2つの金字塔を打ち立てた獅子の守護神。セーブ王・増田達至の安定感の理由とは?

2021-02-04 18:00 「パ・リーグ インサイト」望月遼太

《THE FEATURE PLAYER》L増田達至『球団最多136セーブ』獅子の守護神は立ちはだかる(C)パーソル パ・リーグTV

 ライオンズの球団史にその名を刻んだ守護神は、名実ともにリーグ屈指のストッパーへと飛躍を遂げた。埼玉西武の増田達至投手は2020年に33セーブを挙げ、自身初となる『最多セーブ』を獲得。2016年に抑えに転向してから5年目でつかんだタイトルは、積み上げてきたクローザーとしての進化を象徴するものでもあるだろう。

 まず初めに、プロ8年目の増田投手が記録してきた年度別成績を振り返る。

※クリックで拡大(C)パ・リーグ インサイト

※クリックで拡大(C)パ・リーグ インサイト

 NTT東日本から2012年のドラフト1位で埼玉西武に入団、1年目から即戦力としての期待に応え、一軍の舞台でリリーフとして登板を重ねていく。プロ入り以来8年連続で40試合以上に登板し、そのうち防御率が4点台以上だったのは2018年の1度のみ。ほぼ全てのシーズンにおいて一定以上の安定感を発揮し、ブルペンを支える存在となっていった。

 プロ入り当初の持ち場は中継ぎで、2015年には年間72試合に登板する大車輪の活躍を披露。同年には42ホールドポイントを記録し、『最優秀中継ぎ』のタイトルにも輝いた。翌2016年にクローザーに配置転換されてからもその快投は続き、いきなり防御率1点台という素晴らしい投球を見せ、抑えとしての適性を示した。その後は、不振に陥ってシーズン途中に中継ぎに回った2018年以外の全ての年で、守護神の大役を任され続けてきた。

 2019年には自身初の30セーブに到達し、リーグ優勝の胴上げ投手にもなった。続く2020年は年間120試合に短縮されたにもかかわらず、セーブ数を前年以上に伸ばしてみせた。その結果、シーズン無敗で『セーブ王』に輝く快挙を達成しただけでなく、豊田清コーチが記録した通算135セーブという数字を抜き、球団史上最多記録を更新。今や百戦錬磨となった増田投手にとっても、さまざまな意味で大いに意義のあるシーズンだったことだろう。

 2020年途中にFA権を取得したことにより、オフにはその動向が注目されていたが、FA権を行使したうえで、埼玉西武への残留を選択。来季以降も自身が持つ球団史上最多のセーブ数を更新していくことになりそうだ。ライオンズファンにとっても、守護神の残留は安堵と喜びをもたらす、大きなファクターとなったのではないだろうか。

 ここからは、セイバーメトリクスで用いられる各種の数字を参考に、増田投手の投球の特徴について分析。それに加えて、2020年に記録された球種配分、球種別・コース別の被打率といった要素についても見ていくことで、ピッチングと、その強みについてより深く掘り下げていきたい。

奪三振・四球・被本塁打のいずれにおいても、一定以上の安定感が

 まずは、セイバーメトリクスの分野で用いられる以下の5つの指標から、各年度の成績を見ていきたい。

・9イニングで記録できる奪三振数の平均を示す「奪三振率」
・9イニングで与える四球数の平均を示す「与四球率」
・9イニングで打たれる本塁打数の平均を示す「被本塁打率」
・奪三振を四球で割って求める、投手の制球率を示す「K/BB」
・1イニングあたりに許した走者の数を表す「WHIP」

※クリックで拡大(C)パ・リーグ インサイト

※クリックで拡大(C)パ・リーグ インサイト

 奪三振率に関しては、不振に陥っていた2018年以外の全てのシーズンで7点台以上の数字を記録している。それに加えて、イニング数を上回る奪三振数を残したシーズンも、2017年と2019年の2度存在。キャリア通算の奪三振率も8点台に到達しており、一定以上の奪三振力を有することは、各種の数字に表れている。

 与四球率に目を向けると、プロ2年目の2014年以降は7年間全てで2点台以下と、自滅に近い形で走者を溜めるケースが少ない。2019年には与四球率1.29の好成績を残しており、翌2020年にも2年続けて1点台の数字を記録。直近2年間は防御率の面でも優れた数字を記録しているが、こうした制球面の安定が、投球内容のさらなる向上に寄与しているのは間違いない。

 被本塁打率は年によってややばらつきが見られるが、2015年と2016年には2年続けて年間被本塁打をわずか1本に抑えており、この期間は不意の一発によって失点を喫するケースが非常に少なくなっていた。2017年からの2年間は対照的に被本塁打率が1を上回っていたが、2019年以降は再び改善傾向にある。2018年の不振から脱却するにあたっても、被本塁打の減少が少なからず良い影響を及ぼしていた。

各種の指標においても能力の高さが示されている

 K/BBは一般的に3.50を超えると優秀な数字とされているが、キャリア通算の成績はその水準を上回るものとなっている。中でも、2019年のK/BBは7.40という素晴らしい数字であり、2015年以降の6シーズンにおいて、K/BBが3.50を下回ったのは1度のみ。これらの数字は、増田投手が奪三振と制球力の双方で優秀な能力を持ち合わせることの証明と言えよう。

 クローザーは最終的にリードを守り抜くことが最大の仕事ではあるが、できることなら余分なランナーを出さずに試合を締めくくるのが最良の結果であることは確か。その点、増田投手はWHIPにおいても、1点台前後のシーズンが5度と、総じて優秀な数字を記録している。とりわけ、2017年と2019年には1イニングで許した走者の平均数が1を下回る素晴らしい成績を残しており、数字の面ではさほど走者を溜めないタイプであることがわかる。

 次に増田投手の持ち球と、その特色について見ていきたい。2020年に記録した、結果球における各球種の投球割合は下記の通りだ。

※クリックで拡大(C)パ・リーグ インサイト

※クリックで拡大(C)パ・リーグ インサイト

ストレートの球速はクローザーとしては目を見張る速さではないものの……

 約7割を速球が占めている通り、軸となる球種はストレートだ。球速の面では140km/h台後半から150km/h台前半と、リリーフ投手としては目を見張るようなスピードがあるわけではない。しかし、増田投手の速球は、スライダーと同じ方向に手元で変化する性質を持っている。その独特な軌道もあり、打者にとっては見た目以上に捉えるのが難しいボールといえる。

 速球に強いパ・リーグの打者たちに真っ向からストレートで勝負を挑み、高めのコースで空振りを奪い、バットを押し込んでフライを打ち上げさせ、あるいは抜群のコントロールで見逃しの三振を奪う。増田投手の速球は、まさに決め球として十二分に機能する質を備えた球種と言えるだろう。

 この速球に加えて、結果球の約2割に達する、スライダーも頼れる球種の一つとなっている。スライダーの球速は130km/h台後半から140km/h中盤と、速球との間に一定の球速差が生まれている。一口にスライダーといっても、増田投手の場合は縦と横の2つの変化を状況に応じて使い分け、幅広い状況で空振りや打ち損じを誘うことが可能だ。

 その他にも、球速120km/h台中盤~後半とブレーキが効いており、投球に緩急をつける効果をもたらすカーブと、140km/h台の速さで鋭く縦に落ちるスプリットを時折交えながら、打者を打ち取っていく投球スタイルが基本線となっている。

 前項に関連して、2020年に記録した各球種の被打率についても見ていきたい。

※クリックで拡大(C)パ・リーグ インサイト

※クリックで拡大(C)パ・リーグ インサイト

被打率.000。年間を通して完璧に打者を抑え込んだ球種とは?

 投球の中で用いる割合としては決して多くはなかったものの、カーブの被打率が.000と、シーズンを通して1安打も許さないという完璧な数字を記録。また、決め球の一つであるスライダーの被打率も.150と優秀な数字を残しており、こちらも信頼の置ける球種となっていたことがわかる。

 その一方で速球の被打率は.246と、2020年に記録した被打率.227よりも高くなっていた。速球だけで確実に打ち取れるという状態ではなかったものの、先述したスライダーやカーブがより効果を発揮したのも、独特の軌道を描くストレートの存在があってこそ。その速球の被打率が向上すれば、まさに鬼に金棒だ。

 増田投手のスプリットは縦のスライダーよりもやや球速が速く、ストレートを除けば最も球速の出る持ち球となっている。

 最後に、2020年に記録したコース別被打率についても見ていきたい。

増田達至投手2020年のコース別被打率 ※クリックで拡大(C)パ・リーグ インサイト

増田達至投手2020年のコース別被打率 ※クリックで拡大(C)パ・リーグ インサイト

縦・横どちらのゾーンにおいても明確な差異が表れていた

 一般的に高めのコースは投手にとって危険なゾーンとされがちだが、増田投手の場合は、高めのゾーンにおける被打率がいずれも低くなっている。とりわけ、ストライクゾーン高めの両コーナーではいずれも打率.077と非常に優秀な数字を記録しており、速球を投じて三振を奪うシーンも少なくはない。高いボールを効果的に使えていたことが、これらの数字からもうかがい知れよう。

 また、真っ直ぐやスライダーが変化していく方向となる、投手から見て左側のゾーンの被打率も、ストライク、ボールの双方において低くなっている。それに対して、右側のゾーンにおいては、高めを除いて高い被打率を記録。得意とする変化球が動く方向とゾーン別の被打率が密接にかかわっている点も、興味深い要素だ。

 ただ、空振りを取る際に用いるケースが多い真ん中低めのボールゾーンで痛打を浴びているのは気になる点だ。縦のスライダー、あるいはスプリットをこのコースに落とす際のリスクが今以上に低くなれば、決め球から逆算した配球も容易になり、ひいてはより投球の幅が広がることにもつながる。来季以降、ボールになる変化球を今以上に有効に使えるかどうかは、注目する価値がありそうだ。

投手としての高い総合力が、クローザーとしての安定感にもつながっている

 独特の球筋を持つストレートと2種類のスライダーに加え、目先を変える効果を持つカーブを効果的に交えて打者を打ち取っていくスタイルが、現在の増田投手の持ち味だ。微妙な変化を見せるストレートに代表されるように、見た目の球速だけでは図り切れないような実戦的な強みを持っている点が、投球を支える要素の一つとなっている。

 それに加えて、優れた制球力や一定以上の奪三振力といった要素も備えていることもあり、自滅に近い形で失点を喫する危険性も少なくない。また、コース別の被打率を見ても、得意なゾーンでの勝負であれば、相手を選ばずに高い確率で打者を打ち取れることが示されている。そういった投手としての総合力の高さが、毎年多くの登板を重ねながら、安定した投球を続けている理由にもなっていることだろう。

『最優秀中継ぎ』と『最多セーブ』の双方を受賞した経験のある増田投手は、プロの舞台で酸いも甘いも味わってきた、まさにリリーフのスペシャリストと呼べる存在だ。2020年にブルペン陣の成績を大きく向上させた埼玉西武にとっても、その存在は欠かせない。ライオンズの球団史において最も多くのセーブを記録してきた獅子の守護神は、今後も救援陣の中心的存在としてチームをけん引していってくれそうだ。

文・望月遼太

関連リンク