【福岡発 売り子名鑑2018】ヤフオクDの“天使”が見つけた売り子サバイバル術「お客さんとの密度を上げる」

2018-10-09 21:07 「Full-Count」福谷佑介
キリンビールのえんじぇるさん※写真提供:Full-Count(写真:福谷佑介)

キリンビールのえんじぇるさん※写真提供:Full-Count(写真:福谷佑介)

「次の試合で辞めよう」と思いつつ、気付けば4年目

 ペナントレースも終わりが近づいてきた2018年のプロ野球。ここからはポストシーズンに突入し、日本一を目指した戦いへとシフトしていく。そんなプロ野球の各球場を彩る“華”が、各ビールメーカーの売り子たち。一見華やかに見えるが、連日10キロを超えるビールのタンクを背負い、階段ばかりの球場内を歩き回る過酷な仕事だ。肉体的な厳しさはもちろん、売り子の間での競争、売上を伸ばすための創意工夫など、トップクラスの売り子たちほど苦労と努力を行っている。

 2年連続のリーグ優勝を狙う福岡ソフトバンクホークスが本拠地とするヤフオクドームでも、売り子たちの熱き戦いが連日繰り広げられてきた。ヤフオクドームのビール販売はアサヒビール、キリンビールの2社が展開しているが、その売り子たちは登録制となっており、登録者数は両メーカー合わせて500人近い数にも上る。

 球場内でビールを売るのは100人ほど。トップクラスの売り子となれば”常連さん”と呼ばれる固定客もいるが、それでも球場内では売り子同士での顧客の奪い合いとなる。弱肉強食の競争を生き抜くビールの売り子たち。「福岡発 売り子名鑑2018」では、厳しい世界を勝ち抜くトップクラスの売り子たちの苦労と苦悩、努力を紹介していく。

 第2回はキリンビールの「えんじぇる」さん。

 高校2年生から売り子としての活動をスタートさせ、今季で4年目となった「えんじぇる」さん。「野球がめっちゃ好きだったとかではなくて、単純にバイトを探している時に募集を見て。すでにバイトを掛け持ちしていたんですけど、試合がいつあるかわかるので、掛け持ちがしやすそうだと思って始めました。テレビで売り子さんを見て楽しそうと思ったのもありますけど」。軽い気持ちで始めたが、気付けば4年も続けていた。

キリンビールのえんじぇるさん※写真提供:Full-Count(写真:福谷佑介)

キリンビールのえんじぇるさん※写真提供:Full-Count(写真:福谷佑介)

野球に詳しくなくとも“オリックスジナリティー”で図る交流

 始めた当初は10キロを超えるタンクの重さに耐えかね、「キツすぎて向いていないと思って。毎試合のように、次の試合で辞めよう、来月で辞めようと思っていました」という。それでも、4年続いたのは「常連のお客さんが1年目からできましたし、『エンジェル!』って親しく話しかけてくれます。名前のおかげで子供さんからも親しく声をかけてもらえる。その子供さんたちと話すのも楽しくて」。ヤフオクドームに訪れるファンとの交流が、売り子を続ける力になった。

 売り子の仕事で最大の苦労はどこにあるのか。「尋常じゃないくらいタンクが重いです。4年経った今でも、よくあれを女の子が持っているなと思います。さすがに慣れましたけど、2年目くらいまでは慣れなかったですね。ずっと重たいですし、体力はいりますし、それでも笑わないといけない。体力だけでなく、体力を超える精神力が必要です」。

「えんじぇる」さんは、野球には詳しくない。その中で、ファンとのコミュニケーションを取るためにオリックスジナリティーを発揮するようにしているという。「アイドルとかが好きでオタクなんですけど、買ってくれるお客さんにもアイドルが好きな人は多くて。情報交換じゃないですけど、ビール注いでいる間はアイドルの話をしていたりします。あとは食べ物の話ですね」。売り上げを上げるためには、コミュニケーションが必要不可欠なのだという。

「何回も買ってくれるお客さんがいたり、団体で来られていたら一度に何杯も買ってくれたり。スピードも大事だけど、お客さんとの密度を上げることが大事。どれだけ次に繋げるか、です。全く話さないと1周回っても売れないなんてこともあります」。コミュニケーションとオリックスジナリティー。売り子の世界は決して甘いものではないようだ。