「プロ野球とビジネス」。観客動員数は同じでも、約8000億円の差はなぜ生まれるか

2018-05-24 14:53 「パ・リーグ インサイト」森亜紀子

4月25日に、平日朝7時台から開講している市民大丸の内朝大学「野球の魅力再発見」クラスの第3回講義が丸の内3×3labにて開催された。講師を勤めたのは、パシフィックリーグマーケティング株式会社代表取締役の根岸友喜氏だ。

出勤前の朝7時台からビジネスパーソンを中心とした受講生は、「プロ野球とビジネス」のテーマのもと講義を聴講。プロ野球の収支と投資のモデルや、NPBとMLBの違いなど、データを用いながら解説された。

現状、日本のプロ野球の興行ビジネスで出た収益は、選手年俸や育成や球場などの環境整備、地域連携などへ投資され、またその投資をもとに質の高い興行ビジネスを行うというサイクルになっている。球団の利益はいわゆるキャッシュリッチになるためのものではないという。

ただアメリカのMLBと日本のNPBと比較すると、1995年時点では両者の収益は同程度であったものの、近年MLBの市場規模は1兆円超とも言われている。それに対してNPBは現在約1800億円程度に留まっている。

この市場規模の違いから、1試合あたりの平均観客動員にもMLBとNPBには大きな差があるかといえば実は、そうではない。MLBの1試合あたりの平均観客動員は約3万人に対し、NPBは約2.9万人。30球団と12球団という球団数の差はあるものの、平均観客動員のみで鑑みると、市場規模ほどの差はそれほど感じられない。

では、MLBとNPBの差はどこで生まれているのか。それはアメリカのネット配信権を含む放映権料の高騰によるところが非常に大きい。全米のテレビ放映権料はこの10年ほどの期間で数千億円単位の高騰。またローカルテレビ放映権料も同様に数千億円単位で高騰している現実がある。

放映権料好投の理由は…

この高騰の理由は主に3つほどが挙げられる。1つ目は、リーグが放映権を一括管理していることで放映権の価値が上がっていること、2つ目はアメリカにおけるスポーツのライブ価値、また3つ目に放映権の買い手が複数存在していることなどが挙げられる。

このようにMLB球団の収益構造の中で放映権料が占める割合は大きく拡大している。

ではNPBはどうか。収益構造の中で一番大きいのはチケット売上で、次にスポンサー料、放映権が続くという球団が日本では多い。そんな中、NPB球団も収益構造に大きな割合を占めるチケット販売において、昨今様々なプライシングの試みに挑んでいる。

例えば楽天では、これまで一律であったチケット料金に、昨年から価格変動制を導入した。これは試合日、ひいては購入のタイミングでもチケット料金が変動していくというもの。需要と供給のバランスで、チケット価格が変動するこの制度は、MLBでは多くの球団が導入しており、すでに定着している。日本では馴染みが薄い制度だが、この価格変動制のように、新たなものを生み出し、また挑戦していくことが、スポーツビジネスのさらなる成長のためにも必要である。

根岸氏は、プロスポーツの将来のあるべき姿を考えると、「コスト削減よりも売上拡大を目指すべきであり、そのためにどのようにして来場満足度を上げ、再来場率を上げ、そしてユニークユーザーを増やしていくのかを我々は考えていかなければならない。」と述べた。