【高校野球企画】Youthful Days ~まだ見ぬ自分を追いかけて~ vol.11 今江年晶選手[東北楽天]

2018-08-30 09:00 谷上史朗
不完全燃焼で高校野球を終え、“最強”は結実せず

それでも新チームとなれば、「いよいよ俺達の時代!」と自信満々に秋の戦いへ挑んだ。ところが、大阪府大会準決勝で岩田稔投手(現阪神)、中村剛也選手(現埼玉西武)、下級生に西岡剛選手(現阪神)とそろっていた大阪桐蔭高校に敗れ、近畿大会出場を賭けた浪速高校との3位決定戦もサヨナラ負け。

個々の能力は抜けていたが、個性派集団ゆえの脆さがつきまとった。新チームでキャプテンとなった今江選手もナインを同じ方向へ向けさせることに苦心。千葉ロッテ時代、高校当時を振り返る話をしていると、苦笑いを浮かべて語ってきた。

「1年、2年の時は自分のことで精一杯。3年になってやっと野球に集中できると思ったら今度はキャプテン。個性の強いメンバーをどうまとめるか…。3年の時は時で、ほとんど自分の野球をした記憶がないんです」

それでも冬を超えると、あとのない状況でようやくチームがまとまり始めた。

「選抜もなくなって、いよいよあとは夏だけ。ほんまにチームとして1つになってやらないと終わってしまう。そんな空気になって、この感じで行けば夏に結果を出せる、普通に力を出せばやれる、と思ったんですが…」

春の大阪府大会は再び大阪桐蔭高校に敗れて準優勝。ただ、夏を見越して朝井氏が投げない中での結果で、冬を越え、さらに迫力を増した打線は春の6試合でも実に16本塁打。プロ並の破壊力を発揮し、先に挙げた練習試合での1試合13本塁打も夏へ向かう中で飛び出した。

しかし――。全国の頂点を目指した夏は戦わず、突然の幕引き。今江選手の高校生活はあっけなく終わった。予選の組み合わせ抽選会の前日。選手たちは練習後に寮の大広間に集められると、当時の部長からこう告げられた。「明日が抽選日ですが、我がPL学園高校は99.9%、出場は不可能です」。冬場に起きていた部内暴力が発覚。報告を怠った部の体質や過去の経緯も含め、高校野球連盟から重い処分が下されたのだ。

一部からは“PL史上最強”の声も聞こえたチームは、こうしてその強さを全国の舞台で発揮することなく姿を消した。あの夏から17年。PL学園高校の野球部は2013年4月に起きた寮内の暴力問題に端を発し、休部状態が続く。その中、あの夏の不出場を悔しさ一杯に語るOBの声を聞いたことがある。

「もし、今江たちのチームが甲子園に出て、力通りの戦いを見せていたら、その後のPL野球部の流れも変わっていたかもしれない。あの夏は日大三高校が優勝しましたが、テレビで見ながら十分やれると思いましたから。あそこでもう一度、大きな結果が出ていたら…。あのチームが野球部にとって大きなターニングポイントだったと思います」

最後の夏に力を見せられなかった今江選手だが、2001年秋のドラフトでは3巡目指名を受けて千葉ロッテへ入団(朝井氏は大阪近鉄から1巡目指名、桜井氏は阪神から4巡目指名)。一昨年からは仙台に働き場を移し、今年でプロ17年目。8月に35歳となった男は4番としてチームを背負い、バットを振り続けている。