【高校野球企画】Youthful Days ~まだ見ぬ自分を追いかけて~ vol.10 今宮健太選手[福岡ソフトバンク]

2018-08-29 09:00 氏原英明
好投手達への負けじ魂を成長の糧に

この大会での今宮選手は自身の存在を見せつける活躍ばかりを見せていた。何より、戦ってきた相手が強者ぞろいだった。1回戦では興南高校の島袋洋奨投手(現福岡ソフトバンク)と対決。1点ビハインドの8回裏、2死で回ってきた打席で左翼超えに2塁打を放ち、同点の口火を切った。2回戦の西条高校戦では秋山拓巳投手(現阪神)と相まみえた。

「相手は注目されている投手なので、そういう相手には負けたくない。秋山君の得意球・ストレートを狙っていきたい」と試合前には息巻いたほどだった。結果は3打数無安打に抑えられたのだが、試合後の彼のコメントは相手をリスペクトした男らしいものだった。

「個人的には完敗です。あんな重いストレートは見たことがない」

3回戦では常葉橘高校の庄司隼人選手(現広島)と小兵投手同士の投げ合いに臨み、「雑誌で注目されている投手。対戦したかった選手の一人。島袋といい秋山といい、僕には運がある」。9回、同点に追いつく右翼前適時打を放っている。

そして、冒頭の準々決勝・花巻東高校戦は菊池雄星投手(現埼玉西武)である。怪我の影響で、菊池投手は途中で降板したが、選抜高等学校野球大会でも敗れた相手との対決であり、今宮選手が最も対戦したい相手であったことに間違いはなかった。

今宮選手はこの試合、先発投手としてマウンドに上がっていた。しかし、4回途中で4失点と崩れ、マウンドを譲っていた。一進一退の攻防となり、9回の冒頭の場面を迎えていたのだった。延長戦の末、明豊高校は敗退した。「2年生が頑張ってくれた」。そう後輩をかばった今宮選手の目に涙はなかった。

プロに入って野手に専念した今宮選手は、2013年に初めてゴールデン・グラブ賞を獲得すると、昨季まで5年連続で受賞した。2度のベストナインも受賞するなど、安定王者・福岡ソフトバンクに欠かせない存在として、広範囲の守備力を大きな武器に球界屈指の遊撃手として君臨している。

ここ一番でボールを逃さない球際に強い守備や、勝利に貢献するための献身的なプレーにはあの時の男気を思い出させてくれる時がある。2年前のことだった。今宮選手が高校時代に「ライバル」と強烈に意識してきた菊池投手からホームランを放った。そのときの今宮選手の言葉が印象に残っている。

「高校時代のライバルって、もう何年経っているんですか」

そう記者に応えている彼の表情に、あの夏に見た男気たっぷりのプライドを感じた。