山田久志氏が語るアンダースローの美学 「みんな型にはめようとする」

2018-06-12 14:50 「Full-Count」篠崎有理枝
5月27日のオリックス対ロッテ戦のセレモニアルピッチに登場した山田久志氏【写真提供:オリックス・バファローズ】

5月27日のオリックス対ロッテ戦のセレモニアルピッチに登場した山田久志氏【写真提供:オリックス・バファローズ】

通算284勝、12連続開幕投手を務めた山田久志氏

サブマリン投法で知られ、通算284勝、歴代勝利数7位の記録を持つ山田久志氏。5月27日にわかさスタジアム京都で行われた復刻イベントのセレモニアルピッチに登場し、往年のアンダースローで観客を沸かせた。そんな山田氏が、今は少なくなったアンダースロー、サイドスロー投法についての思いを語ってくれた。

阪急で1975年~86年に12年連続開幕投手を務め、1975年~77年に3年連続日本一を達成。ミスターサブマリンとして知られる山田氏だが、意外にも秋田県の能代高2年までは内野手だった。高校の監督に「ピッチャーをやれ」と言われ投手に転向。アンダースローで投げるようになったのは、高校卒業後に入社した社会人の富士製鐵釜石時代だという。当初はサイドスローやスリークォーターなど、いろいろなところから投げていたが、社会人時代の監督やコーチがアドバイスをくれたことがきっかけで、アンダースローで投げることになったと振り返る。

「アンダースローが自分に合っていた。うまくはまったんだろうね。アンダースローにしてからは打たれなくなった。それに、アンダースローのいいところは、オーバースローに比べて肩や肘に負担がかからない。ただ、284勝もできたのは、それだけが理由ではないね。阪急がいいチームだったから。いくら自分が頑張っても強いチームに入らないと勝てないよ。打つ方もしっかり後押ししてくれた。自分でもよく勝てたなぁと思うよ」

山田氏と同じアンダースロー投法で、今年西武からメジャーリーグのパドレスに移籍した牧田和久投手は、開幕から苦しみ5月7日(同8日)にマイナーに降格。13日(同14日)にメジャー昇格を果たしたが、6月1日(同2日)に再びマイナー降格となった。そんな牧田に山田氏は、難しい部分もあると思うが、頑張ってほしいとエールを送る。

「メジャーにもアンダースローは結構いるから、バッターも全く見たことないというボールではないんだよね。それに、メジャーの投手は力があるけど、牧田はスピードがないから、かわすタイプ。頑張って欲しいけど、最後まで牧田らしくやれるかな。難しいかもしれないね」

今春のキャンプでは昨年オフにサイドスローに転向したオリックス・佐藤世那を指導

また、昨年オフからサイドスローに転向したオリックスの3年目右腕、佐藤世那投手には春季キャンプで臨時投手コーチとしてアドバイスを送ったが、課題は多いという。

「体は横にいくんだけど、手が上からだったり、体の使い方が理に適っていなかった。なかなか簡単じゃないね。時間はかかると思うよ。彼はあのオーバーハンドの投げ方で投げていたら肩や肘に負担がかかるし、故障もしてしまう。1軍の枠を勝ち取るのは大変なこと。彼はそれを分かっているから、生き残るためにもサイドスローに挑戦したんじゃないかな。悪いことではないけど、自分で工夫していかなきゃいけないね。コーチのアドバイスもあるけど、自分で自分のものにしていかなきゃいけない」

牧田や佐藤世も苦戦しているが、山田氏は球界に自身のように特徴あるフォームで投げる投手が少なくなってきていることが残念だと話す。全国を回り、少年野球チームで指導も行っている山田氏だが、各地にサイドスローやアンダースローでの投げ方を教えられる指導者が不足しているため、これからはもっと減るだろうと考えている。

「同じような投げ方でみんな型にはめようとするけど、そうじゃなくたっていいもんね。『こういう投げ方もあるんだ』というのを見せるのも野球だと思う。昔はいろいろな投げ方のピッチャーがいた。マサカリ投法の村田兆治、トルネード投法の野茂英雄、自分はサブマリンと呼ばれた。特徴ある人がいて、投球フォームでお客さんに喜んでもらえた。もっとそういう選手が出てきてほしいね」

史上最高のサブマリンと称され17年連続2ケタ勝利を挙げた山田氏は、自身のように特徴ある投げ方で活躍する投手が、再び球界に現れることを期待している。