戦力層だけでは測り切れない強みが若鷹の武器 指揮官は「この1戦に懸ける」

2018-11-03 11:40 田尻 耕太郎

 福岡ソフトバンクが2年連続日本一に王手をかけた。やはりなのか、流石というべきか。本拠地ヤフオクドームで無類の強さを発揮した。

 第3戦は壮絶な打撃戦を制した。福岡ソフトバンクがデスパイネ選手の3ランと高谷裕亮選手のソロで一時は6点差をつけたものの、広島の猛反撃にヒヤヒヤさせられた。結果は9対8で何とか逃げ切った格好だが、試合を振り返れば福岡ソフトバンクは一度もリードを許さずにシリーズ初勝利を手にした。工藤公康監督は「最後1点差という中で森(唯斗)くんが投げきってくれた」と称賛。6回以降は6人の投手をつないだ。このリリーフ陣の粘りこそ、福岡ソフトバンクの本来の形である。

 第4戦も3回に上林誠知選手の2ランで先制して主導権を握ると、先発の東浜巨投手が5回4安打1失点と好投していたが、スパッと継投策に打って出た。残り4イニングをモイネロ投手、武田翔太投手、嘉弥真新也投手、森投手が無安打リレーを完成させて4対1と快勝してみせた。

 第5戦はまたしても接戦に。延長10回裏、柳田悠岐選手がバットを折りながらも規格外のパワーで運んだ弾丸ライナーの打球は、右翼ホームランテラスに飛び込むサヨナラ本塁打となった。実はバットが折れていた。

「当たったのが先っぽだった。バットが折れたのにホームランなんて初めて。今季、オリックスの吉田正尚が打ったでしょ。京セラ(ドーム)で『ごっついな』ってその話になったけど、自分がまさか。本当打てて良かったです」

 試合途中には右足の脛に自打球を当てて、倒れ込むほどの痛みを覚えた。影響を当然抱えながらのプレーだったが、「そんなこと野球をやってれば何十回だって何百回だってある」と笑い飛ばした。

 勝ち続けた福岡ソフトバンクだが、今季を象徴するかのようにこのシリーズでも故障者がまた相次いでいる。中継ぎの石川柊太投手が右肘を痛めて離脱。助っ人勢でもグラシアル選手が第4戦、デスパイネ選手が第5戦を欠場した。今宮健太選手も第5戦は途中で退いており、工藤監督は「無理はさせられない」と話している。

経験からくるメンタルの強靭さがチームに備わる

 ただ、アクシデントに屈しない強さが今の福岡ソフトバンクにはある。工藤監督は「選手たちの成長を感じます。シーズン2位という悔しさをもって日本シリーズを戦っていて、自分たちは絶対に日本一になるという思いをみんなが持っている。勝つために苦しいこと、つらいことも乗り越えてきた」と目を細めた。

 かつて、まだホークスが弱小球団だった頃、当時の王貞治監督がよく言っていた。

「勝つ喜びを知ることが大事。1度勝ったらまた勝とう、同じ思いを味わいたいという気持ちになる。それは頂点に立った者にしか分からない」

 福岡ソフトバンクに息づく勝者のメンタリティ。ぶ厚い戦力という見た目だけではない真の強さが、このチームにはある。2年連続日本一まで、あと1つだ。

「早く決めたいという気持ちはあるけど、第6戦からはマツダスタジアムになる。あの熱気をしっかり受け止めて戦わなければならない。何かをきっかけに広島を勢いづけることになるかもしれないし、まずはこの1戦に懸ける思いで戦いたい」(工藤監督)

 第6戦の先発はバンデンハーク投手だ。同じマツダスタジアムでの第2戦に先発して5回5失点で敗戦投手となったが、最速157キロの直球を投げ込むなど状態自体は悪くないことをうかがわせた。

「シーズンの終わりから少しずつ状態は良くなっている。フォームのバランスもいい。広島は凄いファンで、みんな野球を楽しんでいる。素晴らしいファンだ。ただ、その雰囲気を経験しているのはプラスに働くと思っている」

 激戦続きの「SMBC日本シリーズ2018」はどのような結末を迎えるのか。工藤監督が広島の夜空に向かって宙を舞うその瞬間まで、目の離せない熱い戦いは続いていく。