「強打」の上を行く「恐怖」の2番打者が日本球界でも流行りに?

2017-04-12 00:00 「パ・リーグ インサイト」藤原彬

カルロス・ペゲーロ選手(楽天)のバットが火を噴いている。3月31日の開幕戦で延長11回にセンターへ特大アーチを放つと、4月2日には9回にオリックス・平野佳寿投手から値千金の逆転弾を叩き込んだ。6日にも変化球をうまく捉えてスタンドインさせ、ここまでリーグ3位タイの3本塁打を記録している。いずれもチームを勝利に導く決勝の2ランと、その勢いは止む気配がない。興味深いのは、梨田昌孝監督がペゲーロ選手を開幕から2番で起用し続けていることだ。昨季はわずか51試合の出場ながらも10本塁打をマークしていた強打者に、より多くの打席をまわすことが狙いだと指揮官は語っている。

リードオフマンとクリーンアップをつなぐ役割としての2番打者像からかけ離れている点で、ペゲーロ選手の2番起用には驚きと期待がある。カテゴリーを問わず「出塁した1番打者を2番打者が得点圏へ送り、信頼できる中軸のバットで返す」のが日本の野球では定石だ。2001年にシーズン最多となる67犠打をマークした宮本慎也選手(ヤクルト)も、2013、2014年にパ・リーグ最多の62犠打を記録した今宮健太選手(福岡ソフトバンク)も、2番打者としての出場が主だった。昨季、162試合制のメジャーリーグでは全30球団で1025本の犠打が記録されたが、プロ野球は12球団で1367本(パ・リーグ802本/セ・リーグ565本)と送りバントの頻度は断然高い。だが、犠打で走者を進めるのが勝つための戦術なら、2番に安打で進塁させることができる選手を置くこともまたしかり。強行には併殺打のリスクも伴うが、打ってつなげばアウトを献上することなく得点のチャンスが拡大する。

そこで、ここでは2000年以降の主な「強打の2番打者」の打撃成績を見てみよう。
※成績は2番での先発出場時のもので()はシーズン通算成績

小笠原道大選手(2000年・日本ハム)
 120試合 打率.341 27本塁打 92打点 長打率.569(試合 打率.329 31本塁打 102打点 長打率.552)
ペドロ・バルデス選手(2001年・ダイエー)
 120試合 打率.317 19本塁打 72打点 長打率.501(137試合 打率.310 21本塁打 81打点 長打率.489)
二岡智宏選手(2002年・巨人)
 87試合 打率.286 21本塁打 60打点 長打率.529(112試合 打率.281 24本塁打 67打点 長打率.520)
二岡智宏選手(2003年・巨人)
 79試合 打率.299 18本塁打 38打点 長打率.509(140試合 打率.300 29本塁打 67打点 長打率.487)
清水隆行選手(2004年・巨人)
 115試合 打率.312 16本塁打 51打点 長打率.479(135試合 打率.308 16本塁打 60打点 長打率.458)
嶋重宣選手(2004年・広島)
 65試合 打率.331 13本塁打 37打点 長打率.528(137試合 打率.337 32本塁打 84打点 長打率.560)
アダム・リグス選手(2006年・ヤクルト)
 123試合 打率.296 37本塁打 86打点 長打率.565(142試合 打率.294 39本塁打 94打点 長打率.558)
谷佳知選手(2007年・巨人)
 109試合 打率.326 9本塁打 46打点 長打率.451(141試合 打率.318 10本塁打 53打点 長打率.431)
栗山巧選手(2009年・埼玉西武)
 129試合 打率.272 12本塁打 55打点 長打率.402(140試合 打率.267 12本塁打 57打点 長打率.394)
川端慎吾選手(2015年・東京ヤクルト)
 70試合 打率.357 6本塁打 30打点 長打率.488(143試合 打率.336 8本塁打 57打点 長打率.439)

2010年代に入るとあまり見られなくなっていた「強打の2番打者」は、2015年に東京ヤクルトがほとんど送りバントをしない川端選手を2番に置いた強力打線を組み、リーグ優勝を果たしたことで再び脚光を浴びた。打高投低の傾向にあった2000年代を振り返ると、打力を売りとする打者がより多く2番打者を務めていることが分かる。そして、これらの中に入り混じっても今季のペゲーロ選手が稀有であるのは、バントをしないだけではなく、その存在が冒頭で述べたような長打力を備える「恐怖の2番打者」へ昇華されようとしているからだ。つなぎの役割を求められる2番を任されながら30本塁打以上を記録したのは、この17年間で2006年のリグス選手のみ。ペゲーロ選手が現在の調子を維持できれば、そこに肩を並べることも可能だろう。

それ以前に打力に重きを置く2番打者として注目を集めたのは、川端選手と同じくチームのリーグ優勝に貢献した2008年の栗山選手だ。ただし、この年の栗山選手はリーグ最多の167安打を放ち、打率.315をマークしていた点では攻撃型だと言えるが、同時に22犠打も記録していた。翌2009年は打率.272で長打率も落ちたが、犠打が8個に減ったことで「強打の2番打者」のニュアンスはより強くなっている。

さらに遡ったところにいる谷選手も、巨人移籍1年目から2番に定着して172本の安打を量産した。キャリア最多となるシーズン20犠打を決めてはいるが、二塁打を31本放ちながら、595打席でわずか48三振にとどめたところに2番打者としての価値がある。高橋由伸選手と形成した硬軟コントラストの1、2番は近年まれに見るテーブルセッターコンビだった。

大物選手の補強が多いだけに、2番にも強打者を据える機会が増えるのも巨人の特色だ。逆方向へのバッティングを持ち味とした右打者の二岡選手と、引っ張った打球が痛烈だった左打者の清水選手は、その打球方向とともに重量打線の破壊力を高めた点で一致していた。通算打率が.280台と確かな打撃技術を持ちながら、二岡選手はキャリアで20本塁打超えが4度、清水選手は2ケタ本塁打到達が8度と一定の長打力も備えていたのも共通している。打順こそ7番が多かったが、二岡選手は2000年にチームのリーグ優勝を決めるサヨナラ本塁打を放ち“ミレニアム打線”の球史に残る大逆転劇を完結させた。その当時、送りバントを命じられることもあった清水選手は、実績を重ねた2002年以降に犠打の数が減り、2004年には“史上最強打線”の中でリーグ最多の39二塁打を放つなど存在感を示している。

同じく東京ドームを主戦場とした小笠原選手はフルスイングが身上で「強打の2番打者」の代表格と言える。2000年にはリーグ最多の182安打を放ちながら74四球も選び、出塁後も24盗塁を記録して126得点でもリーグ最多と“ビッグバン打線”の要として機能。この年のみならず日本ハム(北海道日本ハム含む)在籍10年間に犠打はゼロで、通算でもわずか2本だった。

東京ドームを後にして活躍の舞台をニューヨークへ移した松井秀喜選手に代わり、一年を挟んで2004年に出現したのが「赤ゴジラ」こと嶋選手だった。レギュラー定着を目指したシーズンで、4月から打率4割を超える打棒を見せる。シーズン終了後には打率.337に収まったが、首位打者獲得に加え、積み上げたリーグ最多となる189安打は当時のセ・リーグ記録に迫るものだった。

流麗なスイングから快打を連発したバルデス選手は、来日した2001年から3年連続で打率3割&20本塁打超え。いずれの年も出塁率は4割近かったが、2003年には川崎宗則選手の台頭で6番に配置転換。得点を演出する立場から作り出す役回りへの適応を求められたが、104打点をマークするなど見事に応えて“100打点カルテット”の一角を担った。

上記以外にも、2000年に93試合で2番を任された金城龍彦選手(横浜)が、長打は少なかったが打率.346で首位打者に輝くなどよく打った。2005年に日本一に輝いた千葉ロッテでは、当時のボビー・バレンタイン監督が日替わり打線を組むなか、チーム最多の91試合を務めた堀幸一選手が打率.309の好打率を残している。7本塁打を放ち、全試合に固定されていれば「強打の2番」に名を連ねていたかもしれない。

巨人以外の球団では日本ハムが従来の日本球界のイメージとは異なる打者を2番にすることが多く、2004年はSHINJO選手、2005年は木元邦之選手、2012年には小谷野栄一選手がチーム最多の出場数を務めた。逆に、打って打って打ちまくった大阪近鉄“いてまえ打線”の2番は、2000年から球団がオリックスと合併する2004年まで毎年、小技の巧みだった水口栄二選手がチーム最多となっている。

このように、2番にどのような打者を起用するかを探るのはチームの方針が透けて見えるようで面白い。今季は、ペゲーロ選手と同様に開幕戦から持ち前のパワーを発揮していた北海道日本ハムの大谷翔平選手が、4月6日にキャリア初の2番で先発出場して話題となった。余談だが、39本塁打、102打点をマークして昨年のナ・リーグMVPに輝いたクリス・ブライアント選手(シカゴ・カブス)や、41本塁打、123打点を記録して一昨年のア・リーグMVPを受賞したジョシュ・ドナルドソン選手(トロント・ブルージェイズ)も主に2番を務めている。昨季、ともにメジャー30球団でトップのチーム打率.282、848得点を叩き出したボストン・レッドソックスは犠打がわずか8本しかなかった。とはいえ、今季の楽天に見られる策は、中軸にも信頼の置ける打者が揃っていることが前提だろう。「恐怖の2番打者」は日本でもトレンドとなっていくのか、はたまた一過性のブームで終わるのか。開幕から一週間を待たずして、今季もプロ野球に新たな関心事がつけ加えられた。