千葉ロッテ4年ぶりAクラスの原動力。充実の投手陣を振り返る【千葉ロッテマリーンズ2020:投手編】

2020-12-31 11:00 「パ・リーグ インサイト」編集部

千葉ロッテ シーズンレビュー2020 vol.1(C)パーソル パ・リーグTV

 2017年以降、3年連続Bクラスに甘んじていた千葉ロッテ。球団設立70周年の節目となる今季は積極的な補強を敢行し、開幕スタートダッシュに成功する。8月には単独首位に浮上し、福岡ソフトバンクとシーズン終盤まで熾烈な優勝争いを繰り広げた。最終的に14ゲーム差をつけられての2位に終わったものの、4年ぶりのAクラス入りは下馬評を覆す好成績だ。本記事は投手を中心とした前編、野手を中心とした後編に分けて、各選手にフォーカス。パーソル パ・リーグTVの特集動画「シーズンレビュー2020」とともに、千葉ロッテの2020シーズンを振り返っていく。

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種市篤暉にはエースの期待がかかったが……

 昨季、規定投球回に到達した投手がいなかった千葉ロッテ投手陣。その中で、チーム最多タイの8勝を挙げたのは、4年目の種市篤暉投手だ。今季は大きな期待をかけられて開幕ローテーションに入ると、7月25日の埼玉西武戦で今季のパ・リーグ一番乗り&プロ初となる完封勝利を果たす。しかし右肘手術のため、8月1日の楽天戦を最後に登録抹消。チームはエース候補を欠いた状態で、厳しい夏場を迎えることとなった。

新戦力が先発の柱としてチームをけん引

 今季の千葉ロッテ先発陣を率いたのは、なんといっても楽天からFAで新加入した美馬学投手だろう。開幕3戦目の福岡ソフトバンク戦で移籍後初登板、初勝利を飾ると、8月11日の北海道日本ハム戦からは7連勝をマーク。夏場の厳しい時期にもエースとして奮闘し、終わってみれば自身3年ぶりとなる2桁勝利を達成した。

 美馬投手の武器は独特の軌道を描く横回転のフォークをはじめとする多彩な変化球を操り、ストレートとの組み合わせで打者を打ち取る投球術だ。防御率は3.95と比較的高めの部類に入りながらも、与四球は規定投球回に到達した投手の中でもっとも少ない25個。テンポの良さが打線の援護をもたらす好循環を生み、白星を積み重ねたと言えるだろう。

無類の鷹キラー・二木康太

 二木康太投手は昨オフ、背番号をエースナンバーである「18」へ変更したが、今季序盤は不安定な投球が続き、二軍降格。しかし8月に復帰すると、抹消期間に行ったフォームの修正が功を奏したか、9月14日のオリックス戦で2年ぶりとなる完封勝利を挙げる。特に福岡ソフトバンクに対して好相性を発揮する“鷹キラー”ぶりも印象的で、昨季から続いて7連勝を達成。これは球団24年ぶりとなる快挙だった。最終的には15試合に登板して9勝3敗と、自身初の勝ち越しに成功している。

 好成績の要因は、持ち味である制球力に一層磨きがかかったことだろう。規定投球回には届かなかったものの、四球数は50イニング以上投げた投手の中で最少タイとなる12。さらに、1イニングにつき許した走者数を表すWHIPは、一般的に1を切ると優秀と言われているが、二木投手は0.91。来季はシーズンを通してその安定感を発揮したいところだ。

石川歩は安定したゲームメイク能力が光る

 石川歩投手も先発陣の一角としてチームを支えた。開幕直後は白星に見放される苦しい内容が続いたものの、7月31日の楽天戦で今季初勝利を上げると、そこから6連勝をマーク。8月は4勝0敗で「大樹生命月間MVP」にも輝き、首位争いを演じたチームの快進撃に貢献した。特筆すべきはゲームメイク能力の高さだろう。今季は完投こそないものの、先発登板21試合のうち19試合で6回以上を投げきり、133.3投球回はパ・リーグトップの数字。さらにQSもリーグ最多タイとなる14回を数えるなど、先発として頼もしく役割を全うした。

岩下大輝と小島和哉は左右の若き先発として1年間奮闘

 美馬投手、二木投手、石川投手の3本柱に加えて、若手投手も奮闘した。6年目を迎えた岩下大輝投手は開幕からローテーションに加わると、3戦3勝の好スタートを切る。10月に新型コロナウイルス感染の影響で戦線を離脱するも、最終的には17試合に先発して7勝7敗と自己最高の成績を残した。

一方で四死球から崩れる場面も目立ち、課題とされる制球難は克服できず。特に0勝2敗、防御率6.86と振るわなかった8月は16四死球と苦しんだ。来季こそは、150km/hを超える直球を軸とする力強いスタイルと、精密な制球力を両立させたい。

 昨季終盤に飛躍の足がかりを作った2年目左腕・小島和哉投手も躍進を遂げた。今季初登板となった6月24日のオリックス戦で白星を飾ると、8月26日の楽天戦では7回11奪三振無失点で、開幕8連勝中だった涌井秀章投手に投げ勝つ。シーズンを通しては貴重な左の先発としてローテーションを守り抜き、7勝8敗、防御率3.73でフィニッシュ。来季はあと一歩に終わった規定投球回到達、2桁勝利を狙いたいところだ。

救援防御率はリーグ2位の「3.30」。4投手で支え合った幕張の必勝リレー

 昨季千葉ロッテは、イニング別では8回の失点が87ともっとも多く、ブルペンの整備が急務となっていた。昨オフ、その重要なピースとして獲得した元・広島のジャクソン投手は7月8日に退団してしまったが、9月以降はベテラン4投手による勝ちパターンを形成することで課題を克服。8回の失点は47に減少し、救援防御率はリーグ2位の「3.30」と、リーグ屈指の救援陣と言っても過言ではない。

 まず必勝リレーでは、唐川侑己投手が抜群の安定感を見せた。 2018年にシーズン途中から中継ぎ陣に加わり適性の高さを示したものの、今季は二軍スタート。しかし7月29日に一軍登録されると、初登板から17試合連続無失点を記録する快投で、8月中旬から勝ちパターンに定着。「7回の男」として32試合に登板して1勝1敗14ホールド、防御率1.19と、驚異的な数字を残した。今季は新たにチェンジアップを習得。決め球のカットボールをはじめとする、多彩な変化球を織り交ぜながら打者を手玉に取る技巧派として新スタイルを確立したことが、好成績につながったといえるだろう。

 そして今季、楽天から加わったハーマン投手も、必勝リレーの一角を担った。150km/h近い直球と鋭く変化するナックルカーブを武器とする経験豊富なベテランは、開幕当初には7回を任されるも、ジャクソン投手の退団により8回へと配置転換。7月こそ痛打される場面も目立ったが、8月は防御率0.82と調子を上げ、チームの弱点を埋める働きを見せた。また、救援陣の連投状況によっては9回にも登板するなど、臨機応変な起用にも応えた。9月中旬に右手の故障により一時戦線離脱を強いられるが、終盤に復帰。シーズンではチームトップの23ホールドを記録するなど、勝ち試合の継投には不可欠な存在となった。

 ハーマン投手の離脱によるセットアッパー不在の窮地を救ったのが、巨人からの電撃トレードで移籍してきた澤村拓一投手だった。巨人では大きな期待をかけられながらもそれに応えるまでに至らず、三軍での調整を続けていたものの、9月7日に移籍が発表されると、翌8日の北海道日本ハム戦では3者連続奪三振の衝撃デビュー。すぐさま離脱中のハーマン投手の穴を埋める活躍で「8回の男」に定着した。

 持ち味の最速159km/hの直球と、落差のあるスプリットを武器に驚異の奪三振率12.43を記録するなど、最終的には22試合に登板し13ホールド1セーブ、防御率1.71の好成績をマーク。ブルペンの救世主として、新天地で輝かしい復活を果たすこととなった。

 必勝リレーの最後を受けたのがチームトップの54試合に登板、31セーブを挙げた益田直也投手。目標としていた最多セーブは惜しくも叶わなかったが、自身7年ぶりとなる30セーブの大台に乗せている。今季は、代名詞のシンカーが被打率.227、スライダーが被打率.083と左右の変化球が優秀で、力強い直球と組み合わせることで打者を幻惑した。また、8月7日のオリックス戦では史上5人目となる通算100セーブ&100ホールド、28日には通算500試合登板を達成するなど記録づくめの年に。来季も不動の守護神として、チームのために腕を振り続ける。

必勝リレーにつなぐ存在。小野郁と東條大樹もブルペンを支えた

 ブルペンを支えたのは、リードしている場面で登場する必勝リレーの4投手だけではない。昨季FAした鈴木大地選手の人的補償で移籍してきた小野郁投手は、初めて開幕一軍の座を勝ち取り、6月26日のオリックス戦でプロ初勝利を挙げたものの、7月までの防御率は4点台後半と苦しんだ。それでも夏場にかけて調子を上げ、主に同点やビハインドの場面を任され、自己最多となる40試合に登板。9月は10試合に投げて防御率0.00と安定した投球を披露するなど、中継ぎ陣の一角として1年間投げ抜いた。

 東條大樹投手も39試合に登板した。昨季58試合に登板したことで、今季は開幕から大車輪の活躍が期待されていたが、7月は防御率9.00と安定感を欠いた。二軍での調整を経て8月に再昇格を果たすと、19イニングを投げて防御率0.47と投球内容は大きく改善。また、昨季から強さを見せていた対右打者に対しては被打率.238と相性の良さを示すとともに、左打者に対しても実力を発揮。再昇格後は被打率.160と抑え込んだ。

あと一歩に終わったリーグ制覇へ。来季に注目が集まる若手投手

 今季は先発と中継ぎの両輪が機能したことでリードを守り抜いて勝利へとつなげることができた千葉ロッテだが、まだまだ懸念点は多い。チームの中心である美馬投手、石川投手らベテラン勢の後に続く若手の台頭も期待されるところだ。そこで今季一軍において飛躍の足がかりを作った投手を取り上げたいと思う。

 その筆頭格として挙げられるのは、今季11試合に先発した中村稔弥投手。9月11日には8回無死まで無安打の快投を演じるなどオリックス戦2勝を挙げたが、他の4球団からは勝ち星を挙げられず悔しさの残るシーズンとなった。同期入団の小島投手とは水を開けられているだけに、来季は先発陣の一角として左の2枚看板の形成となるか。

 また地元千葉出身の古谷拓郎投手の覚醒も待たれる。今季は度重なる降雨により本拠地デビューが3回連続で流れてしまう不運もあったが、一軍初登板を果たした10月10日の福岡ソフトバンク戦では、5三振を奪う粘りの投球を披露。王者を相手に大器の片鱗を見せつけた。二軍でも36.1イニングで32奪三振を記録しており、奪三振能力の高さも光る2年目右腕の来季に注目したいところだ。

 個人ではそれぞれが役割を果たすことで多くの選手がキャリアハイをマークし、リーグ2位となるチーム防御率3.81の好成績を残した一方で、1位の福岡ソフトバンクとは1点近く離されている厳しい現実も受け止める必要がある。来季はここに挙げられている投手以外を含めて各投手がさらなるレベルアップをすることによって、あと一歩に終わったリーグ制覇がさらに近づくことになるだろう。

文・和田信

【マリーンズシーズンレビュー2020:野手編】はこちら

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