台湾最多823勝の名将が語る「王柏融」の凄さと課題とは?

2018-11-16 11:00 「パ・リーグ インサイト」上野友輔
千葉ロッテ対Lamigo交流試合3戦目に2安打を放った王柏融

千葉ロッテ対Lamigo交流試合3戦目に2安打を放った王柏融

不調は自分自身への要求が高いがゆえに?

 ただその「大王」も、今年2018年はリーグ4位の打率.351。安打数はリーグ3位の159本、打点はリーグ2位の84打点ではあるものの、一昨年・昨年とシーズン打率4割、そして昨年には三冠王を獲得した実績からすると、「成績を落とした」と言える。

 この原因を洪監督は「一気に知名度が高まったこととも関係がある」と分析する。今年はNPBの各球団だけでなく、MLBからもスカウトが台湾屈指のスラッガーを視察に訪れ、強豪チームの中軸としてファンも活躍を期待した。その中で「とても責任感が強いがゆえ、知らず知らずのうちに(自分に)プレッシャーをかけ、スムーズなスイングができなくなってしまった」(洪監督)という。

 自分自身への要求が非常に高い選手で、若くしてさまざまな打撃タイトルを獲得し、台湾メディアをして「次元の違う選手」と言わしめるとはいえ、まだ「大王」も25歳。さまざまな葛藤、苦悩の中でプレーしていたことだろう。

 また洪監督は「守備、走塁も、欠点がないというわけではない」と課題を指摘する。「NPBでプレーすることになった場合、たくさんの優れた選手との競争が待っている。細かい部分一つ一つについて学び、強化していかなくてはならない」とさらなる向上を促す。

 ただその一方で、「よりよいトレーニング環境の中に身をおけば、彼の性格から言っても、レベルを引き上げることは大きな問題にはならない」(洪監督)と、その底知れぬ伸びしろを見込む。そして「海外でプレーする機会が来たとしても、いいパフォーマンスを見せてくれると信じている。彼の自分自身への要求の高さ、物事に取り組む態度などを見ても、必ず新しい環境に適応できると思っている」と、今後のさらなる成長に太鼓判を押した。

名将は「交流」から学び続け、さらなる交流を望む

 台湾球界のニュースターである王柏融を指導し、そして今年8月までシーズン打率4割を維持した20歳の廖健富(その後ケガで離脱)など、台湾球界を席巻、あるいは今後担う選手を育て上げた洪監督だが、名将として「学び」を止めることはない。

 以前は千葉ロッテの秋季キャンプに参加し、アメリカのトレーニングセンターを訪問したり、MLBシアトル・マリナーズのキャンプ地で研修を受けたりしたこともあるなど、精力的に各国を飛び回っているという。すべては「台湾野球と、日本やアメリカの野球とは、まだ差がある。学んだことを台湾に持ち帰り、台湾野球の発展につなげたい」という思いからだ。

 特に「日本では、投手育成に関する話やチーム哲学などの話を聞く。アメリカでは、打撃や作戦に関する考え方を学ぶ」という。中でも伊東氏と親交があり、チームをいかに率いていくかなどのテーマについても意見を交わしている。

 また、CPBLの中でも最も頻繁にNPBの球団と交流し、重視しているLamigoの監督であることも、その学びを促進させている。かつては国際大会に限られた交流だったが、今回の千葉ロッテとの対戦のように単一チームとの交流も増え、学びの機会は増えている。これらは「双方の交流を通じ、台湾野球と日本野球の実力差を縮めたい」という洪監督の悲願につながる。

 もちろん一方的に学ぶだけでなく、日本の野球ファンや関係者に「台湾プロ野球について知ってもらいたい」という思いもある。実際、5月のイベントで球場を訪れたパ・リーグ球団スタッフも、球場の盛り上げ方など、さまざまなことを得られたと語っていたが、洪監督も「日本の野球の良い部分、技術、文化、そして精神的な部分まで学ぼうと考えているが、もちろん台湾にもいい面はあるので、日本の皆さんが台湾から学んでもいい」という。

「(交流は)双方の野球界にプラス面があると思っている。今後、日本との交流がさらに盛んになることを期待している」と、台湾一の名将は両国のよき未来を見据えている。


取材協力・通訳:駒田 英