【高校野球企画】Youthful Days ~まだ見ぬ自分を追いかけて~ vol.8 T-岡田選手[オリックス]

2018-08-26 09:00 谷上史朗
オリックス・バファローズ・T-岡田選手【イラスト:横山英史】©ORIX Buffaloes

オリックス・バファローズ・T-岡田選手【イラスト:横山英史】©ORIX Buffaloes

第100回全国高等学校野球選手権記念大会が閉幕した。今年も甲子園で高校野球の頂点を巡る戦いから、多くの新たな物語が紡がれている。夢見た舞台へ辿り着くために、球児たちはどれだけの鍛錬、挑戦、葛藤を積み重ねているのだろうか。現役プロ野球選手の高校時代を振り返る連載第8回は、浪速の轟砲ことT-岡田選手(オリックス)。豪快かつしなやかなスイングから痛快な打球を繰り出す和製大砲は、激戦区・大阪で早くから名の知られた存在だった。誰もが認める資質ゆえの人一倍高い期待に応え切ったとき、歓喜から最も遠ざかるチームの悲願成就が近付く。

高校入学前から突出していた大器としての風格

中学3年時、ボーイズリーグのある大会で今も関係者の語り草となっている伝説のホームランを打った。ライトフェンスの遙か後方を走る高速道路の側壁を直撃する推定140メートル弾。T-岡田選手は圧倒的な体格と桁違いの飛距離を誇り、3年時には同じく大阪のボーイズリーグで知られていた平田良介選手(現中日)と「右の平田、左の岡田」と評判の選手だった。高校進学について当初は、智弁和歌山高校への興味を強く持っていたが、最後は体のケアや食事面など総合的に考え、自宅から通える履正社高校行きを決めた。

入学し、まず履正社高校の岡田龍生監督から出されたのは減量指令だった。当時の体重が今よりも重い106キロ。故障も考慮してのものだったが、その一環として家から学校までの30分、学校から練習グラウンドまでの1時間、グラウンドから家までの30分の移動にすべて自転車を使用。これが通常の練習に加えた格好のトレーニングともなり、夏前には体重が90キロを切るまでに絞れた。同時に下半身も強化。フリーバッティングから両翼97メートル、ライト後方に高々とそびえるネットを超える当たりを連発。1年夏から4番で起用された。

「3年間でバントをさせなかったのは岡田だけ」とは山田哲人選手(現東京ヤクルト)や安田尚憲選手(現千葉ロッテ)らも指導してきた岡田監督の口癖だが、T-岡田選手のスケールは入学時代から際立っていた。ただ、1年目は4番の重圧と高校野球の攻めに馴れる時間も必要で、11月の練習試合終了までに放った本塁打は5本のみ。

それが、全ての面で順応した2年時は1年間で35本のホームランを量産。中でも一気に注目を高めたのが夏だった。大阪大会で5本塁打を放ち、あまりの豪打に2試合にまたがり、敬遠を含む5打席連続四球も経験。日本野球界のレジェンド・松井秀喜氏(元ヤンキース)に準え「ナニワのゴジラ」の異名がついたのもこの頃からだった。

圧巻の飛距離に加え、広角にヒットゾーンを持っていたのも当時からの持ち味だった。打席の中では常にショートの頭を意識し、2年の春先から右足を大きく上げるようになり左方向の打球がフェンスを越えるようになった。その打球に度肝を抜かれた試合として鮮明に覚えているのが2年秋の近畿大会、八幡商業高校戦だ。あの試合では驚きの打球を2本目撃した。

1本は好投手と評判だった相手右腕から、ライナーで甲子園のバックスクリーン左へ突き刺したホームラン。踏み込み十分のT-岡田選手らしいスイングからあっという間にスタンドインした打球は、高校野球観戦の中では滅多に見ることのない弾道だった。