【高校野球企画】Youthful Days ~まだ見ぬ自分を追いかけて~ vol.12 菊池雄星投手[埼玉西武]

2018-08-31 09:00 氏原英明
埼玉西武・菊池投手【イラスト:横山英史】©SEIBU Lions

埼玉西武・菊池投手【イラスト:横山英史】©SEIBU Lions

第100回全国高等学校野球選手権記念大会が閉幕した。今年も甲子園で高校野球の頂点を巡る戦いから、多くの新たな物語が紡がれている。夢見た舞台へ辿り着くために、球児たちはどれだけの鍛錬、挑戦、葛藤を積み重ねているのだろうか。現役プロ野球選手の高校時代を振り返る連載第12回は、いくつもの壁を乗り越えてきた菊池雄星投手(埼玉西武)。しなる左腕から繰り出す快速球で甲子園を沸かせ、ひたむきな姿勢がファンの胸を打った。真っ直ぐな心で野球と向き合う姿は、今もあの頃と変わらない。自身を奮い立たせたライバルたちとの名勝負数え唄は、舞台をプロの世界に移して続いている。

現在もしのぎを削る「91年世代」

世代別でプロ野球選手が語られるようになったのは「98年世代」からだろう。松坂大輔投手(中日)を筆頭格として、和田毅投手(福岡ソフトバンク)、杉内俊哉投手(巨人)、村田修一選手(元巨人)、古木克明選手(元横浜)など、1998年夏の全国高等学校野球選手大会で甲子園を沸かせた選手たちが、高卒、大卒、社会人と経由は異なるものの、プロに入ってからも注目を浴び続けたことで「松坂世代」という呼び名が有名になった。

それ以後では、甲子園で対戦してそのままプロに入ってもライバル関係にあったケースがそう多いわけではない。2006年の「田中(将大/ヤンキース)・斎藤(佑樹/北海道日本ハム)世代」は豊作として知られるが、高校時代から対戦してライバルであり続けたというわけではない。田中投手と前田健太投手(ドジャース)は、高校でもプロでも対戦はなかったし、坂本勇人選手(巨人)も選抜高等学校野球大会には出場しているが、3投手との対戦はない。

そういった視点で見ていくと、最大派閥になるのが1991年生まれの「筒香(嘉智/横浜DeNA)・菊池(雄星/埼玉西武)世代」だ。高校時代に2人の直接対決はないが、今村猛投手(広島)、大瀬良大地投手(広島)、今宮健太選手(福岡ソフトバンク)、秋山拓巳投手(阪神)、岡田俊哉投手(中日)、堂林翔太選手(広島)、原口文仁選手(阪神)、岡大海選手(千葉ロッテ)、西浦直亨選手(東京ヤクルト)ら、なかなかの面子が甲子園出場を果たしているのだ。

菊池投手は今宮選手、今村投手、堂林選手と甲子園で対戦している。国民体育大会では秋山投手、原口選手らと友人になったと語っているし、今宮選手は秋山投手と対戦し、代表では岡田投手とともに日の丸入りを果たした。

「筒香や秋山、原口など高校時代に話したことのある選手がみんなプロに入っている。同世代の存在は刺激になりましたね」

高校時代の思い出をそう語るのは、埼玉西武のエース・菊池投手だ。彼ほど、甲子園のライバルたちに刺激を受け、成長した選手はいないと言っていい。

そもそも、91年世代でイの一番に脚光を浴びたのが菊池投手だった。高校1年夏、甲子園出場を果たすと、5回からマウンドに上がり1失点の好投を見せた。ストレートの球速は145キロを計測し、「岩手に怪物あり」の衝撃的なデビューを飾った。

「1年の時の甲子園はあっという間に終わりました。甲子園に入って『でけぇ』と思ったのが第一印象でした。1回戦で負けたんですけど、最後のイニングにマウンドに上がるとき、甲子園に来るのはこれが最後かもしれないと思って、全力で投げたのを覚えています」

そんな衝撃デビューは彼の名前を一躍スターダムにのし上げ、岩手県で菊池投手を知らない人はいないほど有名にした。そして、同時にそのプレッシャーに押しつぶされた。1年夏は先輩に連れて行ってもらった甲子園で、ただただ腕を振るだけで良かった。しかし、2年になってからは常に注目を浴びながらチームを引っ張らないといけないことになり、不安定な時期を過ごしたのだ。

力んでフォームはバラバラになり、あの衝撃デビューのときのようなストレートは鳴りを潜めた。2年春、夏ともに、甲子園出場を逃した。そんな折に、将来のスター候補性として甲子園で活躍したのが筒香選手達だった。菊池投手の回想だ。

「『1年で甲子園で投げた菊池雄星だ』という目で見られるようになって、力みまくってしまいました。フォームがばらばらになって135キロしか出なくなって、ストライクも入らない。1年間はそういう状態が続きました。他の同級生たちがどんどん有名になって焦りました。岡田君や今村君、筒香君が2年生夏の甲子園で活躍していたのを見て、それまでに持っていた自信がなくなりました」

同世代を意識したからこそ、彼の中での焦りにつながったのかもしれない。しかし、それは後に強さとなる。