【6の背中】千葉ロッテ・清田育宏編

2017-09-19 00:00 「パ・リーグ インサイト」マリーンズ球団広報 梶原紀章

ずっとその背中に導かれてきた。プロ2年目のオフに弟子入りし、毎年1月の自主トレを共に過ごした。だから井口資仁内野手が引退を発表したとき、誰よりも衝撃を受けた。清田育宏外野手にとって背番号「6」はいつも近くにいる、かげがえのない存在だった。

「同じ右打者。あれだけの選手が身近にいらっしゃるのだから、いろいろと教えてもらいたいという想いで、自分から『自主トレを一緒にさせてください』とお願いしました。教えてもらうのもそうだし、見て盗む事もできる。自主トレで一緒にさせてもらった時間は本当に貴重でした」

井口と濃密な時間を過ごした。その沖縄での自主トレメニューはハードだとは聞いていた。想像以上だった。午前6時には走り込みが始まる。そこからほとんど休むことなく体を動かす。井口だけではなくタイガースの鳥谷敬内野手など多くのトッププレーヤーと体を苛め抜く日々は清田にとって刺激的だった。そして今となって改めて驚くのは、この7年間、井口は練習メニューをまったく減らすことなく、若手と全く同じ量の内容で体を動かして鍛え上げていることだ。

「42歳になられた今でも自分が最初に自主トレに参加した2011年の時と同じメニューを変わらずに全力でやっている。それは凄いと思います」

身近で共に自主トレをすることで刺激を受けたのはそのストイックな練習だけではなかった。誰にも分け隔てなく接してくれる態度、そして気遣い。メジャーで2つのチャンピオンリングを手にしたほどの実績溢れるスーパースターが見せる人間性に、あるべきプロ野球選手の姿を学び取った。

「オフの日にバーベキューをみんなでやるのですが、率先して買い出しに行ってくださる。自分は食べないでお肉を焼いて、若手のお皿が空いていると『もっと食べないと大きくならないぞ』とお肉を入れてくれるんです。自主トレには色々な選手が集まってくるのですが、井口さんのそういった人間性に惹かれてくるのだと思います」

自主トレに参加をしてから、シーズン中もなにかと気にかけてくれた。結果が出ないと落ち込みがちになる清田をいつも励ましてくれた。「今はやれることをしっかりやることだ。やるしかない!」。力強いその言葉にクヨクヨと悩み、落ち込む自分の姿が恥ずかしくなった。早めに球場に来てバットを振った。映像で打席を研究した。結果が出ないときこそ体を動かし、悔しさをボールにぶつけるように心がけてきた。

そんな恩師と共にプレーをした日々もあとわずか。9月24日のファイターズ戦(ZOZOマリンスタジアム、14:00試合開始)をもって背番号「6」は現役生活に別れを告げる。

「実感が湧かない。今も一軍にいないのが不思議な感じがする。来年はもう一緒に自主トレをすることもできないと思うと寂しい。ただ、今はもう、自分が頑張っている姿を見てもらおうという気持ちです。結果を出すことで、これまでお世話になった井口さんに恩返しをしたいと思っています」

今年、一緒に自主トレをする中で引退を匂わせたことがあった。それも冗談かと思っていた。ただ、若い頃から変わらず今も若手と同じメニューを朝早くからこなす中で、初めて膝をつく姿を見た。今まではケロリと涼しげな表情でハードな練習メニューをこなしてきた中で初めて目にした苦しそうな表情だった。その姿に「もしかして」の想いがよぎった。そして6月20日、尊敬をする大先輩は引退を表明した。

清田は15年に130試合に出場して打率.317、15本塁打、67打点の結果を残し、マリーンズの主軸を担う強打者としての道を歩み出した。が、それ以降、なかなか思うような結果を残せていない。今季も悔しさのみが胸を覆う。7年間、自分を見守り、期待をかけてくれた大先輩への恩返し。それはやはり自身がバットで結果を残すことしかないと思う。独り立ちして迎える日々。「やるしかない!」というあの日の井口の檄が胸にこだまする。