くなど、個々の活躍が光った。また、ドラフト1位ルーキー・小深田大翔選手もリードオフマンとして躍動するなど、チーム打率は.258でリーグトップの数字をマーク。しかし、チーム防御率は4.19でリーグ5位に沈んでいるため、来季以降再び上位に浮上するためには、投手陣の強化が必要となるだろう。

15年間で遂げた飛躍的な成長。再び頂点を目指して

「寄せ集め」と揶揄されたチームは、15年の月日を経て地域から愛されるチームに成長を遂げ、開幕に間に合うかどうか不安視されていた県営宮城球場は、日本球界を代表するような笑顔溢れる「ボールパーク」へと変貌を遂げた。新型コロナウイルスの影響で、再びスタンドが埋め尽くされる日はまだまだ先になりそうではあるが、目指すところは変わらない。来季は新たに石井一久GMを監督に据え、東北をさらに熱くするべく戦い続け、新たな歴史を刻んでいく。

文・後藤万結子

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