パ6球団のドラフトを総括 56選手の指名から見える思惑とは?

2018-10-26 14:52 菊地高弘
神妙な面持ちで指名を待つ東洋大の3投手【撮影:藤原彬】

神妙な面持ちで指名を待つ東洋大の3投手【撮影:藤原彬】

10月25日、都内で「2018年 プロ野球ドラフト会議 supported by リポビタンD」が開催された。パ・リーグ6球団は合計56選手(育成12選手を含む)を指名しており、それぞれの思惑が透けて見えた。各チーム事情と照らし合わせながら、アマチュア野球に詳しい菊地選手こと菊地高弘氏が今年のドラフトを総括する。

上位3球団の指名選手は…

【埼玉西武】
12球団で唯一の単独1位指名に成功して、即戦力右腕の松本航(日本体育大)を指名。2位で将来性十分の大型右腕・渡邉勇太朗(浦和学院高)に、下位の6位では完成度の高い森脇亮介(セガサミー)と、課題の投手陣を補強できた。

ポイントは3位の山野辺翔(三菱自動車岡崎)。仮に浅村栄斗がFA移籍したとしても、すぐ後釜に据えられるだけの実力がある内野手だ。キレのある身のこなしの二塁守備に、強振もチーム打撃もできる打撃スタイル。浅村のような一発の脅威はないものの、打線につながりを生む貴重な存在になるはずだ。

さらに、埼玉西武に入団した選手は外崎修汰や源田壮亮のように、アマチュア時代よりもスイングに力強さが増す傾向にある。山野辺も環境に揉まれ、グレードアップすることを期待したい。

【福岡ソフトバンク】
1位で2人クジを外して甲斐野央(東洋大)が獲れれば上出来。さらに3位で松田宣浩の後釜になれる野村大樹(早稲田実業高)を指名して、補強ポイントを着実に抑えた。基本的に素材重視の球団だが、近年獲得した高卒投手が伸び悩んでいるためか、方針の微修正を感じさせるドラフトだった。

4位で社会人5年目の板東湧梧(JR東日本)、7位で26歳の奥村政稔(三菱日立パワーシステムズ)のような即戦力投手も指名している。注目は2位で指名した杉山一樹(三菱重工広島)。193センチの長身から角度をつけて投げ下ろす剛速球が武器で、今夏の都市対抗で短いイニングながら最も衝撃を与えた投手だった。将来的には偉大なOB・斉藤和巳のように、18.44mを短く感じさせる大投手に。そんな希望が膨らむ大器だ。

【北海道日本ハム】
甲子園のスター選手を次々に指名して、華やかでキャラが立った顔ぶれが並んだ。そんななか、3位で生田目翼(日本通運)、7位で福田俊(星槎道都大)と、本調子なら来季からすぐ使える投手を指名してバランスを取ったのがうまい。

幸運だったのは1位・吉田輝星(金足農業高)に続いて、2位で野村佑希(花咲徳栄高)が獲れたこと。大ベテランの今成泰章スカウトが早くからマークしていた和製大砲候補で、柔らかく運んで飛ばせるスイングができる。打球にバックスピンをかける練習を積んでおり、スイングの力感以上に飛距離が伸びるのが魅力だ。純和風の顔つきながらアメリカで出生してアメリカ国籍も持っており、ミドルネーム「ジェームス」はプロでもニックネームになりそう。いずれは清宮幸太郎との共演が楽しみだ。

下位3球団の指名選手にも巻き返しへ向けた逸材が

【オリックス】
1位指名を公言した小園海斗(報徳学園高)にはクジに嫌われたが、太田椋(天理高)を代わりに1位指名。父・暁さんはオリックスの打撃投手であり、運命を感じさせる。近年のオリックスは左打ちのアベレージ型が多く、パンチ力のある右打者が乏しかった。

そこで太田をはじめ、2位で頓宮裕真(亜細亜大)、7位で中川圭太(東洋大)を指名できたのは大きい。とくに中川はよく7位まで残っていたと思わせるほど能力は高く、フォロースルーが絵になる強打者である。課題の守備も年を追うごとに上達しており、PL学園高、東洋大と名門校で揉まれ逆境に強いメンタリティーも魅力だ。もし将来的に二塁か三塁のレギュラーに収まれば、外国人選手に依存し過ぎることなく骨太の打線が組めるはず。下位指名からの逆襲に期待したい。

【千葉ロッテ】
1位で藤原恭大(大阪桐蔭高)の指名に成功。2015年の平沢大河、昨年の安田尚憲とスター性のある高卒野手が揃い、黄金期への礎は固まりつつある。2位・東妻勇輔(日本体育大)、3位・小島和哉(早稲田大)、5位・中村稔弥(亜細亜大)と即戦力になりうる大学生投手も指名し、投手陣を補強した。

中でも中村は非常に使い勝手のいい左腕として注目だ。恐らくキャンプのブルペンではさほど目立たないだろうが、この投手が存在感を発揮するのは実戦に入ってから。打者を打ち取るための繊細な嗅覚が備わっており、的確にコースに投げ分ける。ツーシームでゴロの山を築き、「打てそうで打てない」相手打線にとってダメージの残る投手になるだろう。派手さはないものの、実戦的な投手として強く推しておきたい。

【東北楽天】
1位で藤原恭大(大阪桐蔭高)を外しながらも、辰己涼介(立命館大)を4球団の競合の末に引き当てた。田中和基がブレイクし、オコエ瑠偉も控えるなか、ここまでして外野手が必要だったのか疑問は残るが、辰己は素晴らしいポテンシャルを持つ選手だ。

2位で嶋基宏の後継者になりうる太田光(大阪商業大)を指名し、下位にもチームの弱点を補える大学生を確保した。注目は3位で指名した引地秀一郎(倉敷商高)。188cm84kgの筋骨隆々の肉体は、マウンドでさらに大きく見える。体内に眠る馬力は恐らく今年の高校ナンバーワンで、暴力的な腕の振りは一目見ただけで圧倒される。課題も多く、体も鍛え込めていないため育成に時間はかかるだろうが、いずれは藤平尚真らと投手陣の屋台骨を担ってほしい逸材だ。